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307


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「あ、ヨハン…さん、ですよね?」
「そうだが…何をしているんだ?」
「何って、見たら分かるだろ」

 アリオスがちらりとこちらを見ながら言った。
 確かに見れば分かる。だが、ヨハンは見て分かったからこそ問いかけたのだが。

「では質問を変える」
「どーぞ?言ってみろ」
「どうして武器を持っているんだ」

 ヨハンたちが見る中、二人は手に武器を持っていたのだ。
 一体どうしてと思うが、それは敵がいるからに他ならないのだろう。理由もなく武器を手に取るとも思えない。

 キュリオスが手にしているのは拳銃か。せいぜい一発程度しか装弾できそうにないほどの小ささの二丁の銃だが、弾を淹れるような箇所がそもそも無い。となれば、おそらくは彼ら特有の装備か何かで、撃ち出す弾は実弾ではないのだろう。

 アリオスの方は大きな剣を持っていた。これまた二本で、構えたまま彼は油断無く室内を見据えている。先ほどこちらを見たのは本当に一瞬だった。

「室内に、仇がいるんです」
「仇?とは…」
「ちょーっと待った!」

 と、ここでネーナが話に割り込んだ。
 ふて腐れたような顔でこちらを見て、口を開く。

「ヨハン兄、この二人誰?人間?異端?ていうか生き物?」
「おいおい…その言い方は無いんじゃな…」
「人形だ」

 ロックオンの嗜めを遮るようにアリオスが答え、そのまま彼は床を蹴って室内に飛び込んだ。廊下側に残ったキュリオスは室内へと銃口を向けている。

「…その、ヨハンさん、出来ればここから離れてくれませんか?危険、ですから…」
「だが、君たちを置いていくわけには…」
「……大丈夫です。ヘマなんてしません…多分」
「多分って…随分と不安になる事言ってくれるわね」

 ネーナが呆れたように言った。
 その点はヨハンも、恐らくロックオンも似たような意見だったろうが、それは敢えて言わない方が良かったのではないかとヨハンは思う。

 ほんの少し触れ合っただけでも分かるが、ネーナのような少しでも高圧的言い方は……キュリオスをおびえさせる結果になりかねない。

 だが、今回はそのような心配は必要なかったらしい。
 気弱な笑みを浮かべて、キュリオスはこちらを向いた。

「ごめんなさい。でも…大丈夫ですから、本当に。何かやってくれるというのなら……隣の隣の部屋にいる二人の人をお願いします」
「隣の隣……マリナとシーリンか?」
「アリオスが、誰かいるって言ってましたから」

 お願いします、とキュリオスは一礼して、その後直ぐにこちら側に飛び退いた。
 理由は簡単。宿の壁が完全に崩壊したからである。
 そして、そこから出てくるアリオスと……もう一人。

「アリオスっ!?」
「問題ねぇけど撃つな!跳ね返される!」

 素早くキュリオスの傍に寄り、アリオスがキュリオスを庇うように立つ。
 そんな彼の様子を目の端に止めながら、ヨハンはもう一人の方を驚愕を持って見た。

 人の背丈ほどもある宙に浮いた鏡の傍に立っている青年は、ティエリアにうり二つの容姿をしていたのだ。
 

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