金髪バーテン、黒ずくめの情報屋、高校生くらいの少女。
そんな三人組が一緒に歩いているのを見かけたのは、セルティにとって完全に予想外な、偶然でしかない出来事だった。
だからなのかもしれない。事情を知らない人々は興味を抱いて足を止め、事情を知っていると凝視した後に素通りしたくなるような三人組を見つけた時に、思わず固まってバイクを止めてしまった事は。
しかし、あれは……何だろう。
ぼんやりと、事情を少しだけ知っている首なしは思う。
本当に、何なのだろう。あの少女が罪歌である事は月曜日の朝、杏里に呼ばれて行ったから知っているけれど、それがどうして静雄と臨也と一緒にいるのだろうか。それ以上に静雄と臨也が一緒にいて喧嘩が起きていない、という事実がだいぶ疑問なのだけど……そちらは何故。
あの三人組を初めて見たあの瞬間、きっと首から上があったら自分はぽかんと口をあけていたに違いない。ワケが分からな過ぎる状況に対して半ば確信的にそんな事を思いつつ、セルティはバイクをゆっくりと進ませた。
向かうはその三人組の方。事情をほんのちょっとかじっているだけに、どうしてあんな三人組が出来上がったのかが気になる。
そうして、ゆっくりゆっくりと進み、あと数メートル、と言うところで。
唐突に、臨也がくるりとこちらに顔を向けた。
その表情は、いつものような本心を読ませない笑み。
「やぁ、運び屋。朝から仕事?」
……一見すると爽やかな笑みのままに手を振る臨也に向けて、セルティはシューターを突っ込ませたいという衝動に駆られた。理由はあの笑顔を見たからだろう、きっと。
それにしても、一体どこから気配を察知されていたのだろう。どこかで勘づかれていたとしか思えないのだが、そんな素振りを彼は一つも見せなかった。流石と言うべきだろうが、やはり良い気持ちはしない。
息の代わりに影を吐き出して、とりあえず彼らの方へ進む事にした。手元には十分注意しながら。でないと本当に臨也にバイクで突っ込みかねない気がしたので。
その努力の結果だろう。三人の傍に普通にバイクを止める事が出来た瞬間、とんでもない安堵が体中を満たした。
…良かった……朝から新羅に仕事をさせる事が無くて。
臨也の安否以上に心配していた事が杞憂に終わった事に安心しつつ、PDAに友人への挨拶を打ち込む事にする。
『おはよう、静雄』
「おー、セルティか。大変だな、仕事」
『慣れているから問題ない……ところで、これはどういう事だ?』
「あ?」
『いや、お前が臨也と一緒にいてキレないのは珍しいし……ほら、そっちの女の子』
と、ここでセルティは罪歌の事をそのまま表していいのか悩んだ。
もしかしたら一緒にいるだけで、臨也はともかく静雄は正体を知らないのかもしれないと思ったのだ。
しかし、その心配こそ杞憂だったらしい。
「ん?罪歌がどうかしたか?」
彼は、あっさりと彼女の名前を口にした。
『……いや、何で彼女が静雄と一緒にいるのかと』
「だって、私は静雄を愛しているのだから当然でしょう」
その問いに答えたのは罪歌だった。
彼女はぎゅっと静雄の左腕に抱きついて、睨みつけるようにこちらを見ていた。知ってはいたが……本当に嫌われているようだ。別に、こちらだって敵意さえ見せる相手に好意を向けるつもりはないから、お互いさまと言えばお互いさま、だけれど。
…っていうか…愛してる…ねぇ?
それでどうして静雄に切りかかって行かないのだろうかと首を傾げたが、言ってしまうことで藪蛇になるのは嫌だったので、あえてそれは伝えない事にする。
代わりに、もう片方の疑問を尋ねる事にした。
『じゃあ、静雄と臨也が一緒にいるのはどうしてだ?』
「え?そりゃ罪歌を監視するために決まってるじゃないか。ねー?」
「肯定を求めんな。つーか、俺は帰れって言い続けてるじゃねぇか」
「でも役立つから置いててくれるんでしょ。それに昨日は俺がぎゅーってしても殴らなかったし……ねぇねぇ、そろそろ俺が一緒にいる事に慣れてきた?ていうか俺がいなくなったら寂しいとか言っちゃわないかな」
「…あれは手前らが有り得ないほどに疲れた顔してたからだ。調子にのんじゃねぇ」
「有り得ないって…そんなに疲れていたかしら、私たち」
「まぁ、疲れていたのは間違いないけど…そこまで?」
「あぁ。見てらんねぇくらいだったぞ、あれ」
……何があったのだろう、昨日に。
あの臨也が疲れきった顔をして、なおかつそれに絆されるみたいにぎゅーって……つまり抱き締められたりしても殴り返さない静雄がいたなんて。
…罪歌が人間の姿を取るようになってから、何だか不思議な事がたくさん起こっていたらしい。
それらを見逃した事を悔いるべきか喜ぶべきか、ちょっと分からないセルティだった。
なんだかんだで仲良しなのですよ。仲良き事は美しきかな。