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最近どうしてかW組(つまり機体)に対する愛おしさが止まらないという。
ふと考えているのがANの設定でパイロットと喋ってたりするウイング達だったりするのはどういうわけか。
でも当然ながら、話の中で喋らせるわけにはまだ、いかないわけです。
この頃はみんなとても大変ですよね…。
資格なんて、そんな事を考えてくれなくても良い。
そんな物、誰でも持っている。
だから。
「…考えても意味はないか」
食料調達へ向かった五飛とサリィ…というらしい女性の乗っていた車の屋根の上に座り、ナタクは食料を運び込んでいる二人を見ていた。帰りは、食料の箱の上にでも座ればいいだろうか。実体化さえしなければ体重はないから、潰れることもないだろう。
そんなこと、本当は必要ないのだが。自分の本体の元に返りたいと思えば直ぐにでも移動できる。そういう便利さを持った自分という精神体は、しかし、出来ることなら五飛と少しでも一緒にいたいと思っていた。
揺らいでいる五飛に、どうしても伝えたいことがあった。
けれどもそれは出来ないこと。自分たちという『意思』は、彼らにとっては『無いもの』なのである。だから、自分たちの存在を晒してまで彼と話すことは出来ない。出来たとしてもそれは時期が来てからで、少なくとも今が時期だとは思えなかった。それは先のことなのだと理解している。
悔しく思うが、自分の感情は自分のパイロットには伝えられないのだ。
幸いに、サリィが今はいる。彼女ならば五飛の揺らぎをいくらか和らげることが出来るだろう。そういう雰囲気を持っているし、そういう事が出来る相手なのだろうというのが、見て何となく理解できた。
「…五飛」
最後の積み荷を積んだ、五飛を見ながら呟く。
伝えることが出来ないのだとしても、自己満足だとしても、言っておきたい事があった。
「俺たちに、使い手は選べん」
道具は道具だ。道具に意思があるという今の状況がおかしいのであって、道具は何の意思も持たずにただ使い手に使われるべき物だ。
そんな自分だが、それを使うのに『資格』という言葉を用いた五飛。……その考え方のどれ程までに喜ばしいことか、彼は理解しているのだろうか。
彼は『ナタク』という存在を認めている。だからこそ『資格』という言葉を使う。
認められているのだ。
「だが、使い手に関しての感想くらいは持つ」
そして、自分から見た彼の評価はただ。
ナタクはほんの少しだけ口の橋を持ち上げた。
「……俺の使い手がお前で良かったと、俺は思っているんだがな」
お前はどうなんだ?
その問いは、決して彼に届く物ではない。届けられない問いに意味があるとは思えないのだが、それでも抱く物は抱く。
五飛は、彼が使う機体が自分で良かったと思っているだろうか?
そう思って、あまりにバカらしくて自嘲の笑みを作った。
らしくない事ばかり、さっきから考えている気がした。それはコロニーを盾に取られるという事態を経験したからだろうか。五飛が揺れているからだろうか。仲間たちと久しく会えていないからだろうか。あるいは……この自分も、揺らいでいるのか。
だとしたら。そこまで思って思考を中断させた。
その考えが『らしくない』考えだというのに。やはり一人では調子が出ない…ということか。この程度で参るなど、まだまだ修行が足りないらしい。
ふと、視線の下で、店のガラスが割れるのが見えた。
軍の人間が変な文句を付けているのを見て眉をひそめる。店なのだから物を提供した後に金を請求するのは当然の流れであろうに、それに対しての反応が『文句を付ける』であるとは。このようなこと、大人のすることではない。
姿を現すだけで招待を晒さないのならば問題はないだろうし……出て行くべきかと思っている間に、サリィが動いた。
それから先の一連の流れ……つまり、サリィに抵抗された兵士が五飛に今度は返り撃たれ、街の人間たちに反抗されるという流れを結局実体化をすることもなく眺め終え、気付いたときには再び表情に自嘲の笑みが張り付いていた。
「五飛」
自分のパイロットへ呼びかけて、言葉を紡ぐ。
「俺たちよりも弱いはずの人間が、俺たちよりも勇敢とはどういうことだろうな」
彼女の反応は誰よりも早かった。誰よりも早くあの兵士たちへと、行動をもって異を示した。相手には武器もあるだろうと予測は出来ていただろうし、人数を見ても不利は分かるだろうに……その、何と勇敢なことか。
彼女の姿を見て、忘れてはならないなと自ら戒める。
自分たちは『力』を持っている分だけ、他の者たちよりも『強く』あらねばならないのだということ。それは簡単なようで酷く難しいのだと言うこと。
それらを忘れてはならない。
そして、忘れないというのも難しいことなのだ。
出来るだろうか?と考えてはならない。出来るのだ、出来なければならないのだと考えなければならない。それが、自分に課せられた義務の一つだろう。
「……やはり、色々と考えるのは俺の性には合わんな…」
考えるよりは体を動かす方が性に合う。
だが、これは考えなければならなかったことだったと思い、空を見上げた。
出来ることなら、これからはこんなことを考えずに済むようになればいい。
性に合わない行為は、中々に大変なのだ。
この辺りの話は本当に難しい話なのではないだろうか……。
だって、挫折からどうやってそれを乗り越えるか、という話だもの。