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何気になんか初めてに近いかも知れない(拍手除く)ちゃんとしたえうーごの話。
「…ここどこだ?」
とある日。
とある場所で
プラスは見事に迷子になっていた。
地元ではないという事が、これほどまでに大変なことだったとは思わなかった。思わなかったどころか予測すら出来ていなかった。
本当に、困ったことに。
地元でないというのはつまり、ここがどこなのかが本当に分からないと言うこと。それはつまり、帰り方も行き先も分からないのであって。
そんな状況であっても、泣き出さなかった自分を褒めてやっても良いと思う。
まぁ、正直こんな状況は朝飯前だ。以前には兄を怒らせて本気で生死の狭間を彷徨ったこともあったし、従兄弟と遊んでいて池に落ちて……危うく沈みきってしまうところでもあったのであるし。
要は、場慣れである。
……あまり嬉しくない場慣れではあるのだが。
「こーいうときはあれだな…歩いてるだれかにきけばいいんだろ…」
あるいは交番。
そう見当づけて辺りを見渡してみて。
誰もいないのをしっかしと確認してしまって。
……軽く落ち込んだ。
「…やべぇ…これじゃほんきでムリじゃねぇかい…」
「……何がだ?」
「そりゃあ、もどることに決まっ……て…」
「…そうか。なら……問題ないと思うぞ」
ここにあるはずのない声に呆然と顔を上げるプラスに構うことなく、ゼータはプラスの手を取って歩き出した。そうすると、自然に引っ張られて兄と一緒に進む体。
迎えに来てくれたのかと、気付いたのはしばらくしてだった。
…この兄は、いつもはとてもとても天然で時折抜けていて、とりあえず一人で生活させたら危ないような、キレるととてつもなく怖い相手ではあるのだけれど。
頼れる兄では、あるのだと。
何となく思って、プラスは握られている手を握り返した。
……のはいったい何年前の話だ。
何となく昔を思い返しながら、プラスはため息を吐きつつ兄の姿を探していた。
つまり、あれだ。昔とは立場が見事に逆で、今はゼータが探される役、そして自分やメタスやマークⅡやらが探す役になっているのであった。自分が迷子になったときより探す人数が多いという点だけでも、どれだけ捨て置けない状況かというのがよく分かる。
それはともかくとして。
何がどうして、結果としてこんな状況に。
そう、嘆いてため息を吐いても仕方はないだろう。
「ったく…頼れる兄はどこに行ったんでぇ…」
あの日のあの時のあの思いは、全て夢で幻で露と消えるような物だったのだろうか。
有り得ない話ではないと思うし、何より、それが消える以前に自分の勘違いである可能性もある。否定はしないし、出来ない。
何せあの兄だ。弟としても思うところは当然ある。
「ったく…お、いたいた。…ゼータ!」
「……あぁ、プラスか」
そして…まぁ思うところがあったとしても、割と簡単に兄は見つかる。
やはり兄弟だからなのだろうか。今のところゼータを見つけた回数で、一番最多を記録しているのは自分だった。嬉しいかと言われると微妙だと答えるしかないような、そんな記録なのだけれども。
こんな記録誰かが更新してくれないかと思いながらも、プラスはゼータがいる木の目の前まで寄った。
「何やってんだよお前」
「いや……雛がいて」
「ヒナ?」
「丁度……巣立ちだったようだから」
ほら、と示されるままに視線を挙げると、兄の言うとおり、そこには鳥の巣。それと、今まさに飛び立とうとしている小さな鳥の姿。今回帰ってこなかったのはこれを見たかったかららしい。
迷子ではなく帰ってこないだけのゼータは、自分の意思で帰ってこないからこそに探し回らなければならないのである。放っておけば満足するまで帰ってこない。捨て置けない理由はコレだった。いつ帰るか分かった物ではないのだ。
「…プラスも見ていくか?」
「見たら帰るんだからな。一直線に、真っ直ぐ!」
「……あぁ、分かっているが」
「怪しいねぇ…」
そう言って分かってなかったことが何回あると思ってるのやら。
昔と今とで立場が逆転してると良いと思ったんです。