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やっぱり全員仲良しって言うのが一番ですよね。
エレベーターって聞いて、エレベーターからでれなくなる話しか浮かばなかった…んだ。
14.エレベーター
動かない四角い箱の中、小さく息を吐く。
「これはどうした物かな……」
「さぁ……どうしたら良いんでしょうね」
「どうしようも無いだろう」
「どうしようもないけど何とかしないとマズいんじゃ」
「マズいとかじゃなくて、とにかく何とかするんだよ!」
その呟きに返ってきたのは、四者四様の返答だった。
どうしてこんな状況に、とヨハンは天井を仰いだ。どうしてこんな、自分とミハエルと、刹那とロックオンとアレルヤとが乗り合わせたエレベーターが、まるで謀ったかのようなタイミングで止まってしまうのか。
自分たちが出会ったのは本当に偶然で、しかもその偶然はこの四角い箱の中で起こったのだ。幸いと言うべきか、自分たち五人以外にエレベーターに乗り込む客もおらず、あまりに良くできた偶然にフリーズしていた思考もエレベーターの扉が閉まってから動き出した。だから、その時のリアクションは互いに他人に見られてはいないのである。
これは不幸中の幸いだと現状を見れば言えるのかもしれないが、あいにくとそう言えるほど不幸と幸いの比率が均等ではない。
ハッキリ言おう。
今回ばかりは不幸の比率が凄い事になっている。
右手の先のケーキの箱を見て、ため息を吐く。
「参ったな……三時までに帰らないとネーナに怒られるんだが」
「そちらさんも?俺らも三時までに帰らないとティエリアに文句言われんだ」
そう答えたロックオンの持っている紙袋の中には金属の箱。中身は恐らくはクッキーか何かだろう。彼らも三時の菓子を買いに来ていた、ということか。
納得しかけていや、と首を振る。違う、彼らの場合はそれだけではない。
「てかよ…チビガキ、お前、何持ってやがんだ?」
「チビガキじゃない、ガンダムだ……それからこれは緊急ミッションのために運んでいる品だ。割れ物注意の品ばかりだぞ」
「スメラギさんとかクリスティナとかに香水頼まれて…フェルトには電気機器頼まれて……他にも酒類とか色々頼まれたから、それを僕と分担で持ってるんだ」
「へぇ……大変だな、お前ら」
「いつもの事だから」
「それに俺たちはガンダムだから大丈夫だ」
そうやって答える刹那とアレルヤの腕の中の紙袋から除くのは、ガラス製の小瓶だとか、精密機械だとか、確かに割れ物注意の品ばかりだった。ただし、割れ物注意の品ばかり過ぎる気もする。これで壊して持って帰ったりしたら大変な事になるのだろう。
今更ながらに彼らに敬服である。
「んで……このエレベーターはいつ動くのかねぇ…」
「まだお店とか開いてるし……問題が起こったのは直ぐに分かると思うんだけど」
心配そうな様子でアレルヤが俯く。
「……三時までに帰れなかったらどうしよう」
「…あぁ、私たちもそれは一緒だな」
自分が持っているこのケーキは、以前からネーナが食べたがっていた品である。ようやく今日、暇が出来たから買って帰ろうという物であり……彼女は酷く楽しみにしているハズである。付け加えると三時までには帰る、などと言い残しており。
同じような状況であろう三人も、自分たちと似たような表情で、思い詰めた様子で動かないエレベーターの中、ただ立っていた。
重苦しい沈黙が漂う中、そういえば…と言ったのはアレルヤだった。
「ネーナ、どうしていないんですか?」
「あぁ……今日は人混みの中を歩く気分じゃないそうだ。そちらは…訊く必要もないか」
「かもしれないですけど、一応言っておきますね?」
苦笑を浮かべ、言葉を続けたのは彼ではなく刹那の方だった。
「ティエリアは人混みを疎んでいるからな……だからといって…全く、人に頼まず自分の物くらい自分で買え」
……どうやら、お使いの中にはティエリア関連の物もあったらしい。
大変だと思いながら、こちらも似たような物かとも思う。ミハエルが持っている袋の中にあるのは化粧品ばかりだ。
………………何か、やけに状況が似ている気がするのは、気のせいにするべきだろうか。
本気でどうしようかと検討していると、ふいにガコンと音を立てて小箱が揺れた。
「…ようやく復旧か?」
「助かったぁ……ギリギリ間に合いそう…」
「ティエリアの小言は長いからな、確かに助かった」
「返ったら直ぐに茶の用意しねーと」
「兄貴、俺らも帰って直ぐな!」
それが分かったとき、エレベーターの中を満たしたのは安堵の気配だった。
時間に遅れたら大変なことになるのは間違いなしです。