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ヴァーチェが自分をオレンジの人形たちの探索部隊?に任命したのは、他でもなく自分が気配を読み取る事に長けているからだろう。誰の気配がどこにあるかと、それを知ることが出来る自分の力があるが故に。
だが、今回ばかりはその期待に応えられそうもない。
建物の壁にもたれ、腕を組んでケルディムは口を開いた。
「だからな、あの二人の気配が見つからねーの」
「そう言うことがあり得るのか?」
「今現在であり得るんだし、無いってワケじゃないだろ」
「…そうか」
残念そうに呟くエクシアだったが、生憎、こちらの方が残念に思っているのである。自分の能力に絶対の自信を持つからこそ、こういう事態はあまり嬉しいと思える事柄ではなかった。勘が鈍っているワケでないのは、分かるからまだ良いが。
にしても、分からないというのは。
その場合、理由のパターンは一つしかない。
彼らが、自分の能力の圏外にいるということだ。
気配を消しているというパターンは、自分の場合は全く関係ない。どんなに薄くてもかぎ分けることは出来るし、元々気配を持たない存在は…そうであるからこその目立ち方もしているのだ。白の中に小さく黒があるとよく目立つのと一緒である。
だから、二人は自分の能力の手の及ばないどこかにいるのだ、というのは分かった。
分かったが、そのどこかがどこなのかが分からない以上はどうしようもなかい。
「どーっすっかなー……」
「とりあえず歩き回ってみるか?二人が都を離れるとも考えられない」
「同感。俺たち、アイツらが嫌がるようなことはまだしてないしな」
「まだ…?ということは、またやるつもりか?」
「その点に関してはノーコメントって事で」
まぁ、あの二人が進んで自分たちから離れようとするほどび嫌な事、はやろうと思ってもおそらく実行は出来ないだろうが。そのくらいは何となくでなく分かる。仲間と、自分のことだからだ。
「じゃあ、まずは刹那のいた宿ってトコに行くか?」
「あぁ……そうだな、それが無難か」
「んで、ついでに手紙かなんかを投げ入れときゃ良いだろ」
「…アバウトだな」
「アバウトでも生きていくのには支障無いって」
「……それもそうだが、な」
呆れたようなエクシアの様子に、気にするなよとばかりに背中をバンバンと叩くと、どこか迷惑総なめで彼はこちらを見た。迷惑……成る程、これは迷惑なのか。
そんなことを示されると、余計にやりたくなってしまうのは悲しい性というか。
……が、これは止めておく。ちょっかいは出さない方が良い。
何故なら帰ったら、ヴァーチェがいるのだ。言いつけられでもしたら。そう考えると考えるだけで酷く恐ろしい気分になる。
「で、宿ってどっち側?」
「多分あちらだと思うんだが…」
「ま、歩けば分かるよな」
エクシアの言葉を勝手に奪って笑ったケルディムは、そのままエクシアの手を引いて小走りの速度で歩き出した。
「……おい」
「気にすんなよ。俺としてもかなり暇なんだ」
「…仕方がない」
あきれ顔で、それでもエクシアは同意した。
それが少しばかり嬉しくて、少し笑みを作った。