それに出くわしたのは全くの偶然だった。でなければこんなタイミングばっちりの状況で、こんな所に来るわけもない。
しかし、出くわしてしまったのなら放って去っていくわけにもいかず。
プラスは息を吐いて、おおきなタンコブを付け泣いているブルデュエルと、オロオロしているヴェルデ、困り切っているステイメンやブイの所へと歩みを向けた。
「おう、ちびっこども」
「あ、プラスにーちゃん!」
「何があったんでい?」
「あのな、さっき、ヴェルデが投げたボールがブルデュエルの頭にぶつかって……」
「それでこのタコンブかい……」
それは随分と痛そうな話だった。
想像するだけで痛くなってくる気がして思わず眉を顰め、プラスは、ブルデュエルの傍にしゃがみ込んだ。
「大丈夫かい?」
「……っ」
尋ねかけたら涙目で首を振られた。
これは氷の入った袋でも持ってきて直ぐに冷やしてやるべきなのではないだろうかと思ったが、当然ながら、そんな物がご都合主義的展開でこの場にあるわけもない。そして付け加えるならば、この周辺にそう言った物をくれるような場所は無い。
どうしようかと考えた結果、酷く所在なさげにしているヴェルデに白羽の矢が立った。
「ヴェルデ、どっかから氷もらって来い」
「う……うん!」
「あ、オレもついてく!」
ようやく役目を貰えて顔を明るくしたヴェルデの後を追うようにブイが走って行くのを見届けて、改めてブルデュエルの方を見る。
「もうちょい我慢しろよ。アイツらが氷持ってくるからな」
「うー……」
「って、まぁ、無理か」
次から次へとじわじわとあふれ出る涙に苦笑を零しつつ、ふと、プラスはその涙の原因に手を伸ばした。
それから、痛まないように慎重に撫でる。
その行動の意味が分からなかったのだろう。子供たちの不思議そうな二対の視線を向けられ、軽く肩を竦めた。
「ちょっとしたオマジナイ、ってやつだから気にすんな」
「おまじない?」
「ノワールにーちゃんが好きな?」
「……いや、それとはちょいと違うんじゃねぇか?」
一緒かもしれないが、あまり一緒にして欲しくないような。
複雑な思いを込めての呟きだったが、どうやら納得してはもらえなかったらしい。
何が違うのかと言わんばかりの顔で見上げてくる彼らに返せる言葉が見つからず、とりあえず話を進める事にした。答えられない質問を誤魔化すには、それは実にもってこいの手段だろう。
「まぁ、とにかく、オマジナイなんだよ。痛みが無くなりますようになーって」
「そうなの?」
「気休めだけどな」
「……そういうこと、言っちゃダメだと思うんだけど」
さらりと告げた言葉にステイメンが呆れた表情を浮かべた。
それを面白げに見て、プラスは笑った。
「そうかい?」
「だって、おまじないなんだから」
「そりゃそうか。で、ブルデュエル、どうでぇ?痛いのは飛んだかい?」
「……あまり」
その感想に、それはそうだろうと内心で頷く。おまじないで痛みが無くなったら苦労なんてしないし、氷を取りに行かせることもない。
「でも、」
と、プラスの思考を遮り彼女は続けて、はにかみながら言った。
「うれしいし……あったかいね。いたいのが、気にならなくなるくらい」
ブルデュエルのそんな言葉に。
過去を思い出してプラスは仄かに表情を和らげた。
『おまじない?』
『メタスが言ってた。こうやったら、痛くなくなるんだって』
『……普通に痛ぇままだけど』
『……おかしいな。メタスの言った事だから、まちがいないと思ったんだが……』
『メタスちゃんだってたまにはまちがえるんじゃねーの?けどまぁ……』
『……なんだ?』
『……なんでもねぇよ。ただ、』
『ただ?』
『少しくらいなら効果、あったかもなって思っだけだ』
ゼータとプラスは仲良し兄弟なのですというのを言いたいお話。それと、ちびっこたち良いよねとかそういう事も言いたいお話です。ちびっこたちの成長した姿とか本気で見たい。