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このお題で何を書けと…?と思ったのですが、どうにかネタが浮かんだのでいけました。
…危なかった…本当に浮かばなかったんだ…。
細かいことはスルーでお願いします。
06.かえるの合唱
「アレルヤ」
「なっ…何!?」
とある用事のためにアレルヤの部屋を刹那は訪れた。
唐突な訪問だったしドアもいきなり開けてしまったから驚くだけなら分かるのだが…… その時、アレルヤは酷く慌てた様子で、向かっていた机の上にがばっと覆い被さってこちらを見た。
何かを隠しているのは見え見えなのだが、こちらが気付いているとも気付かない様子で、かなり焦ったような笑みを浮かべてアレルヤは笑んでいた。その笑みもかなり引きつっていたのだがそれはそれとして。
まずは用件を果たしておこう。
「ど…どうしたの?」
「スメラギが呼んでいたんだが……それよりも」
「……どうかした…?」
「何を隠しているんだ?」
「べっ…別に何もっ…」
丸見えの嘘、である。
けれども焦りに焦っている彼にはその辺りまで思考が及ばないようだった。もしも及び付いていたのなら……流石に嘘を吐くのが苦手なアレルヤといえども、間違いなく別の言い訳を考えたに違いなかった。
とりあえず息を吐いて、アレルヤ、と呼びかける。
「悪いが…その嘘は見え見えだぞ」
「え……あ…う…」
「何を隠しているんだ?」
もう一度、念を押すように尋ねると、アレルヤはようやく先ほどまでの自分について思い至った様子で恥ずかしさに頬を赤くして、それからゆっくりと…机から体を離した。
そして、そこにあった…もとい、いた、のは。
「…カエル?」
「…何かね、迷い込んできたらしくって」
困ったように笑うアレルヤは、いつもの状態に戻ったらしい。表情には焦りも気恥ずかしさもなかった。
そんなアレルヤ曰く、このカエル『たち』を見つけたのはつい先ほど、廊下でだったのだという。そこに放っておいたら誰かが間違えて踏みつぶしかねないと考えた彼は、そのまま彼らを部屋まで連れてきたのだという。
「しばらくしたら休憩で少し止まるって話があったから…その時にでも逃がそうかなって思ったんだけど…」
「それは分かるが…どうして隠したんだ?」
「………思わず」
条件反射だったらしい。
ならば気持ちは分からなくもないかと思い、何となくカエルの中でも小さめのやつに指先だけでちょんと触れてみた。脱ぐのは面倒だったので手袋着用のままで。
「…そういえば、こいつらはどこから迷い込んだんだ?」
「分かんないんだけど…とりあえずいたし、誰かが飼ってるって話もないからね。なら迷い込んだとしか考えられないでしょう?」
「飼う余裕はないはずだしな」
成る程、確かにその通りだ。
「まだ地上で良かったな…そろそろ宇宙に上がろうかという話が出ていたらしい」
「それは危ないね…」
「早めに外に返してやるべきだろうな」
「だね」
こくりと頷いて、アレルヤが立ち上がり…あ、と一言呟いた。
何だ?と視線をやると、彼はどこかが固まったような様子で、それでも動きながらカエルの方を見た。
「…そういえばね、刹那」
「どうかしたか?」
「このカエルたちってね…何か大合唱が好きらしいんだ」
「……つまり?」
「早く部屋から出た方が良いって事!」
椅子から立ち上がったアレルヤはそのまま刹那を押して部屋を出て、二人が出ると同時に部屋のドアを閉めた。そして、それと入れ替わるように聞こえてくるカエルのかすかな鳴き声。……このある程度の防音効果はある壁を通しても聞こえるような声を出すとは。
間近で聞いたらと思うと…ぞっとする。
「…そういえば、なら何でお前は部屋にいたんだ?」
「落ち着いてたみたいだったから…ちょっと確認をね…元気かどうか見ようと思って」
「あぁ、そういうことか…」
あのプトレマイオスⅡに、カエルが紛れ込むような隙があるかは不明です…がね。