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これで症例は全部です。
ここが一番平和?かな。症例。
これに出てくるキュリオスは、「元」キュリオスで2009年の春号現在のアリオスです。
「あうぅぅぅ……どうしようどうしようこれって神様からの天罰かなぁだとしたらボクって何かしたっけもしかして昨日五時間目にうつらうつらしちゃったからそのせいなのかなぁあぁぁぁぁぁぁぁぁどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよ、」
「黙れ」
混乱しすぎているキュリオスの頭に分厚い本の背表紙をくらわせ、ヴァーチェは椅子にふんぞり返った。
全く、一体どうしてこんな事に。
病気か、突然変異か、はたまた言うとおりに天罰か……いや、天罰は有り得ないだろう。
五時間目の一番居眠りしやすい時間に寝かけたと言って、だから神が罰を与えるということは常識的に考えて絶対にない。そんなことで『こんな事』を行う神というのは、どれ程までに心が狭いのだろう……というか実問題、本当に天罰だったら彼以上に重罪の者はどうなるのか……赤ん坊か、生まれて間もない頃になるのか。
バカバカしいと、涙目になっているキュリオスを眺めながら呟く。
「どうせ変なものでも食べたのだろう」
「でも……ご飯は全部ヴァーチェたちと一緒…」
「では、それ以外の何かだろう」
「けどけど…それ以外って言ったらせいぜい、放課後に飲んだギャン先生のお薬くらいのもの……だよ?」
上目遣いにならざるをえないキュリオスの頭に、今度は本の角をくらわせて一言。
「十中八九、それが原因だ」
「ふぇ……?」
涙目を通り越して泣き出しかけている幼い子供をヒョイと抱き上げ、膝の上にのせる。
合う服がなかったために一番背が高いデュナメスのシャツを一枚だけ着る、という格好のその子供はキョトンとしながらも泣いていて……さすがに本の角は痛かったかと、少しばかり反省をする。
よし、次からは角はエクシアとデュナメスにくらわせよう。
あの二人にやるのなら、彼にやる時みたいに罪悪感を覚えたりしない。
…それはともかく、と目を合わせて言う。
「アイツの趣味を忘れたか?罠を張ることと……妙な薬品を作り上げる事だぞ?そんな対象から与えられた薬を飲むとは……君には警戒心が無いと見える」
「そうなの……?」
「……これくらい自分で気付け」
本気で分かっていなかったらしい子供、つまりはキュリオスを見て、ヴァーチェは溜息を吐く。いや、本当に気付いて欲しいというか。
こんなので……これから大丈夫なのかと酷く心配になる。オレオレ詐欺どころか誘拐にまで巻き込まれそうなほどの気の弱さ、人の良さ、警戒心の無さ……そこまで思い浮かべて、あぁ、自分たちが傍にいないと大変なことになるなと確信した。そのうち借金の保証人とかにされて、多額の負債を抱えかねない感じだ。
死ぬまでずっと彼の傍というのは、想像してみると…思ったよりも嫌ではなさそうだ。
そのことに一息吐いて、結んでいなかった長いオレンジ色の髪を左手で弄りながら、右手で携帯を操作する。
「ヴァーチェ、何してるの?」
「この時間は休みだろうからな…学校にいるデュナメスに連絡している。エクシアは使い物にならない気がするから……連絡は面倒だからやらない」
「そっか……」
ヴァーチェの『エクシアが使えない』発言に対して疑問を抱いた様子でなく、キュリオスは納得したようにコクコクと頷いていた。
知っているのだ。休み時間はエクシアにとって『打倒ガンダム』のための貴重な時間であるという事実を。……最近は戦いと言うよりもほのぼのゲームになってる気がするが、まぁ、それはそれである。
「何か重大なことでも見つけてくれれば楽しいのだが」
「え…楽しい?」
「何でもない。言葉のアヤだ」
本心だけど。
というかそもそも…このくらいの事態では、もう何も思わなくなっていたりする。
嫌な慣れだ…と思いながらも『犯人はギャンのようだ』という報告メールを打ち、送信のボタンを押す。
しっかり受信されたのを見届けて、それからパチンと携帯を閉じる。
「…ねぇ、一つ良い?」
「何だ……いや、少し待て」
速いことに、もうデュナメスの返信が来たらしい。
振動しているマナーモードの携帯を開いて、新たに送られてきた『今、ギャンは生徒に追いかけられてる最中。捕まりそう』というメールを読む。…状況は好転しているようだ。
それに微かに安堵しながら、ヴァーチェは携帯をソファに放って、両手を使って髪を弄りだした。自分たち四名の中では純粋に髪が長いのは彼だけであり、したがって心ゆくまで弄ることが出来るのはキュリオスの髪のみである。複雑に編むことは出来なくても、わりと楽しませてもらっている。
そして、弄りながら話の続きを促す。
「で、何だ?」
「あのね……」
どうでも良いことだろうが、言いにくそうに躊躇って数秒後。
「……どうしてボクって君の膝の上に乗っているの?」
「オレが乗せただけだが」
「……何で」
「決まっているだろう」
何でこんなことも分からないのかと、呆れながらも言葉を続ける。
「こちらの方が髪が弄りやすいだろう」
というわけでキュリは子供化。
一番まともと言えばまともなんじゃないだろうか。この症例。