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「あ…あのっ…その…ありがとう」
「気にすんな。アレルヤが言ったからだ」
決してボランティア精神に目覚めたとか殊勝な心がけをしようだとか、そんなワケではないのである。
だから感謝を述べられる事もない。
結局あの後もずっと歩き続け、しかしアレルヤとの会話以前と以降で違ったのは他でもなくアリオスの居場所である。壊され動けないこの人形を、キュリオスではなくハレルヤが運ぶことになったのだ。
「ミレイナは…大丈夫?」
「はいです……まだ何とか大丈夫です……大丈夫なのです…」
「……ハレルヤ、あと五分くらいしたら休憩ね」
「そうすっか」
大丈夫大丈夫と繰り返すヒトが一番危ないのだと分かっているので、ハレルヤは特に反論するでもなく頷いた。途中で倒れられても困るし、その場合は間違いなくアリオスではなくミレイナを背負って歩くことになってしまう。恐らくミレイナも軽い方だとは思うが、普通の人間と人形とを比べれば断然に人形が軽いのは当然の摂理だろう。
そういうわけだから、ミレイナに倒れられるのはハレルヤには非常に面倒な事態へ繋がる、実に遠慮したい事態なのである。
「けど……うん、やっぱり色々と考えるべきかも」
「出口入り口出る方法に入る方法ってヤツか?」
「うん」
「じゃあ、次に止まるときにでも話し合うか」
闇雲に歩くのも飽きたし、実際それも実を結ぶ行動とも思えない。アレルヤの言う通りなのだ。色々と…つまりこの場所から出る方法という物を、考える事が必要であるというのは。
出口が見つかればいい。出方が見つかってもいい。けれどもそれらが見つからないのならばせめて、入り口を見つけたい。
入り口からは出られるとは限らないが、場合によっては出る方法を探るための最大のヒントになり得る。入る原理を利用して出る事も、出来なくはないかもしれないのだ。
入る方法の方も、それと同じ理由から。
まぁとにかくだ。出口が見つかるに越したことはないし、出方を発見することが出来ればいい。ただ、それがうまくいかないのが実情なだけだ。
要するに事態は絶望的、ということだが。
「後でもう一度、裂け目とか作ってみるか?」
「ダメもと?うん、やってみる価値はあると思う。あと瞬間移動とか、移動系の力は全部使ってみようかな、と思うんだけど」
「やることねぇしな」
それくらいしか今は、自分たちにも出来そうにない。
やれやれと肩をすくめつつ、アリオスを背負い直す。
アリオス……そう、そういえば彼は自分に似せて作られた人形、だったか。
全く、何をどうしてそんなことをしてくれたのだろうと、今は亡いイオリアに文句を言ってやりたい気持ちになった。特に駄目な理由もないが、別に良いという理由もない。
昔、イオリアの『友人であった』時に、あの時はアレルヤではなかった自分の片割れは、かの人形技師に自分たち双子にそっくりな性格の人形を、と求めた。その理由は未だに分からないのだが、ともかく、イオリアはそれを受け入れたのである。
その結果がアリオス。
…だからだろうか。自分が、壊されてしまった彼を連れているのは。
キュリオスがいるから、か。
「……バカらし」
「…?ハレルヤ?」
「何でもねぇよ」