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ということで、初・バサラお題。しょっぱなは瀬戸内組でした。
…姫若子って、どのくらい姫っぽくしていいのかが分からないです。
01:付かず離れず
てくてくてくてく。
…てくてくてくてく。
てくてくてく。
…てくてくてく。
てててててて。
…てててててて。
…………ぴた。
……………ぴた。
「……お前は」
くる、と振り向いて松寿丸は後ろから追ってきていた隣国の客人を見た。
「一体、何故我の後ろを付いて参るのだ」
「え……っと、その」
その隣人は、どこか困ったように眉を寄せた。
女物の着物、やや長い髪、うっすらとした化粧、立ち振る舞い、それにその表情等々、どれをとっても普通の女性よりも女性らしく見えるその『少年』の煮えたぎらない反応に、ほんの少し苛。
…ときたので、とりあえず自分から寄って彼の頭を殴ってみた。
「痛っ!?」
「当然の報いだ馬鹿者めが!男児なるものかように弱腰でどうする気ぞ!」
「わ…私は別にそれでも良いの!」
「良いわけがあるかッ!」
叫びながら、思うのは彼の父親に、訪問当日に言われたこと。
…成る程、こういうわけか。
だからか。だから『弥三郎をよろしく頼む』なのか。
事情が分かった今だから言っておこう。
絶っっっっ対に。
嫌だ。
「だいたい、それで未来の国主が勤まる思うてか!愚か者が!」
「だっ……大丈夫だもの!このままでも国政は出来るもの!」
「それはそうだが、それでは舐められることも必至であろう!」
「舐められたら舐め返せばいいの!仕返せばいいの!」
「ぐ…」
「それで足りなかったら貿易の邪魔しちゃえばいいの!それでダメなら…叩く!」
ぐ、と握り拳を作って弥三郎…というか、姫若子は宣言するように言った。
確かにそれはその通りだ。やられたらやり返せばいい。
のだが、そういう話の内容以前に、普通そこで返答を躊躇うとか言葉を濁すとかするんじゃないだろうかと、松寿丸はどこか釈然としない思いを抱いた。が、女のなりをしていても男子、ということだと思うことにした。それが一番分かりやすい。
ほんの少しだけ見方を変えることにして、ふと、問いを紡ぐ。
「そういえば、そなた、城におるときは何をしておるのだ」
「えぇと、本を読んだりお手玉をしたり、それに…」
「分かったもう良い」
あんまりに予測通り過ぎる言葉にため息を吐いて、そこでようやく松寿丸は最初の質問の存在を思いだした。色々な衝撃のせいですっかり忘れていた。
「話を戻すが、姫若子よ、我の後ろを付いて参ったのは何か理由があってのことか?」
「道に迷っちゃったの」
「迷う?」
「貸してもらっていた部屋が、どこにあったのかが分からなくなって…」
それで、偶然見つけた自分の後を追っていたのか。
「では付いてくるのではなく、話しかければ良かろう」
「そうなんだけれど…ちょっと、やっぱり知らない人に話しかけるのは躊躇われて」
「…まぁ良かろう」
そういう事ならば仕方がない。連れて帰ってやるのも客人を招く主人としての役目だ。正確に言うとこの場合の主人は父となるのだろうが、子供同士ならば自分が主人代理でも問題はないと思う、多分。
「では付いて参れ」
「うん。ありがとう、松ちゃん」
「…我のことは松寿丸と呼べ」
「そう?じゃあ、ありがとう、松寿丸ちゃん」
「ちゃん付けは止めろと言うておるのが分からぬか!?」
「でも、そっちの方が可愛いと思うの」
「我は可愛さなど求めてはおらぬ!」
言い返しながら思うこと。
それは、ワザと違う道に行って迷わせてやろうかという、そういう考えだった。
やられたらやり返すの辺りにアニキ化の影。