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十年後設定。そして思うのですが、何だかみんな仲良しだなぁと。
だってこれってある意味群れてるよ雲雀さん。
でも、平和ならそれで良いかと思ってみたり。



 パリンという高く澄んだ音の後に、バキッという何かが壊れる音。
 それらを聞いて、綱吉は軽く息を吐いた。いつものこととはいえ、本当にどうにかならないものだろうか。……いや、あの人は嫌がっているのだから、この状況もやむなしといえるのだろう。むしろ死者が出ていないだけマシだ。
 ペンを置いて立ち上がり、窓を開けて階下で憤っているとある人を見下ろす。
「雲雀さーん、お願いですから物に八つ当たりしないでください」
「……煩いよ沢田綱吉」
「何とでも。これだけは聞いてもらわないと困るんで」
 だって天下のボンゴレと言っても、使える資金は膨大であろうと限界もあるのだから……これ以上修理費がかさむと悲しいことになる。今でも軽く酷いことになってるのに。
 というわけなので、たとえ雲雀への恐怖が抜けきっていないからと言って、部下である以上は決して注意せずにいるわけにもいかないのだった。実に難儀なことではあるのだが。出来れば他の人に代わって欲しいと思うけど。今では……多少は慣れてしまっている。ちょっとした進歩だが素直に喜べない。
 はぁ、と息を吐いて、窓の枠に肘をついて頬杖をつく。
「でも、どうして出来ないんでしょうね……それ」
「リングが柔いんだよ。人間だったら咬み殺してあげたいくらいだ」
「いえ、間違いなくリングじゃなくて貴方が手加減を知らないからだと思います」
「……ねぇ君、ちょっとふてぶてしくなったんじゃない?」
「でないとマフィアのボスなんてやってられませんよ」
 チラリと送られてきた視線に肩を竦めて応答する。これは本当のこと。
 とりあえず、笑顔で腹の探り合いが出来るくらいには度胸もついたと思う。これも進歩だろうが、やっぱり喜ぶことは出来そうになかった。
 あれ、何か喜べない進歩ばかりしてる気がするんですが気のせいですか?
「……うん、気のせいだよ気のせい」
「どうかしたの?人と話してる最中に独り言なんて」
「あ、いえ!何でもありませんから!」
 漂ってきた殺気に慌てて返答して、ちょっと考えて、窓枠に足をかけた。
 それからヒョイッと中に飛び出し、雲雀の隣にトンと着地する。三階からの飛び降りだったが、このくらいはどうってことない。マフィアの世界は本当に大変なので。この前は五階建てのビルの屋上から突き落とされた。しかも笑み付き、敵ではなく味方に。あれは本気で死ぬかと思った。修行だと言えば何でも良いわけでもあるまいに…。
 だから出来れば止めて欲しいと思うのだけれど、相手が相手なので強くも言えない。
 今だにあの赤ん坊の家庭教師の最強さは健在なのである。
「何で降りてきたの、君」
「何か、雲雀さんを見下ろすのが嫌だったんで」
 呆れたような視線に笑って返す。目上であれ格下であれ、人を見下ろすのはあまり気持ちが良い物ではない。だから本当に、自分はマフィアだろうと何だろうと『ボス』という上の人のポジションは似合わないと思う。
「へぇ。でも、一応だけど君の方が上の立場じゃなかったっけ?一応だけど、一応」
「そんな一応一応って連呼しないでください……」
「一応なんだから良いと思うけど」
「いや、そうですけど……そーいうものでもないんじゃ?」
「いいでしょ、別に。ある程度は認めてるんだから」
 何気ないように嬉しいことを口にしてくれてから、雲雀は傍にあったベンチの上にあった布製の袋の中へ手を入れ……軽く眉を寄せた。
 それで事情を察した綱吉は、苦笑を浮かべる。
「もう使い切ったんですか?用意してた指輪」
「だから言ったじゃないか。脆いんだよ、あの指輪たち」
「いえ、だから脆いんじゃなくて雲雀さんが強すぎるんです」
 戦闘の度に指輪をいくつも消費していく雲雀に、誰が言い出したのかは最早定かではないが……どうにか炎をコントロールして、指輪が壊れないように出来ないかという話が出た。
 指輪は無限ではないし、次々に新しい物を用意しなければならない事態を好ましく思わない何名か(自分含む)がこれに賛同し、結果、雲雀は任務の合間に指輪を壊さない練習を重ねている。が、当たり前のように上手くいかず、毎回毎回失敗する度に彼の周りの物が八つ当たりで一つ壊れる。今回は……木だった。あとで植え替えなければ。
「こういうことに指輪を使うのは無駄だと思うけど」
「大丈夫ですよそこは。これ、戦闘にも使えないくらいのですから」
「……どうりで弱いわけだね」
「それを壊さずに使えれば完璧ですよ、雲雀さん」
「出来ればこういう状況じゃない。全く……あの時、赤ん坊が頷かなかったら君たちを全員咬み殺そうと思っていたのに」
「え……」
 あの時、そんなことを思ってたんですか。
 驚愕に瞠目していると、雲雀ははぁ、と嘆息した。
「赤ん坊も賛同するならって我慢したけど……やっぱり、赤ん坊以外を咬み殺しとけば良かったかな」
「……思いとどまってくれて幸いです」
 物騒な呟きに冷や汗が流れるのを感じながら、綱吉は内ポケットから携帯電話を取り出した。メールを打って、次の指輪を準備させるためである。……こう言うとき、本当に自分は変わったと思う。人を使うようになるなんて、中学校の時は想像してなかった。
 メッセージを打ち終えた携帯をたたみ、視線を雲の守護者へと戻す。
「でも、とりあえず雲雀さん、頑張ってください」
「他人事だね、沢田綱吉」
「ちょっと徹夜続きなんです。疲れてるんです。だから今の俺にいつもの反応は無理です。今も少し朦朧としてるから……」
「……ふぅん。じゃあ寝れば?リングが来たら起こしてあげる」
「はい?」
 綱吉は我が耳を疑った。群れるのが嫌いな雲雀が、こんなことを言うなんて。
 驚いて雲雀を凝視していると、ふいと顔が逸らされてしまう。
「……君が今片付けてる書類、元は僕のでしょ。借りを作ったままは嫌なんだ」
「あれ、雲雀さんの嫌がってるこの練習の時間を作るためにですけれど……」
「それでもだよ。元は僕の仕事であることに変わりはないんだから」
 ぶっきらぼうに言い捨てて、ベンチに腰掛ける雲雀。
 その言葉に綱吉は笑った。なんだかんだ言って、たとえ彼の練習時間確保のためだろうと、彼のために寝不足になった自分を心配してるのだと分かったから。






何か、何だか別人…?でもこれで良いじゃないか別にとか開き直ります。
平和だったらもう何でもOKな気分でした…からね。
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