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「……とまぁ、こういうワケなんだけど、納得できた?」
「微妙に…ですぅ…」
「突然に全部分かれって言うのも大変だしね、うん、ちょっと分かっただけでも良しとしようか?」
都のとある路地裏で、アレルヤとミレイナは並んで立っていた。ハレルヤは辺りの様子を見に行くと言ってちょっと外しているところである。ミレイナもいることだし、その慎重な行動は間違っていないだろう。
残った自分たちはと言うと、事情説明に明け暮れていた。ミレイナに魔王のこと、『王』や『世界』の事、人形たちのことなど……話せないこともあったが、それ以外を説明する時間に充てていたのだった。月代に見つかってしまった以上、彼女もまた関係者に数えられてしまった。在る程度の知識は必要だった。
「ともかく、今がちょっと危険なんだって分かってくれたら、最低限は大丈夫」
「ですかぁ……何だか複雑ですぅ…」
「そうかな?分かり易くて良いと思うけど」
「それでもです」
「……そうかなぁ…?」
別に最低限分かっていたら良いんじゃないだろうか。それさえ分かっていたら後は何とでも、自分の力でどうにか出来るのだし。
うぅむと悩んでいると、分かっていないです!と額にビシッと指を突きつけられた。
「良いですか?分かりたい知識がそこにあるというのに、全部を理解できないというのは実に勿体ないことなのです。勿体なさ過ぎて困るくらいなのです」
「そこは何となく分かるけど…」
「ですから、私はもっとちゃんと知りたいのです!」
言い放って、グッと握り拳を作るミレイナ。勇ましい。
こういうところ、多分クリスティナ似だよなぁとアレルヤは苦笑した。血の繋がりはないが近所に住んでいる二人は、フェルトなも含めてまるで姉妹のようで、そんな彼女からの影響は大きい物があるだろう。
三人の中で長女的ポジションに位置しているクリスティナは、中途半端をあまり良しとしないのだ。フェルトにしたってそうだが、やはりクリスティナほどではないだろう。だから、その影響を末っ子的ポジションにいるミレイナが受けていてもおかしくはないのだ。
付け加えると、クリスティナはスメラギの弟子なのだ。つまり、情報師の弟子と言うことで、そこも情報に関する彼女らの反応に関係しているだろう。
「じゃあ……もう一回大切なことを言うね」
「はいです!」
「まず、都は人間の街とされているけど、実際は異端もいるし魔族もいるし、月代もいる。月代に至っては都を裏から支配までしている」
これは都で何かを行うに当たって、何よりも大切になる知識だ。裏から操る存在がいるのだと知るだけで、十分に警戒を覚えることが出来る。
「でね、月代の中には特別な子もいる」
「ハプティズムその1さんがそのような格好であるのは、そのヒトが原因なのでしたね?」
「うん、まぁそう考えて問題ないと思う」
実際はまだまだ長い事情があるのだが、そこまで話すのもどうかと思ったので略。リジェネのせいでこんな少女物の服を着ているのだから、あながち間違った言葉ではないところがポイントだ。結局服を買えるのは断念したのである。
だが……と、この服を所有していた家の事を思い出して表情を曇らせる。
パーファシー家。リジェネはその家の持ち主である夫婦を殺害したのだと言った。そして実際に殺害して、あの屋敷を自分の物にしたのだろう。
何という偶然だろうかと、アレルヤはため息を吐きたい気分だった。
パーファシーと言えば、ソーマがかつて、『ソーマ・ピーリス』という名を名乗る前の姓ではないか。ということは、殺害された夫婦はソーマの両親。
運命は皮肉屋だと思う。
マリー・パーファシーを『ソーマ・ピーリス』に生まれ変わらせたのはアレルヤ。
リジェネ・レジェッタの誕生に関係しているのはハレルヤ。
こんな二人がこんな繋がりを持ってしまうなんて。