シークレット・メモリー 続・着物の話

何気にシークレット・メモリーの二世と二世の雨は常識人。
それに気付いた今日この頃です。

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　その光景を見た瞬間に、思ったのは何だったか。
　とりあえず状況を理解するべく一旦その光景を閉め出して、眉間を揉みほぐし、再び目を開いて……息を吐いた。
　理解はした。見たままの状況なのだろう、と。
　だが、それを受け入れるかどうかと言われれば、答えは是とも否とも言えない。
　これは一体、どんな反応をしろと言うのか……半分ほど投げやりな気分であるこちらに構わず、二人の内の片方がほら見ろ、ともう片方に言うのが聞こえた。
「やっぱりこーいう反応だろうが」
「あら、もしかしたら見とれてるだけかもしれないわよ」
「有り得ねぇだろ」
「そうかしら？」
　いや、そうでしかねぇだろ。
　二世はそう言ってやりたかったのだが、自分の日輪たる女性には何を言っても無駄だろうと思い直し、結局止めた。それから思うのは、どうしてこんなのを自分の守護者に認めてしまったのだろうと、そういうことだった。
　それに、まぁ、見とれた云々はともかくとしてだが……一見の価値はあると、一瞬だったが思ってしまったのも事実なので何とも反論しがたいのである。どうやら彼女は雨の見てくれにとてつもなく手を入れたらしい。
　お陰でといっては何だろうが、そのせいで彼の姿には全然違和感という物がなかった。色合いからして女物であろう衣類を着ているというのに、だ。流石は女性と褒めるべきかはイマイチ分からない点だが。
　髪まで結い上げて…と自身の雨を見やり、ここに初代がいなくて本当に良かったと二人には気付かれないように安堵の息を吐く。
　あれがいたら、きっと話はとてつもなく面倒な方向に行っていたはずである。あれは、いるだけで状況をどんどんと一手間も二手間も掛かるような事態へと持って行く、いわゆるトラブルメーカーだ。それに、問題を起こすその行動が、意図的であった理想でなかったりするからさらに面倒なのだ。
　そして。
「二世ー、遊びに来たんだが暇は作れるか？」
　…そう言うときに限って、遊びに来るのだ、これは。
　声が聞こえた瞬間に握ってヒビを入れてしまった万年筆を、もしもの事態になっても書類を汚さない場所に置き、晴れと雨の間に立っている忌々しい男を見やる。
　その忌々しい男はというと、晴れの方と何やら楽しげに喋っていた。
「それは、もしかして？」
「えぇ。貴方の所の雨がお土産にと持ってきてくれたんです」
「似合っているな。けれど、もうちょっと黄色っぽい方が良かったんじゃないか？一応、晴れなのだし」
「一応じゃなくて正式に晴れですよ、初代。それに、あまりに黄色すぎると目立って困ると思いますけれど」
「そんなことを気にするのか？…それより二世の雨は？」
「私が着飾らせてもらったんです。抵抗も何もなくて楽でした」
「…そりゃ、抵抗しようとしたら鳩尾に肘が…っぐ！？」
「何か言ったかしら？」
「……何でも無いです」
　鳩尾の辺りを抱えつつ、雨が呻くように答えた。どうやらこのやり取りは一回や二回ではなかったようだ。哀れとは思うが助けようとは思わない。いつものことだし、彼女が相手だと自分まで負ける可能性が出てくるのである。
　それは、避けたい。
　そういうことなので、雨には犠牲になってもらうことにしよう。
　…というのはおいておくとして。
「何でテメェがここにいんだ」
「遊びに来たと言っただろう？暇で暇でしょうがないから構え」
「…絶対に断る」
「つれないことを言うな、二世」
「つれなくなる原因をテメェが潰してくれば、いくらでも乗ってやる」
「何でそんな不可能なことを言ってくれるんだ？」
　…不可能なのか。
　何とも絶望的な言葉に目の前が暗くなりそうだったが、すんでの所を堪えて言い返そうとした、のだが、既に初代はこちらに意識を向けずに雨の方を向いていた。
「にしても…よく似合うな。髪が結い上げてあるのは？」
「ソイツにやられた…」
「そうか…成る程。では、今後もよろしく頼む」
「頼むなぁ！」
「分かりました、初代。次はもっと腕によりをかけさえていただきます」
「お前も頼まれんじゃねぇよ！」
「初代、晴れ…テメェら…用事がないなら執務室からとっとと出てけ！」
「あら二世、雨の子は良いのかしら？」
「差別だな、二世」
「差別される原因を自分から作るヤツらが何を言っても無駄だ！」

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そんな前世のみなさま。
…結構楽しい。