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オーガンダムは台所に立っていた。
リジェネとティエリアとに食事を作るためである。
自分には食事は必要ない。嗜好品として嗜むことも可能と言えば可能だが、わざわざそこまでする必要は今回無いだろう。自分の弟妹たちはよく食べて寝ているようだけれど、その彼らにしたって殆ど必要ないはずなのだ、どちらも。どちらも全く無くても済む自分とは違って。
そう言うところが弟妹である、ということなのだとオーガンダムは捕らえていた。少しばかり未熟な弟たちと妹なのだと。
あぁ、けれど、よく食べていた彼らを見るときの父の顔はとても穏やかな物だった気がする。穏やかで、いらないと言う自分にも折角だからと言う理由で食べさせて、いつの間にかそれが当たり前になっていた。
と、ここでオーガンダムは首をかしげた。
何かがおかしい、気がする。
その違和感は、考えれば直ぐに分かった。
「……どうしてお父様が一緒なのに、私の食事がいらないと思ったの?」
妙な話だ。だって『当たり前』になっていたというのに、どうして自分は今回は食事を必要ないと思ったのだろうか。用意していなかったら静かに、食べないのかと誘われるのは目に見えている事実なのに。
けれども、いらないのだろうという考えはあながち間違っていないとも思った。
今の父は、それを指摘しないように思えたのだ。むしろ、持って行ったら迷惑そうな顔をしそうな気がした。
……やっぱりおかしい。
何かが間違っている。自分が間違っているのか何が間違っているのかは分からないのだが、それでも何かが間違っているのは良く分かった。でなければ、ここまで過去と現在の父の印象が違うわけもない。
一体どういう事だろうと考えている内に食事は完成して、とりあえずリジェネの方を先に運ぶことにして台所を出る。手に持つトレイの上には暖かなコーヒーと、簡単につまめるサンドイッチ等々。
それらを持ち、廊下を歩きながら思う。
流石に、この話は彼に相談するわけにもいかないだろう。父が『父』と違うなんて言って、喜ばれるとも思えないし。
残るはティエリアだが、彼は父を知らないから何とも言い難い。
……となると。
「他の弟妹たちを連れてくればいいのかしら………でもやっぱりそれも…姉としてはどうかと思うし」
最終手段も何だかパッとしなかった。
全く良い案が出ないことにため息を吐いて、歩みを意図的には止める。
考えても結果が出ないときは無理に考えない方が良い。無理矢理考えた出したことで行動しても、良い結果は出ないだろう。
そんなこんなで、いつの間にかオーガンダムはリジェネのいるであろう部屋にたどり着いていた。危うく通り過ぎるところだったけれど。
ノックをして入ろうとして、中にヒトの気配がないことに気付いて目を細める。
これはどういうことだろうか?
「お父様……?」
呼びかけながら入った室内。
そこにはドアの外から気配の有無が教えていたとおり。
誰も、いなかった。