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クリスティナの過去に挑戦です。
…大分、捏造が入っています…仕方ないよね。
14.君の定位置
昔から、機器を弄るのが好きだった。
それが自然とプログラミング、ひいてはハッキングにまで手が伸びるのは、自分の好奇心や性格を考えると実に当たり前のことだったのかもしれない。
技術を覚えてしまってからと言うもの、本当に色々なことをした。自分の持っている端末の改良は何よりも優先されることで、ハッキングもどんどんと規模を増して、最終的には合法機関だけではなく非合法の機関についても知るようになった。ウィルスも作れたのだとは思うけれど、それは何となくやらなかった。趣味に合わなかったのだから仕方がないと思う。
そんなことを続けている内に、次第に、継母とも折り合いが悪くなっていった。元から性格も馬も全然あっていなかった状況に、これらの状況が拍車をかけていったのだとも言えた。
たとえそうであっても、止める気はなかったけれど。
これは、趣味という域を超えているから。
…そして、今日もまた。
「…はぁ」
先ほど、それに関して口論してきたばかりである。
あの人は、いつも「そんなことをして」と言う。その評価は全く持って正しいのだろうと、自分でも思う。ハッキングなんて普通の子供がすることではないだろうから。
それでも、これが自分の趣味以上の物なのだ。
それをいい加減に認めて欲しい。
なのに、認めてくれない。
「少しくらいは妥協してくれたって良いじゃない……なのに、どうして」
不満を零しながら端末の電源を入れ、機動を待つ。
机の上の、右側半分を堂々と占領しているそれは、そこにあることが自分にとって慣れきった物。
これを、継母は没収するなんて言い出したのだ。
椅子に座りながら、何てことを身震いする。自分の価値観だと、それは本当に有り得ないことだった。
確かに、これがなくてても生きてはいける。やることが全然無くなるわけでもない。おしゃれだって普通に好きだし、甘い物だってもっと食べたい。これらは、自分の技能に関係なく行える事柄だ。
けれど、それとはまた別に、それをするときには格別の思いがある。
それを、分かってくれないなんて。
何て腹立たしいことだろう。
むぅ、と頬を膨らませながら、定位置に今は収まっている端末のキーボードを叩く。今日はハッキングも何もせずに、普通の情報探りをするつもりだ。あまり秘密ばかり知っても息が苦しくなるだけだから、たまにはこうやって息抜きをしないとどうしようもない。
久しぶりに、お気に入りの洋服ブランドの新作でも調べてみようかと思っていると、ふいに掛かってくる電話。
誰だろうと出てみると、それは親しい友人の一人だった。
「あ、元気?最近会ってないけど」
『元気よ元気。それより、よかったら一緒に買い物行かない?』
「買い物?行く行く!で、どこにいくの?」
『えっとねぇ…』
そうして告げられた場所は、丁度自分が調べようとしていた場所。
ならば、取るべき行動は決まっている。
着けたばかりの端末の電源を切り、じゃあ後で、と友達との電話を切って財布の入ったバッグ、上着を持って部屋を出た。
それから少しだけ考えて、部屋の鍵を閉めて行くことにする。この鍵は、以前はなかったけれど自分でどうにか取り付けた代物だ。もちろん用途としては、継母を部屋に入れないようにするところが大きい。
あの人は、いつも自分の端末を捨てようとしているから。
そうして家から出ようとしたところで、継母の方に何か言っていくべきだろうかと考えた。そうした方が後々は問題ないかもしれない。
けれど、どうせ今までもしてこなかったことだ。しなくても問題ないだろうと結論づけて、そのままドアを開けた。このドアを開く音だけでも、自分が出て行くことは何となくだろうと分かりはするだろう、きっと。
外に出て、玄関の鍵は閉めずに、友達との待合い場所へと鼻歌交じりに向かう。
楽しみだ。久しぶりの外出というわけではないけれど、あの友達と一緒に出かけるのは久しい。彼女は変わっているだろうかいないだろうか。
どちらにしろ。
やはり楽しみだ。
友達とかいっぱいいたんじゃないかなとか。