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擬人化お題が久しいと思えてくるのは気のせいなのかどうなのか。何でもかんでも久しいと思えてるから何とも言えないのですが。
今回はGPの長男次男です。
32:インク
毎度毎度思うのだが、どうしてコイツの行動はここまで脈絡がないのだろう。
髪の先からポタポタと垂れる黒い滴に握った右拳を振るわせつつ、GP-02は左手で掴んでいたインクの瓶を力一杯握っていた。幸いにして瓶は丈夫だから割れることはないものの、一歩間違えると割れてしまいそうなほど力一杯、だ。
やはり、コイツのこういう行動に慣れることは一生無い。
左手に持っていた瓶を兄に投げつければ、それは難なくGP-01に受け止められてしまう。……本当に苛つく話だ。
そして、毎秒毎秒で自分の苛立ちを生産し続けている兄はと言えば、全て分かっているくせにどうしたんだよー、なんて言ってくる。
「全部テメェのせいだテメェの!」
「えー?そんなの言われてもお兄ちゃん分かんなーい」
「分かんないじゃねぇよ!黒のインクを人にぶちまけやがって!」
「あー、それは事故だよ事故。そういう悲しい事故っていつどこでも起こるだろ?」
「その事故を故意に起こしたヤツが言える台詞かッ!」
「違うって」
少し不満そうに、GP-01が言う。
「故意にはしてないって。ちゃんと事故だから」
「事故にちゃんとも何もねぇだろ…」
「オレはただ、その事故を自分の良い方に良い方に持って行こうって言う努力をしているだけなんだってば」
「十分に故意じゃねぇか!」
たとえ始まりが事故だろうと、そこまで行くと故意だ。というか、始まりまで事故かどうかが疑わしい。それが引き起こるようにと裏側で色々やっていそうな気がするのは、果たして自分だけなのだろうか……いや、それはない気がする。
とりあえず言えることは。
自分の兄が、何かをやろうと思ったらそれは必ずと言っていい確率で実行される、のである。自分にとってはかなり不幸なことに。
誰かGP-01の性格矯正をしてくれないものか…。
少なくとも自分には無理そうだと思っている間にでも歩み寄ったのか、ふと気付くとGP-01が目の前に立っていた。
「いやー……でも見事に掛かってるな」
「かけたやつが何言ってやがんだ」
「だから故意じゃなくて事故だったんだから仕方ないって…うーん、でも」
と、黒く汚れたGP-02の髪に触れながら、GP-01は続ける。
「これ、タオルで拭くだけじゃダメだよな。風呂とか入る?」
「……入る」
「じゃ、一緒に入ろうか」
「………………………は?」
今、コイツはなんと言っただろうか。
風呂に一緒に入る、とか言わなかっただろうか…?
あまりに想定外の言葉に呆然としていると、ニコリと笑顔を浮かべた状態のGP-01にさぁさぁと腕を引かれ、気付いたときには全裸で腰に布を撒いた状態で風呂場の中に収まっていた。
その後ろで、楽しげに洗面器なんて持ってる兄。
「髪洗ってやるから大人しくしとけよ」
「…何でテメェがんなこと……」
「やってみたかったから。ほらさ、こんなの今みたいな擬人化状態?ってやつでしか出来ないだろ。だからさ」
たまには良いと思うけど?と後ろから聞こえる声は兄、という感じがして、それだけで何となく現状のことは許してしまいそうになる。
……が。
残念ながら、そんな甘いこと言っていてはGP-01の弟はつとまらない。
「この状態にするためにインクをぶちまけたと考えて良いんだな?」
「…えー?お兄ちゃん何も聞こえないんだけど何か言った?」
「図星かテメェ」
予想していたとはいえ、こうもハッキリと示されると何とも言えない。
ハァ、と息を吐いて、しかしGP-02は何もしなかった。ただ、されるがままに髪を洗われているだけである。
それが不思議なのか、GP-01が再び声を発した。
「抵抗とか無し?」
「…風呂から上がったら再開だ」
ボソリと零すと、一瞬だけ兄の手が止まって、それでも直ぐに再開されて。
「なら、思いっきり長風呂しないとな」
「付き合わねぇからな」
「そのくらい良いだろー?」
まぁ、こういう一時も良いのかもしれないと、一瞬だけだが思った。
インク零したらほら、擬人化だと服とか髪とかあるから絶対に風呂系には行かないとって。擬人化前だったらあれですよね、普通に拭くだけで取れそうだし。