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「……もう歩くの止めない?」
「お前が弱音たぁ…珍しい話じゃねぇか」
「だってもうこれ無理だよ色々と……」
アレルヤはそう言ったが…疲れていないと言えば嘘になるのだが、別に立ち止まって休まなければならないほど疲れているわけではなかった。ただ、これ以上歩き続けていても何の収穫もないのではないだろうかと、思ったわけである。そしてそれは多分、あまり間違った考えでもないだろう。
さっきからずっとずっと歩いている。歩き続けている。
けれど一向として、白以外の色彩を見つけることが出来ないのだ。
果てなんて、出口なんて存在していないのだろうと、推測が確信に変わったのはつい先ほどだ。ここには出口なんて無い。入り口もないのだろう。それでもここに来てしまったのは、事故、以外の何者でもないに違いなかった。
ならば、今自分たちが何をどうしたって出来ない物は出来ないのだし……ここは素直に足を止めて、体を休めるべきだと思ったのである。
それに、とアレルヤは後ろに視線をやった。
「僕らは大丈夫でもね?」
「ん?」
「僕ら以外は大丈夫じゃなかったりするんだよ?」
「……あぁ、そういや」
ハレルヤもアレルヤと同じ方向に視線を向けて、呆れたように嘆息した。
その嘆息が誰に向けられているかは、アレルヤには分かったが……あぁ、本人にも分かったようだ。少しだけ跳ねていた髪の部分が少ししおれてる感じがする。
「キュリオス、あまり落ち込まなくても良いんだよ?」
「でも……一応、僕って人形なのにと…」
「アリオス背負ってるんだから仕方ないよ」
酷く疲れた様子の上に、とても悲しげな表情が被さったのを認めて、アレルヤは無理もないことなのに、とキュリオスを慰める方向で話を進めることにした。
たとえ人形であったとしても、疲れる物は疲れるだろう。特に同じくらいの体格のアリオスを背負っていれば尚更のこと。疲れてしまっていることよりは、その状態でもちゃんと今まで付いて来れた、という点を考えるべきだと思うのだけれど。
それに後一人。ミレイナは完全に参っているようだった。これほどまでの長距離を殆ど休みもなく歩いてしまった後だから、彼女のその様子には酷く納得できる物があった。それはハレルヤも同じだったらしく、こちらには何も言わない。むしろ今まで付いてきていることに感嘆すら覚えている様子である。
ハロとHAROに関しては……何も言うまい。
いつも通り、元気すぎるほど元気である。
「……この二人は規格外だしね…」
「ん?ハロの事か?」
「HAROの事もだよ。あの二人の燃料は尽きないものね」
「それはキュリオスのヤツも一緒だろ。あっちは人型に近づけすぎた感があるけどよ」
「だけれど、それは別に良いんじゃないかな」
「まー、そりゃそうだけどな」
ハロとHAROは限りなく機械に近い。というか機械だけれど。
対して人形たちは殆ど人型に近いのである。だから、燃料が切れなくても疲れる。
正確な差違は分からないけれど、両者はこんな風に違う。
壊れるまで動くのが機械なら、疲れるだけで止まってしまうのは人型なのだ。
だから両者では対応の仕方も違うのである。
アレルヤは隣を歩いていた片割れを見上げて、口を開いた。
「ハレルヤ、アリオスを背負ってあげなよ」
「は!?何で俺が?」
「そのくらいやってくれても良いと思うけれど?」