[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
番外編・9
翌日、二人は直ぐに去るのだと朝食の席で聞いた。
うっかりと、昼ぐらいまではいるんじゃなかろうかと思っていた、期待していた私としては少々悲しい話ではあるが、それが二人の予定故ならば仕方がない。
話したいことは……特に『王』と話したいことはたくさんあったが、それは次に機会に回すことにしようと決めて、私は素直に見送りをすることにした。折角知り合った『王』と『世界』である、見送りもしないのはどうかと思ったのだ。
朝食が終わって数分経って、玄関の前に立つ二人を見て何だか何とも言えない感じを味わって、私は軽く『王』に抱きついた。
「お別れが悲しいと思えるのは貴方たちが初めてな気がします……」
「イオリアの事は?」
「お父様とは離れないので無いのです、こういう事」
「そっか……成る程ね」
お父様と別れるときも、こんなに悲しい気持ちになるのだろうか。『王』の言葉を受けてふっと考えてみたのだが、どうしても上手く想像できない。ずっと私はお父様は一緒にいたから、一緒にいようとしたからなのだろうか。
まぁ、考えたところで栓の無い話だが。
仮定なんて、殆どがそんなものだろう。
私は『王』から体を離して、次は、と『世界』の方を見た。
彼はというと、何だか不機嫌そうである。
理由が全く分からなかった私は首を傾げ、彼を見やった。
「どうかしたのですか?」
「……何でもねぇよ」
「気になります。何かあるでしょう?」
「ねぇったらねぇ」
「嘘です」
「嘘じゃねぇ!」
だから、そうやってムキになるから怪しいし、嘘だと直ぐに分かるのだが。そこを『世界』の方は理解しているのだろうか。
ちょっと疑問に思っていると、クスクスと笑い声が耳に届いて顔を上げた。
「二人とも、仲が良いね」
「本当に。何時の間に仲良くなったのかね?」
「……オイ、これのどこが仲良いってんだ……?」
ふらりと、押せば倒れそうなくらい揺れている『世界』に、え?と『王』はキョトンとした表情を浮かべた。お父様はというと、穏やかに笑っているばかり。多分、お父様には二人の気持ちが両方とも、手に取るように分かるのだろう。
「だってほら、ケンカするほど仲が良いって言うじゃないか」
「お前、んな迷信信じてんのか?」
「迷信って……本当だよ、きっと」
「じゃあ根拠何だ?」
「……何となく?」
「そんなん根拠じゃねぇだろ!」
…などという二人の会話を聞いていたら、むしろこの二人の方がとても仲が良いんじゃないだろうかと私には思えてきた。実際仲良いだろうし、仲良しというのは私と『世界』よりは、『王』と『世界』の組み合わせに渡すべき称号だろう。
というか、二人は何時になったら出発するのか。
呆れながら二人を眺めていると、ふと、いつの間にか足が動き出しているのに気がついた。もう出発していたらしい。
何とも、と思いながら少しずつ遠くなっていく背を見つめ、見えなくなってから私はお父様と一緒に家に入った。
再会を望みながら。