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途美学園設定です。
ハレルヤはあれです、規定無視して色々やってて持ってそう。
17.ウィンカー30メートル手前
「……ねぇ、ちょっと思ったんだけど、君、どうしてこんなの持ってるの」
「持ってるから持ってるんだよ。それで良いじゃねぇか」
「そういう物なのかなぁ……」
何か違うと思うのだけど。
しかし、それでも乗せてもらっている身としてはそれ以上を言うのは憚られるし、言ったところで何も変わらないだろう。どうせ軽くはぐらかされるかされるだけだ。
ハァ、と息を吐いてハレルヤの腰に廻していた手の力を強める。
「…高校生のくせに」
「何を今更。付け加えると免許もねーけどな」
「こんなので良く捕まらないよね、本当」
「警察か?アイツら結構簡単にまけるぜ?抜け道とか知らねぇし、そこ行ったら楽勝」
「追いかけられたことあるの!?」
それで捕まらなかったことにも驚きだが、本当に追いかけられていたことに驚きだ。そんな話一度だって聞いたことがない。
唖然としていると、前から押さえた笑い声が聞こえてきた。
「安心しろって、顔とか割れてねぇから」
「そういう問題じゃ…」
「学園所有者様も学園理事長様も何も言ってこねぇし、暗黙の了解があるってことで良くねぇか?得に所有者様の方とかな」
どうだ?と問われてアレルヤは返答に困った。
確かに、あの二人がハレルヤの、バイクの無断(?)所有に無免許運転に気付いていないワケがない。なのに何も言い出さないというのはそう言うことなのだと思う。あと、ばれたら承知しないという意思の表れ……であるようにも思えるのだが。暗黙の了解だけでなく、沈黙による脅しも入っている気が。
まぁ、それもばれなければどうとでもなるのだろう。
「…思うけど、僕らの高校の偉い人ってアバウトだね」
「それこそ今更の話じゃねぇか。特にお前とか、生徒会だし分かってるだろ完全に」
「まぁ、それもそうだけど」
だからこそ思うのではないだろうか。近くで見ていると余計にその行動の粗さが分かってくる上に、その行動が思いつきで行われていることとか何も考えられていなかったりとかしているのだと、より理解できる。ただ、一番の問題はそんな行動を全て突き通せるほどの権力を持った学園所有者自身ではないだろうか。
よくもまぁ、これで学園が学園として成り立っている物だ。
考えれば考えるほどにその恐ろしさ……もとい素晴らしさが分かってくる。
「ところで、寮の門限までには帰れそう?」
「余裕でいけるぜ。先にお前を送るから、部屋に戻って窓開けて待ってろ」
「ハレルヤは?」
「俺はバイク隠してから帰る。多分間に合うと思うけどな、念には念をって事だ」
ということは、自分を先に下ろすのは間に合わなかったときの策というわけか。ハレルヤが夜遅くに帰ってくるのはそれ程珍しい話でもないので、それに関しての対応の仕方はアレルヤも良く分かっているし、それはそれで正しい判断なのかも知れない。
…そもそも、間に合うか合わないかくらいの時間に帰り出すのも問題かもしれないが、それはそれと今回ばかりは言わせてもらうことにする。この状況を作りだしたのは他でもなく、学園理事長なのだから。というのも、学園から寮に帰ろうとした自分たちを引き留め、酒を買ってきてとスメラギに頼まれてしまったのである。
未成年に酒を買わせるのもどうかと思うが、その辺りは何度かお使いを頼まれているので店を選べば、苦笑とともに酒を売ってくれる人もいる。そういう人たちには諸事情がしっかりと知られているのだった。
だが、そんな店が何も近場にあるとは限らない。
そんな事情があったから、ハレルヤもバイクなんて持ち出してきたのだろう。
風を切る際に感じる冷たさに身を縮めながら、アレルヤは呟くように口を開いた。
「僕も一緒に行く」
「は?」
「だから、僕もバイクを隠しているところに一緒に行くよ。間に合うんでしょう?」
「多分ってったけどな」
良いのかよ、と一瞬向けられた視線にコクリと頷く。
「こう言うときはね、僕だけ安全ゾーンに送られるのは嫌なの」
「ってことは何だ?怒られるときは一緒にってか?」
「簡単に言うとそう言うこと。で…」
良いの?どうなの?
そう続けて問いかければ、軽い笑みの気配を感じた。
そうして、バイクが曲がったのは学園の約三十メートル手前の脇道。
正直、ウインカーがどこにも出ていない気がするのですが。
……ま、まぁそこには触れないで…。