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紫のお題も終了しました…っ…長かった……。
橙のお題に引き続いて、通常使用のお題の中で二番目にゴールイン。
頑張りました…ね。
20.涙の色
ぽっかりと胸に穴が開いた気分というのは、きっとこういうことを言うんだろう。ただ暗い外を見ながら思う。
みんなの、兄貴分だった人がいなくなった。
それはとても辛いことで、悲しいことで……そう、これは悲しいことなのだろう。あまり、そういうのは分からない気もしたから、あまりハッキリとは断定できないのだけれど、恐らくそれは『悲しいこと』であるに違いない。
自分は『普通』は知らないけど、そのくらいの感情はあるのだと分かって、寂しさの中に嬉しさが灯った。けれど、直ぐに小さな明かりは消え失せる。
あの人は死んだ。
その事実を思い出すだけで、体の芯から冷えて、冷えて、凍えそうな気持ちにもなる。
ぶるりと身を震わせ……ふっと思う。
自分よりも、彼の方がとても辛い思いをしているのではないだろうか。最近、とてもあの人に心を開いていた彼だから。自分何かよりも、こんな時でさえ一瞬でも『喜び』を抱いて島内分とは違って、彼はとてもとても深い場所にいるのだろう。
そう考えると、無性に彼の顔を見たくなった。
慰めるなんて出来ないとは思う。けど、傍に人がいるのといないのでは、とても違う。
力になれるとも思えないけれど。
「…いや、でもその前にティエリアってどこにいるんだろう…」
「呼んだか?」
「わ!?」
突然に聞こえた声に飛び上がるほど驚いて、慌てて振り返ると呆れかえっているティエリアの姿があった。腕を組んで壁にもたれかかる様は、まるで先ほどからずっといたようにも見えるのだが……いやいやまさか。流石にそれなら気付くと思う……というか思いたいのだけどどうだろう。
驚きすぎてドクドクと鳴っている心臓をどうにか納めつつ、アレルヤは自分にとっては突然の登場人物に視線をやった。
「…呼んだって言うか、その、ね?」
「その…とは何だ?」
「…えっと…」
何と切り出せばいいのだろうか。
いつの間にやら明後日の方に向いていた視線を戻すこともせず、アレルヤはただただ考えた。冷や汗が流れっぱなしなのはご愛敬と言うことにして欲しい。
「その……」
しかし、いざ何かを言おうとすると言葉が出ない。
あーだうーだと唸っていると、ふっとティエリアが笑ったような気配がした。
え?と視線を向けると、そこには穏やかに…それでもどこか影を帯びている笑みを浮かべたティエリアの表情があった。
先ほどとは別の意味で何も言えなくなると、アレルヤが何を思っているのか理解したらしい、彼は気にするなと言わんばかりに手を振った。
「僕はさっき泣いた。それで感情の全てを整理できたとは思えないが……ある程度の区切りは付けたつもりだ。これから、また、戦える」
「…ティエリア」
「それよりも、君はどうなんだ?」
「え……?」
話をそのように振られるとは思っていなかったため、アレルヤは一瞬、虚を突かれた表情を作り出した。
変な話だ。だって、一番傷ついているのはティエリアのハズで、彼こそが気を遣われるべき相手だというのに。なのに彼の言いようはまるで……アレルヤに気を遣っているようではないか。それは相手が違う。
予想外の展開に戸惑っていると、嘆息が聞こえた。
「…やはりな。そんな物だと思った」
「やはりって……」
「アレルヤ、悲しいと自覚はあるか?」
「……ある、けど」
「ならば泣いたか?」
「………いや、泣いてはないけど…」
「なら、泣いた方が良い。ちゃんと、な」
だからそんな風に泣くなと、困ったように呟かれて、アレルヤは彼以上に困った表情を浮かべた。そんなことを言われても分からない。泣いていないのに、泣くなと言われてもどうしようもないではないか。
そんな自分の表情に気付いたのか、ティエリアは呆れたように眉を動かした。
「君は間違いなく泣いている。ただ、それが見えないだけだ」
「…分からないよ、ティエリア」
「そうか。なら、分からないなりに泣けば良い」
「………分からない、よ」
分からない、分からないと連呼しながらも、一番分からなかったのは頬を伝う何かについてだった。
何か、何か…いや、何も言うまい。
とりあえず、慰めるティエリアが格好よくなってたら成功だというだけです。