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…と、いうわけで。色々な皆様から見た三人組。今回は波江さん。
「……何かしら、これ」
いつもの様に臨也の事務所に出勤してきた波江は、目の前に広がるその光景に一瞬だけではあったが、動きを止めた。
よく雇い主が座っている回転式の椅子には、当然ながら臨也が座っていた。その恰好のまま目を閉じて頭をカクンカクンと上下に揺らしているから、眠っているのであろうことは容易に理解できたのだけれど。
そして…ソファーには、有り得ない事に静雄が仰向けに寝ている。こちらも眠っているようで……それだけでもかなり異常な状況だと言えるだろう。何せ臨也と静雄は犬猿の仲なんてレベルでは済まされないほどの仲の悪さなのだ。敵の本拠地で眠るなどという愚行など、どれ程の馬鹿でも実行するはずがない。
もう一人、身も知りもしない少女が池袋最強の上に乗るようにして、こちらはうつ伏せになって目を閉じていた。見れば、あの忌々しい女…張間美香と良く共にいたと言う園原杏里と似通った顔をしているが…親類縁者だろうか。
ともかく、少女はどうなのか知らないが、この男たち二人が同じ部屋で眠っているなんて、天と地がひっくり返るくらい有り得ない状況ではある。
果たして起こすのが正しいのか、このまま放っておくのが正しいのか。
とりあえず…何事も起こしたくないのなら、このまま寝かしている方がいいだろう。
ついでに、雇い主が寝ているのなら今日は休み、と言う事でも良いだろう、きっと。
「そうと決まったら帰ろうかしら…」
「…何を決めたんだよ…波江」
「あら、起きていたの?」
「今起きたんだよ……あぁ、シズちゃんたちはまだ寝てるんだ」
「…驚いた。貴方、今日は嫌いな人間が同じ場所で眠っていても不機嫌にならないのね」
「まぁ、色々あってね。…っていうか、間違えないで。シズちゃんは人間じゃないから」
「そういえばそんな話だったかしら。それよりも、」
雇い主の相手をするのも面倒だったので、波江は適当に返事をしつつ話を逸らす事にした。
「そこの子、誰?」
「罪歌」
「……貴方、ついに頭だけじゃなくて目まで悪くなったの?」
「…酷い言い様だね」
すぱん、と言ってやると、彼は若干頬を引きつらせた。
それに対して冷たい視線を向けつつ、波江は言葉を続ける。
「だって、そうとしか思えないじゃない。罪歌っていうのは日本刀でしょう」
「だから、それが人間になったんだよ」
「擬人化の話?その類の話題は私ではなくて狩沢や遊馬崎の方に持っていくべきでしょう」
「違うんだって!妄想じゃなくて本当なんだって!」
「信じられないんだけれど」
「でも本当なんだよ!俺だって信じたくないけど本当なんだよ!?」
「じゃあ、証拠を見せなさい」
「…仕方ないな…」
どこか諦めたように息を吐き、臨也は席から腰を上げた。
それからソファーの方に向かい、彼は眠っている二人のうちの上側の肩を軽くゆすった。
「ねぇ、ナマクラ、ちょっと起きてくれない?」
「…う……あら、ウザヤ」
振動にゆっくりと目を開いた彼女はぼんやりと彼の方を見て、肩に触れている臨也の手に視線を移したところで眉をしかめた。
「…朝起きていきなり貴方の顔を見るなんて最悪ね」
「俺だって似たようなもんだよ」
「その貴方が、一体何で私を起こすの」
「手から日本刀を出して欲しいんだけど」
「…?別に良いけれど」
首を傾げながらも少女は頷き……広げた右の手のひらを、彼の方に向けた。
そうして、結果。
波江は、少女の手のひらから日本刀の切っ先が生えるように伸び、顔面に突き刺さるギリギリの所で臨也がそれを避ける、という一瞬の光景を目にする事になった。
どうしても避けきれなかったのか、ハラリと床へ落ちる短い黒髪を眺め、一応、一言。
「少なくとも彼女が普通ではなくて、なおかつ貴方と仲が悪い事は分かったわ」
「…それだけ?俺が命張ったのに、罪歌だって認めてくれないの?」
「それは本人に訊かないとね…貴方、罪歌なの?」
「いいえ。私は歌子っていう一般市民よ」
「…だそうよ。やっぱり貴方は嘘つきなのね。死ねばいいのに」
「ちょっと待って!?罪歌、お前そんなに俺に嫌がらせしたい!?あと、一般市民とか無理がありすぎるだろ!……波江も絶対にコイツが罪歌だって理解してるよね…!?ってか、人が珍しく嘘ついてないのに死ねって酷くない?」
「だって、嘘じゃないの」
「嘘よね」
「……お前ら、後で覚えてろよ」
二対一ではかなわないとでも思ったのか、涙目で睨みつけてはきても反論をしなくなった臨也。
それを見た時、静かになっていいと、波江が思ったのはそれだけだった。
波江さんと罪歌は手を結んでもいいと思うんだ。
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