[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
そろそろ黄色のお題も終わる頃ですね…。
今回は、ほのぼの東京組+αです。
19.ビスケット
東京の、本日の天気は快晴だ。
だから別に、ピクニック気分で公園にレジャーシートを敷いて、お菓子を持ち寄ってワイワイと喋っているのは構わないと思う。変な光景ではないだろう。
だが。
そこにどうして自分がいるのだろうと、刹那は小さく息を吐いた。
「…納得できない」
「あは……は……ごめんね刹那」
「全くだ」
引きつり気味の笑みを浮かべる沙慈に、刹那は一瞥を与え、それからそのまま視線を現状の原因二名へと向ける。
片方は無駄に長ったらしい金髪を持った少女で。
片方は自分たちの兄貴分を自称している男である。
…運に見放されたのだろう。今更ながらに、楽しそうに話している二人を眺めて思う。偶然にロックオンが来ているときに沙慈がピクニックもどきに誘いに来て、ルイスがその場で何でだか知らないがロックオンと意気投合してしまったのだから。
沙慈が来るのは、良い。まだ良いとしよう。隣人だし、誘いに来たのも以前からアプローチがあったことから考えても、何ら不思議ではない。それにルイスが付いてくるのも、彼女の普段の様子を眺めておけば、こちらも不思議ではない。それに、ロックオンが自分の住む部屋に来ることだってたまにあるから、やっぱり不思議ではない。
つまりは、あれだ。
変な反応が起こってしまっただけなのだ。
これが、アレルヤだったら状況は同じだったかもしれないし、あるいは違っていたかもしれない。ティエリアだったら間違いなく違っていただろう。
全ては不幸な『事故』なのである。
そうとしか考えられない。
「こんな調子で俺はガンダムになれるのか…?」
「え?刹那、何か言った?」
「……いや、何でもない」
「そう?」
その言葉は小声で言ったはずなのにしっかりと拾われかけていて、刹那はほんの少しだけヒヤリとした。ガンダム、という名称は世界中に広まっているのだ。聞きとがめられていたら即アウトである。
それでも思わず口にしてしまった自分の不用心さを責めながら、ロックオンがどこからともなく持ってきたビスケットに手を伸ばす。ほのぼのピクニックもどきを楽しむ気はあまりないのだが、菓子くらいは食べておかなければ損だろう。巻き込まれてしまったのだから、それを埋め合わせる分くらいは食べさせていただく。
だいたい、今日は一日中、取っていたガンダム各機の写真のデータを整理するつもりだったのだ。それをロックオンが来たせいで邪魔されて、ピクニックもどきのせいで邪魔されて。
もしかしたら、今日の星座占いは最下位かもしれない。
はぁ、と軽くなく息を吐いていると、そんな様子を見とがめたのか、ロックオンが明るい表情で肩にポンと手を置いてきた。
「刹那、お前も黙ってないで何か喋れよ」
「黙れロリコン」
「…刹那ー、俺そろそろ本気で傷つくぜ……?」
「勝手に傷ついていろ」
「……」
本気でしょげかえっているロックオンをいい気味だと眺めつつ、このやり取りを唖然とした表情で眺めている二人に、どうしたんだと視線を投げかけてから新しいビスケットを手に取った。
「刹那…ちょっと今のは言い過ぎじゃないのかな…」
「このくらい普通だが」
「これで普通!?ちょっとアンタ、この人の事も考えてあげなさいよ!」
「大丈夫だ、コイツには頼りになる相棒がいる」
いざとなったらハロがどうにか慰めてもくれるだろう、きっと。
「だから問題ない」
「ないって…言い切っちゃったよこの人」
「事実だからな」
さらに言い切って、刹那は再びビスケットを食べる。
それを不思議に思ったのか、もうロックオンのことはどうでも良くなったらしいルイスが首を傾げた。
「ねぇ、さっきからどうしてビスケットばっかり?」
「ロリコンが買ってきた物だからな」
「理由ってそれだけ?」
「あぁ」
何というか、二人の持ってきた物を取るのはどうだろうと思ったのである。
こういうほのぼのがあったっていいじゃないか。