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「ミレイナ、そろそろ出発するよ?」
「あともう少し待って欲しいです…何か出来そうな悪寒です…」
「悪寒じゃなくて予感な」
「……」
ハレルヤが訂正を口にしたときには、既にミレイナの意識はアリオス修理の方へと向かっていた。反応が全然返らない彼女から視線を外し、片割れと二人顔を見合わせて肩をすくめる。こういう事に没頭できるところ、さすがはイアンの娘だ。
そして、アリオスが着実に直りつつあることも。
予想外と言えば、予想外だ。
それはキュリオスも同じく思っていたらしい。自分たちよりも、彼の方がこの状況の『異常性』に関しては理解があるのだろう。実に訝しげな、見ようによっては恐ろしく思っているような表情でミレイナを見ていた。
「…何で、直るの?」
「…さてな」
キュリオスは知っている。彼ら一同が、修理されるのはイオリア……創造者の手によってのみだと言うこと。だから、ミレイナがアリオスを着実に直しつつあるという事実が、喜ばしいと思う以上に恐ろしく思えるのだろう。
彼らにとって、それは有り得る話ではない。
有ってはならない話だ。
しかし……こちらには、何となくこの事態のタネが分かっていた。従ってキュリオスのように不安がったりはしないし、逆にそれさえ知っていれば納得さえする。
アレルヤも同じように思ったのか、何とも感慨深げにミレイナを見ていた。
「ミレイナって『記憶を継ぐ者』だったんだね…」
「しかもあの発明家のな。イオリアがそれだったから、まぁ可能性としてはねぇこたぁねぇけどよ…」
「うん、凄い偶然」
かつて、強大な力を持って存在していた何人かの存在。その存在は死して尚、記憶だけはただただ受け継がれていた。ある意味でそれは『生まれ変わり』と称される物だろう。だが、生憎とハレルヤは生まれ変わりなどと言う物を信じてはいないのである。
とまぁ…そういうわけなのだ、つまりは。
だから、ミレイナには修理が出来る。
果たしてそれを、キュリオスに言って意味はあるだろうかと、少しばかり考えた。が、言わなくても良いだろうと、割と簡単に結論は出た。言ったところで信じられるとも考えにくい。彼らにとって『父親』とやらは絶対の存在だ、それのある意味の『生まれ変わり』の存在を聞いて、納得できるか分からない。
それに、その『記憶を継ぐ者』に関しての説明を求められても困る。というか面倒だ。やろうと思えば説明は可能だが、別にだからといってそれをやらねばならないわけでもない。やるか、やらないか、と聞かれれば確実に後者を取る。
「キュリオス、大丈夫だよ。きっと直るから」
「…何で…?どうして、なの?」
「ミレイナが凄いから」
ね?と笑うアレルヤに、キュリオスもぎごちなく笑った。
二人の様子を見ながら、あぁ、と納得する。成る程、そうやって言う方法があったか。というか、それで完全ではなくても少しは納得してしまうキュリオスがどうだろうと、ハレルヤは思うのだが。
「アリオス、また動くの…?」
「動くよ。僕が保証する」
「やったですぅ!出来たですぅ!」
アレルヤが頷いたとき、丁度、ミレイナの修理も終わったところだった。