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それは進級してからの話です。
私の通っている高校は、何故か、一、二年は靴箱の扉が横開き。なのに三年はたて開きなのです。
その事実から、こんなん出来ました、っていう話。
朝、それを目にした瞬間にティエリアは通学カバンを漁っていた。
「確かどこかに目薬があったハズなんだが…」
「ティエリア、生憎とこれは幻覚じゃないよ。触れるし」
リジェネの容赦のない言葉に漁る手を止め、目の前の光景を渋々目にする。
そこは、昇降口だった。だから靴箱もある。傘立てもある。ゴミ箱がおいてあるのも便利だから良い。靴箱に張ってあるポスターが今は見あたらないのも、とりあえずは良しとしようか。
問題は、靴箱の扉の付き方だった。
どうしてだから、上に開く形式の扉だったのである。
「…何故だ?何故なんだ?いつもは横開きだろう?」
「確かにね。何か、昔の学校に来てしまった気分だよ」
「これで靴箱が木製だったら全く持ってその通りなんだがな…」
「ま、使えないことはないだろうから行ってみようか」
「ここで立ち止まっても意味はないしな…」
頷いて、ティエリアは靴箱の方へと足を進めた。
そうして辿り着いた靴箱真正面で、一つ、気付くことがあった。ちゃんと今まで通りの靴箱の場所にネームプレートが付いているのだ。開けてみれば、少し不安だった上履きの存在も確認することが出来た。
どうやら、変わったのは外見だけ。中身や使う場所は変わらないらしい。よくよく見たら、靴を入れる場所の数は元とも変わっていない。
不思議だと靴箱を撫でてみて、もう一つ気付くことがあった。
「……新品、か?」
「だねぇ。あと、やっぱり幻覚じゃないみたいだね」
「…………またヴェーダの仕業なのか?」
「可能性は高いんじゃない?」
「そうか…」
「何ですかこれは!?」
ティエリアがため息を吐くのと同じタイミングで声が上がる。
何だ?と視線を向けると、そこにはリジェネのことを彼の留学先からここまで追ってきた一団がいた。最近はデヴァインとかいうのが加わって、さらに騒がしく……かと思ったら相手が静かだったからそう変わらなかった集団である。
もっとも、ヒリングとリヴァイヴが揃うと色々と騒がしいときもあるのだが。主に、色々としでかすヒリングを叱りつけるリヴァイヴの声とかで。
そんなリヴァイヴは、呆然と靴箱を見た後、慌ててカバンの中を漁った。
どこかで見たような対応に何となく顔を背けると、楽しそうにリジェネが笑っているのがハッキリと見えた。丁度、顔を背けた方に彼の顔があったのである。何という不運なのだろうかこれは。思いながら、ティエリアは凄い勢いで逆の方に顔を向けた。クスクス笑いが聞こえてきたが、当然のように黙殺である。
そして、そのクスクス笑いをしていた某副会長はどうやら肩をすくめたようだ。
「リヴァイヴ、悪いけれどこれは幻でも何でもない、現実さ」
「…そんなバカな。だって昨日は月曜日ですよ?今日は火曜日ですよ?」
「だねぇ」
「なのに靴箱を変えるとか出来るんですか!?そんな暇有るんですか?手配とか色々あるでしょう!?」
リヴァイヴの言葉から、彼も誰かが実行したのだと言うことは分かっているらしいと言うのは、理解できた。ただし固有名詞が出ていないところから、学園内の偉い誰かとしか分かっていないようだとも推測できる。いい加減に、こんなマネをするのはヴェーダだけだと気付けばいいのに。
それはリジェネも思ったらしい。肩をすくめたような気配を感じた。
「リヴァイヴ、もしかしなくとも君は彼女がやった、という可能性に至っていないのかな」
「…彼女?誰のことですか?」
「ヒリングは分からない?」
「分かるわけ無いじゃない。私たちがこっちに来たのは最近なのよ?」
「じゃあ、ブリングとデヴァインもだね…まぁ、それなら仕方ないか」
まだまだ、ヴェーダに関しての諸々に気付くには彼女との付き合いが短すぎる、か。
ティエリアも納得して、いい加減に顔を逸らすのも止めて、リヴァイヴたちの方を見た。
「この事態、ヴェーダが手回しをした可能性が高い」
「…何の目的で?」
「恐らく、目的に関して考えても結論は出ないだろうな」
ただ単に、やってみたかったから、それだけだろう。
彼女がやったと仮定すると、どうしても何もかもが当てはまっていくから不思議だ。ヴェーダならば暇つぶしと称して靴箱を変え、中身を入れ替えたりネームプレートを付けたりくらいは手軽にする。それも、業者の手は多少は借りても、殆ど自分の手で。
自分の楽しみのためならば、いくらでも努力するのがヴェーダである。
ティエリアは腕を組み、息を吐いた。
もう、自分の中では犯人は彼女に確定している。
付け加えると、それは絶対に間違いではないのだ。
「君たちも覚えておくと良い。ヴェーダという学園所有者はだ、自分の楽しみのためならば何でも出来るのだ、ということを」
「…どんな学園所有者ですか、それって」
「職権乱用が常套手段の学園所有者だ」
何か、最近イノベ組の出現率が多い。
うん、まぁ結構大好きだしね!