[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今日は全体的に時間がないのでコメ省略。
018:血
「武、お前、怪我か何かしてっかぁ?」
「え?いや、至って健康だけど」
突然の言葉に動揺しながらも、山本はどうにか平静を装った表情を浮かべる事が出来た。
実は、つい先日の任務でヘマをして怪我をした。動けば多少は痛む物の、無視できなくはない程度の怪我。付け加えると、一時の隙を突かれて付けられた傷であるという不名誉な物。直るまでは誰にも悟られないようにしようと決めていた傷である。
格好が悪いからとか言うつもりはない。喩え不名誉な物であろうと重傷ならば素直に申し出る。が、今回はそんな必要もない程度の傷なのである。深くもないが浅くもない、という実に微妙な傷なのだった。なら、心配を掛けないという意味でも……と、仲間たちにも話していない事実だ。というか、話そうか悩んでいる間にタイミングを外してた。
したがって、怪我に対する処置は自分で行った応急の物だけ。それでも十分に機能はしているようで、今のところ生活に支障はない。普通に生活できるし、誰にも心配を掛けたりしていないはずである。気付かれないから。
だが……どうして彼は怪我なんて言い出したのだろう。
それに繋がるような素振りは、見せた記憶がないのだが。
「どうしてそんなこと言い出したんだ?」
「ん゛?血の匂いがしたからなぁ」
「は…?匂い?そんなの分かんの?」
「分かんねぇのかぁ?」
「……普通は分かんないと思うぜ」
普通だろうと言わんばかりの反応に、山本はガクリと肩を落とした。これは何だ、鮫だから血には敏感なのだろうか。それとも暗殺者としての何かか……両方、というのが一番近い気がした。
けれども、それはまだ確証ではないように見える。誤魔化すように山本は言った。
「……とりあえず、怪我とかしてないのな。全く問題ナシ」
「ふぅん?」
どこか楽しげに笑って、スクアーロは山本を置いて歩き出した。
そうして、少し離れたところでひらり、と手を振って。
「嘘ならもう少し上手に付けぇ」
そんな言葉を残して。
背中が見えなくなってから、小さく一人で苦笑する。
やっぱり、彼には敵わない。
この二人はやっぱり仲良し、で。