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この二人のこともいつか書きたいと思っていたのです。
015:遠く離れた
「何やってるの?」
「わぁぁっ!?」
いきなり背後からいるはずない人物の声がして、イーピンは飛び上がるほど驚いた。
机の上に広がっていた便せんの上に被さって慌てて隠し、後ろに立っていた人……雲雀に視線をやる。そして、視界の中にとらえた彼は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。多分、どうして自分がこんな反応をしているか分かってない。
別に雲雀宛ではないし、見せても問題はないのだろうが、こういうのはやはり見られると恥ずかしい。それを雲雀は分かってくれていないらしい。こてんと首をかしげて、で?と問いの答えを催促してくる。これは……答えたら興味を失うパターンだろうか。
「あの…お師匠様に手紙を書いてたんです。遠いところに住んでいるので…」
「ふぅん…そのお師匠様って、強いの?」
「…えっと…」
その問いには曖昧な微笑みを浮かべて返した。
強いと思う。何と言っても師匠なのだから。けれど、そうだと言ったら雲雀は間違いなく倒しに行くだろう。そうなると、どっちも無傷で済むとは思えないのである。
なら、誤魔化すしかないではないか。
しかし、曖昧にしただけでは誤魔化しきれないだろうと踏んだイーピンは、話題の転換を試みることにした。
「あの、雲雀さんはどうしてここに?」
「沢田綱吉から手紙。他愛のない物らしいよ」
…つまり使いか。よく引き受けた、というか引き受けさせたものだ。
差し出された手紙を受け取りながら、綱吉の顔を脳裏に浮かべ、そういえば彼とも最近会えていないと思い出す。思い至ってしまうと……少し物悲しい。
近いうちに尋ねようと決めて、イーピンは手紙を懐にしまって雲雀を見上げた。
「どうもありがとうございました」
「別に。偶然こちらに立ち寄る用事があったから、ついでだよ」
「それでもですよ」
どんな事情があろうと、来てくれたのは事実なのだし。
そう思って微笑んだが、雲雀は用事は済んだからとさっさと去っていった。
彼の反応にも慣れた物だから苦笑して、でもまた知り合いが離れて行くのかと思うと寂しくも思えた。
十年後はどんな感じなのかなぁ…。イーピンは、まだ雲雀さんが好きだろうかどうだろうか。