13:ひとかけら (00:途美学園)
「……あら?」
背後から聞こえてきた声に、ティエリアはちらりと視線を向けた。
「どうかしましたか、ヴェーダ」
「生徒会室にこっそり持ち込んでいたお菓子と茶葉が無くなってるんだけど……本当に、欠片も残ってないのよね。誰か勝手に食べて飲んだのかしら?」
「……貴方はそんな物を持ち込んでいたんですか」
「だって、食べたいと思った時に食べたい物があった方が良いでしょう?」
じとりと睨むも、彼女は全く気にした様子はない。「どの辺りに隠したかしらね……」なんて呟きながら、目の前にある棚の引き出しをひっくり返し、プリントや本が整えて置いてある方にまで手を伸ばす。……そんな所に菓子があるとは思えないのだが。
学園所有者から回されてきた、明らかに生徒が目にしてはいけない様な書類を片付けながら、何となく最近の生徒会の様子を思い出してみる。
昨日は特に用事も無かったから、いつの間にかただ喋り遊ぶだけになっていた。一昨日はやるべき事があったので、仕事をしようとしないメンバーを全て放り出したのだったか。その前日は一昨日と似た様な物で、しかしあの時はヴェーダが何故か遊びに来ていたはずだ。遊びに来れるくらい暇なら手伝えと言っても動かず、ソファーに座って、どこからともなく取り出したクッキーを食べていたのは今もまだ覚えているから、間違いないだろう。
と。
そこまで思い出して、ティエリアは書類から視線を外した。
そのままヴェーダの方を見れば、やはり彼女は捜索を続けており。
「……ヴェーダ。三日前、貴女はどこからクッキー出したんですか?」
「それは当然、この棚から………………あ」
「そういうことらしいですね、どうやら」
「そういうことみたいね……うっかりしてたわ」
息を吐き、ヴェーダは本とプリントの山を押しのけて、ソファーに座って腕を組んだ。
「……次は何を持って来ようかしら」
「何も持って来ないでください」
「マフィンとか良いかもしれないわね。タルトとか……あぁ、小さめのケーキも素敵かも」
「こちらの話を聞くつもりはないんですか」
「あんまり無いかも」
「……」
V「でも変ね。茶葉のほうは何でなくなってるの?」
T「飲んだのを忘れているだけでしょう?」
V「そうなのかしら……」
R「やっほー、遊びに来たよー。二人で何話してるのー?」
T「……リジェネ、その手にあるものは何だ?」
R「え?最近生徒会室で見つけた茶葉で淹れた紅茶だよ?」
T「……そういうことらしいです」
V「みたいねぇ」
R「……?」
というお話でした。久々すぎて、ヴェーダに対するティエの口調が若干怪しい気がするんです。