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ちょっと今、テスト週間だから…少し更新が停滞するかもです。
今までは軽く無視してたけどね…週間。でも、そろそろ受験生なのでね…。
ま、出来る限りは頑張りますが。
というのは置いておいて、今回は現パロとかじゃなくて普通のです。
19.伸びたシャツ
それを見せると、彼はただ一言「勿体ない」と言った。
「…勿体ない?」
「勿体ないよ。捨てるなんて、そんなの」
まだ使えるじゃないか、と伸びたシャツを手に取って呟くアレルヤをマジマジと、ティエリアは失礼になるのだろうかこれは……などと思いながらも眺めていた。じっと見ていたところで、彼が気にするとも思えないからまぁ……良いとしようか。
それよりも。
「勿体ない…か?もう使えないんだぞ?」
「使えるってば」
「…何故だ?伸びきっていて着れないんだが?」
首を傾げながら、ティエリアは視線を手に持っていた物に向けた。
それは、一枚の伸びたシャツ。別にこれは自分の物ではないのだが、どうしてだかティエリアが捨てておくように、という話になっていた妙な代物である。ちなみにスメラギから渡されたそれの、本来の持ち主が誰かさえも知らない状況だ。
果たして捨てて良い物だろうか……?などと思ったのは事実なのだが、それでも『捨てておけ』と言われた代物である、素直に捨てに行こうと思った。その時に、どうしてスメラギが自分で捨てに行かなかったのだろうと考えたりもしたが、それはそれというものだろう。現状には関係ない。
まぁ、そんな時だ。
ばったりと、アレルヤに出くわしたのである。
その出くわされたアレルヤは、ティエリアの手から伸びたシャツを取り上げて、なにやら難しい表情でシャツを眺めていた。
「…アレルヤ・ハプティズム?」
「…うん、やっぱり捨てるのは早計だよ、ティエリア。使える」
「君が着る、などとまさか言い出しは…」
「しないよ。けど、着なくても使うことくらいは出来るもの」
「……?シャツだぞ?着る以外に何の用途がある?」
「シャツ以前に、これって布でしょう?」
少し呆れたように、アレルヤが言う。
「だったら、布として活用すればいいと思うのは僕だけ?」
「…というと?」
「例えばそうだね…ほら、ここ」
そう言って指したのは、背中の広い部分。
「ここは普通に切り取って、普通に縫い物に使えるでしょう?小物だって簡単に作れるよ、このくらいの面積あったら」
「誰かが使っていた物だぞ?それを使うと?」
「綺麗だから良いじゃないか」
あっさりと返されて、ティエリアは思わずぽかんとアレルヤを見返した。
……前々から思っていたのだが、アレルヤは妙なところで無頓着だと思う。いや、シャツに関してはこれが当然なのかもしれない。シャツはシャツでも下着ではなくてTシャツの方のシャツなのだし。
というか…この場合は無頓着とは違うか。
何というか、物を捨てるのを本当に勿体ないと思っているようだ。
節約家、という言葉が頭を一巡りする。
「…では袖の部分は?」
「どうやって使ったらいいかな…でも使い道はあるよ。今は考えつかないだけで、ね」
「そう言う物か?」
「うん。そう簡単に様とは浮かばないから」
ハレルヤだったら簡単にアイディアでも出すかもしれないけど。
笑ってそう言って、シャツを手にアレルヤは穏やかに笑んだ。
「そう言うわけだから…このシャツ、もらっても良い?」
「……」
それは果たして良いのかどうだろうかと、ティエリアはしばし熟考した。一応スメラギには『捨てろ』と言われていた物体である、捨てておいた方が無難ではあるだろう。だが、その捨てられる物をアレルヤはまだ活用できるという。彼の言うことが正しいのであれば、それは資源を無駄に廃棄する行為を多少とはいえ撲滅する事へと繋がる。
ならば、ティエリアが取る行動は一つだ。
「あぁ、分かった。好きにしてくれ」
「…!ありがとう、ティエリア!」
「気にするな。代わりと言っては何だが…」
ちらりと、シャツを見やって一言。
「出来上がった物は、見せて欲しい」
「あぁ、そのくらい構わないよ。良かったら作る過程でも見せてあげようか?」
「…出来れば頼む」
アレルヤは物を捨てられない子だったらいい…。