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リジェネはちょくちょくティエリアにちょっかい出してたら良いと思いました。(作文)
そんな感じの含まれてる話です。
05.空耳
『ティエリアー、ねぇってばティエリア』
「……」
今日も聞こえてきた言葉を黙殺して、ティエリアは額に青筋を立てながら読書をしていた。何を読んでいるかというと何と言うことはない、単なる暇つぶしの物語である。先日アレルヤが勧めてくれた物だ。
そして、脳内で煩いのがリジェネである。
あの日……リジェネと初めてあった日以来、このイノベイターは何でか知らないが自分によく、このテレパシーもどきを送ってくる。さすがに戦闘中に来たことはないが、それ以外は暇なときだけでなく仕事の時まで来ることがある。正直鬱陶しいし、それを伝えたのだが彼は堪えた様子もなく通信を続けている。
というわけなので、ティエリアは最終手段に出ていた。
つまり、完全無視である。
『ティエリアー、ちょっとティエリアー?』
「……」
『…無視って酷くない?』
思わず「酷くない」と続けようとしたところで、シュンと音を立てて部屋のドアが開いた。そこにいたのは……アレルヤ。やぁ、と笑んでいる彼の手には数冊の本。そう言えば。いくらか大量に本を貸してくれるのだと約束していたのだ。
だが、今は少しタイミングが悪い。
「ティエリア、これ、約束の本だけど」
「あぁ、ありがとう。…アレルヤ、今は少し都合が悪いから出てくれるか?」
「都合?…どうかしたのかい?」
するとたちまち不安そうになるアレルヤの表情に、言葉を間違えたかと悔やむがもう遅い。都合が悪いのは悪いのだが、こんな何もなさそうな状況で都合が悪いと言えば、それは単なる言い訳かあるいは…体の不調くらいの物だろう。
そしてアレルヤは、第一に相手の心配をするのである。
さて、どうしたものかと考えた末、ティエリアは口を開いた。
「さっきから、妙に空耳が多くてな」
「…空耳?」
『へぇそうなんだ…って待ってティエリア!それ絶対に僕のこの言葉のことでしょ!?』
妙な声が聞こえてきたが気にしない。
何せソレは空耳なのだから。
ティエリアはアレルヤに頷いて見せ、ぱたんと本を閉じて彼に向かった。
「さっきからやけに騒々しい。最近も近い症状があるしと、どうやら少し疲れているようなんだ…だから、悪いなアレルヤ」
「……そっか。大変だね、ティエリア」
心配そうなアレルヤに全てを話せないのは悲しいのだが、罪悪感は僅かにあるばかり。何も間違ったことは言っていないし、今この瞬間にリジェネの言葉は全て空耳……つまり無いものとして捕らえることになったのだから。
空耳を空耳と言って何が悪い?
『ティエリア、僕は納得しないよ!というか誰も納得できないよ、その理論!』
「しかもだ、この空耳ときたらまるで誰か他人が話しているかのようでな」
『話してるんだから当たり前だろ!?』
「……騒々しい」
はぁ、とため息を吐くと、ティエリアがキョトンとこちらを見た。当然だろう、彼からすれば室内は静かな物だろうから。ティエリアだって、リジェネさえいなければ問題ないのに。さらに言うとアレルヤを追い返すようなマネをしなくて済むのに。
これもそれも全てリジェネが悪いのだ。苛立ちを心の中で自分そっくりの青年にぶつけつつ、ティエリアは軽く首を振った。
「何でもない、空耳についつい反応しただけだ」
『え、ちょっとティエリア!?』
「あ、そうなの?」
「そうだ」
疑わないアレルヤに、ティエリアは頷いて見せた。
「うん、じゃあゆっくり休んでね、ティエリア」
未だに心配そうな顔は消えない物の、本を置いて去っていったアレルヤ。
そんな彼がいたドア周辺を眺めながら、ティエリアは再び本を開いた。
『ティエリア、そういう態度を他人にとっていたら嫌われるんだよ!』
「貴様になど嫌われても構わない」
『そういう事言う!?』
「あぁ。何せ…」
と、ティエリアはにぃと笑った。
「お前は『空耳』だからな」
存在しない物に嫌われたって問題ない。
こんな攻防戦(?)が続いていたのでは、なんてね。