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305
リジェネ・レジェッタがいる。
それを認めた瞬間、アリオスは自分の心がすっと冷えていくのを感じた。
父の仇が、目の前に。
あの時、自分の目の前で父を殺した存在が、目の前にいる。
「…アリオス?」
「キュリオス、黙ってろ。黙って…ここにいろよ、いいな?」
「嫌だ」
「……は?」
出来るだけ身の内の冷たい激情を半身に悟られないようにと言ったのに、返ってきたのは拒否の言葉。思いもよらない返事に思わず呆けた声を上げてしまった事に対しての罪は、恐らく自分にはないだろう。
一体どうして拒否なんて、とベッドの下でキュリオスの顔を見れば……彼は、いつものようにオドオドした態度ながらも、何かを決意したような表情でいた。
それは、同じく父の仇を目にしているからこその表情。
あの、戦うことを好まないキュリオスでさえ、かの仇をどうにかすべきだと思うほどの。
半身の場合、それは恐らく、私怨ではなく別の何か。
「僕はね……アリオス」
「何だよ」
「みんなが怖い顔をしているのが嫌なんだ」
「……」
「だから、みんなが笑ってくれるなら、僕だって、戦うよ?」
静かに、気弱な笑みを浮かべてキュリオスは言った。
そう。それは、私怨などではなく、心配、ただそれだけの感情。
こんな半身を見てアリオスはいつも思うのだ。どうして父は、彼にまで戦う力を与えたのかと。せめてキュリオスくらいには、戦う力なんて物騒な物を与えなくても良かったのではないだろうかと。
それで、彼だけが戦場に出ないとも思えないが…止める一因くらいにはなったろうに。
所詮『もしも』などという考えなど無駄な物でしかないのだが。
はぁ、と息を吐いて、アリオスは仕方がないと言わんばかりに肩を竦めた。
「しゃーねぇな……分かった。じゃ、出来るだけ危険に首は突っ込むなよ」
「……善処、かな?」
「かなじゃねぇっての」
ったく、と後頭部を掻いて、苦笑しているキュリオスの手を握る。
そして、二人は勢いよくベッドの下から飛び出した。
「……君たちは…」
「よぉ、仇」
「……」
驚いた様子のリジェネにアリオスは片手を上げてニッと笑って見せ、キュリオスは黙ってアリオスの後ろに立っていた。善処するとは言っていたが、とりあえず少しくらいは努力してくれるらしい。良いやつだ、やっぱり。
「…まいったなぁ……鏡を探しに来たら人形を見つけた?何の冗談?接点なんてどこにも無いじゃないか」
「んなもん知るかよ。テメェの都合なんざ誰も聞いてねぇ」
「酷いな。僕だって都合とかちゃんとあるのに」
ぶぅ、とふて腐れるリジェネなどかまいもせず、アリオスは黙って戦闘態勢を取った、隣のキュリオスも同様に、構えた。
「今度こそ仇、取らせてもらうぜ」
「…覚悟してください」
そして数秒後、部屋から二人は爆発と共に飛び出した。