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そろそろ最終決戦ですが、戦闘に全く加わっていないマリナ様たちはどうするんでしょうね。
見届ける役、なんですかね。
19.君を思い出す景色
目の前に広がる、美しい青の光の溢れる風景。
それを見て、真っ先に刹那が思い浮かんだのはどうしてなのだろう。
考えてみて、マリナは根拠を探すことに失敗した。根拠なんてどこにも見つからなかったのだ。だが、それでも、あの光が刹那と関係している何かであることに対する確信は持っていた。
理由なんて必要ない。
見た瞬間に刹那だ、と思った。
そして、この美しくも見える風景を作り出している彼を知っているという誇りを覚えた。
同時に、まだ闘っている彼のことを考えて、少し悲しく思えた。
しかしその悲しみは今までの物とは何か、違う気がする。今までは……そう、とにかく悲しかったのだ。なのに今はその悲しみも薄れ、見守りたいという気持ちを強く抱くようになっている。それは刹那に対する自分の気持ちが変わったのか、それとも刹那の戦いに向ける思いが変わったのか。どちらにしろ、何かが変わったのだということだけは確実だと言える。
「…刹那」
呟きながら、じっと光のある方を見る。
果たして、あちらはどうなっているのだろう?刹那は怪我をしていないだろうか。クラウスは無事だろうか。カタロンの皆は。ソレスタル・ビーイングはまだ大丈夫なのか。相手の様子は一体。
見ていることしかできないのがこれ程辛いなんて。今でも戦う事はいけない事だと思っているし、自分も銃を取る気はない。だからこの場にいるしかないのだということくらいは理解しているつもりだ、けれど。
やっぱり、辛い物は辛い。
知り合いが傷ついているのかと思うと心が痛い。同じ目標へ突き進む仲間と呼べるかもしれない人が武器を取るのは、悲しい。一言も言葉を交わしたことがない相手でも、被害を被ってしまっているなら、それはとても辛いことだ。
甘いのだろうとマリナは苦笑した。たとえ端であろうと戦場にいるくせに、まだこんな甘いことを言っている。自分はきっと、この場にいる誰にとっても異端的存在だ。
もちろんそこから子供たちは除かれる。彼ら彼女らはまだ、そんなことを考えるような年頃ではないし、そんなことを考えさせられる立場でもない。彼らは無邪気であってくれればいい。むしろ、無邪気であって欲しい。そうあって欲しいからこそ、カタロンは彼らを保護しているのだろうから。
子供たちだけはずっと、戦いの醜さを感じずに済めばいいのだけれど。
それも甘い考えなのだろうかと思いながら、マリナは中を漂っていた子供の一人の手を握った。それから軽く力を込めて、引き寄せて抱きしめる。
「マリナ様ー?」
「少し、こうしていても良い?」
どうかしたのかと上げられた視線に微笑んで答えると、子供は頷いてから直ぐに視線を窓の外へと向けてしまった。この状況に不満は持たないが、今はそれよりも外の方が気になる……というところか。確かにこの光景は生きていても見れるか見れないか分からない光景だし、その気持ちも良く分かった。
それが喩え、戦いのために引き起こった光景でも。
どんなものであれ、美しさに変わりなど無いのだろう。
今回は特に。あの光は戦いによって引き起こされた物だが、決して、戦いを引き起こす物ではないだろうから。見て、そう思った。
だって、あれだけ美しい光が戦いを引き起こす物であるはずがない。
刹那が作り出した景色が、戦いを引き起こす物であるはずがない。
それは確信と言うよりは、むしろ決定事項に近かったかもしれない。マリナの中にある常識、とも言えたかもしれない。
刹那とマリナは、同士だ。共にやり方は違えど争いを無くすことを目指している、仲間。それと同時に、マリナは少しだけ刹那を弟のように思っていたりもする。年は離れているけれど、何だか動向が心配になるし、ふとした瞬間に気にしたり、まるで遠い場所に離れて住んでいる姉弟みたいだと笑えてきたこともあった。
弟の方がしっかりしているというのも、ちょっと考え物だけれど。
そんなことを考えながら、ふと、そういえば刹那のイメージカラーは青なのだろうかと思い至る。彼の機体も青だし、パイロットスーツも同じ色だ。
だから光も青なのだろうかと思ったが、それは多分違うだろう。他のガンダムのGN粒子も同じような色だったはずだ。他のはちらりと見たくらい物のだし、赤い粒子をばらまくガンダムだって見たことはあるけれど。
などというとりとめもない思考を軽く首を振って打ち切り、マリナは再び遠い向こう側に広がる光を見つめた。
刹那を思い出させる光を。
刹那を思い出させる景色を作る、光を。
あの光は誰に何を与えただろう。