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この辺りでようやくトールギスがお披露目ー。
色々と苦労させると思いますが、これから末永くよろしくお願いします。
決闘用とは上手いことを言う。
製造中止にあたって深い眠りについていた(といっても途中、少しの間起きていたりもした)のだが、起きてみたらこんな人間たちの中。まさか起こされるとは思っていなかったので驚いた、最初は本当に。
けれど今思うのは、彼らが自分を操縦しようとしていることに対する敬意だった。
本当に良くやってくれる。未組み立ての自分を組み立てて完成させて、次はこうやって自分を操縦しようとしているのだ。一回でも操縦すれば、それがどれ程難しい物かがよくよく分かるであろうに、それにも関わらず。
面白い相手だと思った。
……思ったが、ちょっと今はそれどころではなかったりする。
「………………………………………」
「……」
「…あぁ、分かったからお前は無言の訴えを送ってくるな。それからお前は落ち込みすぎだ…少しは立ち直れ」
それは夜中のことだった。
テントで休養を取っていた自分の操縦者となるのであろう男を眺めていると、ふいに来客の気配を感じたのだ。しかも二つ。
どうしたのかと出てみれば、そこには顔の左半分を仮面で隠したのと、長い黒髪をポニーテールにしてるのとがいた。
そして、今に至る。
どうやら先の任務でヘマをやらかしてしまったらしい二人は、しかし片方は早々に立ち直り、片方は未だに失敗を引きずっているらしい。どのような失敗かはある程度はこちらにも知れ渡っているので、気持ちの方は分からなくもないが。
にしても厄介な物を連れてきてくれたと、ちらりとヘビーアームズに視線をやる。放っておくのは良心がとがめるので出来ないが、こちらも事情という物があるのに連れてくるとは。明朝には作戦開始、だというのに。
彼らは当然、そのことは知らないだろうが。
はぁ、と息を吐いてトールギスは口を開いた。
「……訊きたいのだが、デスサイズやサンドロックはどうした?こういう時はあちらに行くのが普通だろうに…」
「サンドロックは外出を自粛…デスサイズは……任務があるそうだ」
「任務?」
喋ろうとしないヘビーアームズの代わりにナタクが言い、それは何だとトールギスは首をかしげた、が、今はそれはどうでも良いことだろう。情報が入ってこないと言うことは、こちらにはあまり関係ない話なのだろうから。
それに、どうであってもこちらに被害が出るような作戦だろう。
彼らは一応、敵だ。
…『一応』を付けてしまうところ何とも言えないが、昔からある程度交流があった彼らを敵だと断定できないのも事実だった。仕方がないと思って、諦めているけども。
「成る程な……それで私の所に来たのか」
「……」
「あぁ、分かっている。見捨てたりしないからそんな目でこちらを見るな」
「……」
無言に堪えると、微妙にホッとしたような表情になるヘビーアームズ。一応でも敵だから、ちょっとだけ不安ではあったらしい。
大丈夫だと安心させる意も込めて軽く頭を叩き、トールギスはナタクへと向き直った。
「ナタク、失敗は誰に出もある物だぞ?それに、トレーズを殺せなかったのはお前のせいではないだろう。MSで戦ったわけでもあるまい?」
「…………………………だが」
「今回は完全にお前のパイロットのせいだ。お前が気にする必要など無いぞ?」
「……………………だが」
「だが、も何もない。それが事実だ」
「………………だが」
「いい加減に立ち直れ」
少しずつ沈黙の長さが短くなっていることを確認しながら、トールギスは畳み掛けるようにナタクに言い募った。実際にこれらは間違っていない言葉だろうし、今回ばかりは彼の努力ややる気があったところで結果が変わらなかっただろう。
それでも落ち込むところ、らしいといえばらしいのか。けれども、その『らしさ』は別のところで発揮して欲しい物だ。少なくとも今、ここに来るようなハメになるほど発揮して欲しくはない。
「あまり心配を掛けると、他のメンバーも気に病む」
「………そうか」
「現にヘビーアームズはお前を連れてここまで来たんだぞ?」
「…そうだな」
ようやく、ナタクの表情に光が差した。今までどんよりと厚い雲に覆われているような表情だったのに……凄い変化である。
ともかく立ち直ってくれたようで、その事に僅かな安堵。
「これからはこんなことを気になど…」
「分かった!このようなことが二度と無いよう、俺は今以上に強くなる!」
「……ちょっと待て」
何で今の流れでそう言う方向に話が。
苦労その一、一応敵なのに相談に乗ってたり。
…そんな感じのトールギス。