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「貴方には聞きたいことがあるのよ、リジェネさん?」
「……どうして僕の名前を」
「キュリオスって言うんだっけ、この子。この子の知識なら全部私も引き出せるもの」
簡単な話でしょう?と笑みを浮かべるキュリオス…の体に降りたという『ヴェーダ』という人格に、リジェネは並々ならない警戒を抱いていた。理由は分からないが…『彼女』には勝てそうにないと、そう思ったのだ。
にしても『ヴェーダ』とは。
あの、あの鏡と同じ名前だとは。
こんな名前は滅多にないから、何らかの関係性があるのは間違いないだろうが、その関係が全く見通せないのが難点だろう。それが分からなければ対応の仕方も全く分からない。
今のキュリオスを壊しても問題ないのか。
壊してしまったら鏡に影響があるのか。
あったとしたら、それは何か。
……ともかく、である。
この辺りのどこかに鏡があるのは分かった。
「逃げたりとかしないでよ?私、出ていられる時間に限度があるの。だからうろちょろされるのは面倒なのよ」
「へぇ…?」
それは貴重な情報だ。つまり、『彼女』には制限時間という『弱点』があるという事である。それは、あるのと無いの、知っているのと知らないのとではとても事情が違ってくる、重大な事柄だった。
それをわざわざ言ってくるなんて、どれ程までにリジェネを甘く見ているのかは、知らないが。それが気に入らないかと聞かれれば答えは是だが、それのお陰で優位に立てるのならば今は、それを甘んじて受けることにしよう。
「ていうか、出来れば動かないで。追いかけるのも面倒な上に……ねぇ?被害はあまり広げたくないと思わない?私は思うけれど…あ、そこの三人も戦うの手伝って」
「…は!?何で私たちまで手伝わないといけないのよ!」
「手伝ってくれるなら、貴方たちの安全は保証するわ」
「だから、何勝手に…」
「分かった」
突然のヴェーダの申し出に突っかかろうとした赤髪の異端だったが、直ぐにもう一人の異端が彼女を押さえて頷いた。人間の方にも異論はないようで、成る程、彼らは彼らなりに危険などを把握しているのかもしれない。
……だが。
「じゃあ各自適当に攻撃ね」
「何だそのアバウトさ!?」
「煩いわね……いちいち指令とか出来るわけ無いじゃない。個人の判断が大切なの」
「言い出しっぺがそれってアリなのかい?」
「アリに決まってるでしょ!」
思わず突っ込んでしまうと、何を当たり前のことをという表情を向けられてしまった。が……こればかりは自分の方が正しい。敵の三名だって同じような顔をしている。
理不尽すぎる理不尽さの前には、敵も味方もないと分かった瞬間だった。
しかし、それは別に戦いとは直接関係があることでもない。
リジェネは再び鏡を出現させ、先手必勝とばかりに攻撃を開始しようとした。
それは、かなうことはなかったが。
……なぜなら。
「っと!ここで合ってるのハロ!?」
「アッテル!アッテル!」
「マチガイネーヨ!マチガイネーヨ!」
「落ちるですぅっ!?」
「このくらい自力で着地しやがれ!」
そんな騒々しさとともに、三名と二体が唐突に出現した裂け目から飛び出てきたから。