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雨んこシリーズ第三段目です。
そして大変なことが起きました。
佐助が別人ぽいです。



 おい、と声をかけられて、佐助はくるりと振り向いた。
 結果見えたのは、自分に呼びかけた政宗と、それから、泣いている幸村。
「…えっと、一体何があったんで?」
 思わず問いかけてみた自分は悪くないだろう。この状況を見てそれ以外に、一体何をすれば良いというのか。いくら忍であろうとも、出来ることと出来ないことはある。そしてこれは出来ないことに分類される事象だった。
「何があった、って言われても俺も分からねぇよ」
「はい?だってずっと旦那の傍にいたんでしょ」
「いたけど分からねぇんだって言ってんだよ。コイツ突然泣き出しやがった」
 勘弁しろよ、とぼやく政宗から、佐助は幸村に目を向けた。
 使える主君は、それはそれは悲しげな様子で、どうやらずっと泣いているらしい。ごしごしと擦っている目元は赤くなっていた。
「旦那…もう擦るの止めなよ。赤くなってるよ?」
「しかし……止まらないのだから仕方ないだろう」
「…そりゃまたどうして」
「こっちが訊きてぇくらいだぜ」
 ぐ、と幸村を佐助に押しつけて、政宗は言う。
「何か突然泣き出した」
「…変なこと言ってないでしょーね」
「何のためだ?そんなんする意味ねぇだろ」
 憮然とした様子で返され、成る程と佐助は納得した。その様子だったら本当に言ってはいないらしい。無意識かもとも思ったが、それは確かめようがないので黙っておく。
 ただ、そうすると本当に理由が分からない、わけであって。
 佐助は、腕を組んで首を傾げた。
「じゃあ旦那はどうして泣いてんの」
「…悲しくなったのだ」
 ポツンと、幸村は呟くように言った。
「今日、いらっしゃっておるという政宗殿の母君と、政宗殿の事を思うと…理由は言葉に表しがたいのだが……悲しいのでござる」
「…妙な話じゃねぇか」
「妙ではござらん!」
「じゃあ理由言って見ろ。言えて俺に納得できるもんなら妙じゃねぇって言ってやる」
「…それが分からぬのです、政宗殿。あと少しでつかめそうなのだが…」
「つかめてねぇんだろ、結局」
 なら無いのと同じだと。
 そう呟く政宗から視線を外し、佐助は幸村の方を向いた。
「旦那、そういえばさっき向こうで団子の山が」
「何と!」
「ここは俺様に任せちゃって、旦那は行ってきて良いけど…って聞いてないか」
 任せちゃって、という言葉が終わるかどうかの所で、幸村は佐助が指さした方へと走っていってしまった。涙なんて物はもうどこにも見あたらないくらいに復活して。それでも走る前に少しばかり不安そうな顔をしたのは、政宗のことが気がかりだったのか。結局行ってしまったけれど、それは佐助が『任せて』と言ったからだろう。
 自分ではダメだと、薄々感づいていたらしい。
 それはそうだろうね、と佐助は心の中で零す。幸村は何かがあり、それが何なのかが分かってはいても理解できていない。ピンと来て、そのピンと来た物が何なのかが漠然と分かっているだけなのだ。そんな状況でコレなのだから、きっと佐助が知っている事実を教えたら大号泣間違いナシだろう。
「…相っ変わらず足速ぇなアイツ」
「でしょーね。特に旦那は甘味のことになると速いから」
「テメェは行かねぇのか?」
「その前にちょっと訊いておきたいことがあって」
 ニコリと笑って。
「やっぱり、お母さんとは上手くいってないんだ」
「……」
 鋭い刃物で抉るように、言う。
 佐助は知っているのだ。彼と彼の母との間の亀裂を。格好を付けるために忍をしているわけではない。ちゃんと情報は集めているし、思い出せるように頭の中でしっかりと記憶もしている。思い出せなければ使えない。そして使うのは、より効果的に影響を与えるため、である。敵だったら悪影響を、という様に。
 最も今の言葉は悪意があるわけではない。言いながらも結構な嫌な気分は味わっている。それでも言うのは、そうやってハッキリ言ってやらないといけないと思うからだ。
 たまにはハッキリと言われてそうやって傷ついた表情でもして。
 誰に見られたくもないのならば一人で隠れてでも良い。
 とりあえず、泣けばいいのだ。
 そうして元に戻って、幸村でも誰でも安心させればいい。独眼竜はいつものように不遜な態度であればいいのだ。
 そんなことを考えているとは知らないはずだが、政宗はまるで全て分かり切っているとでも言わんばかりに、平常よりも多少の陰はあるものの笑って見せた。
「…アンタ、やっぱり忍に向いてないんじゃねぇの?」
「さぁて、どうだろうねぇそれは。少なくとも俺様は天職だと思ってるけど?」
 こう言うときなんて、特に。








勉強不足…もっとちゃんとキャラを確認しないと…。
あ、でも、筆頭はあまり泣かないだろうなっていうのはあるかもしれない。あくまで自分の中だけど。
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