[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ついに青のお題も残り二つとなりました。
こうなると結構感慨深いですね…。
19.必ず戻る
そのミッションは、大変難易度の高い物だという。
マイスター全員で当たることになるその任務は、つまり、三陣営の共同でのCB包囲作戦から離脱すること。テロさえも利用しての作戦で、相手は量に物を言わせて自分たちを追い詰めようとするだろうと、先ほど説明があった。
テロを利用するかと、刹那はその話を聞いたときに眉を顰めた。
彼らの行動は、自分から見るとあまりに酷い。CBを叩くためにテロを放置する。彼らにとってCBの行動もテロとして捉えられており、彼らはその『テロ』を阻止せんとして行動をしている。
しかし、そのためにテロを放置するなど、本末転倒なのではないか。
……もっとも、そのようなことはあまり自分たちには関係ないことと言える。ただ、自分たちは、ガンダムマイスターは、CBは、成すべきと定めた事を成すだけだ。
ただ、一つ。
ほんの少しだけ、心に引っかかる『何か』があることも事実だった。
果たしてこれは何なのか。想像は付いていたが、どうしてそれが生まれているのかが分からない。もしもだが、これが次の作戦の結果に対する不安であるとしたら。その仮説が正しかったら……と、刹那は息を吐いた。
だとしたら、それは必要な物なのか不必要なのか。確かに、仲間が欠けるのはあまり好ましい事態ではない。そこは、あのティエリアとて認めるだろう。
だが、別に刹那はそのような観点からこのような考えを抱いているわけではない。そこだけは、しっかりと確信を持って口にすることが出来る。そんな自信があった。
簡単に言うと。
刹那は、次のミッションでマイスターが一人でもいなくなるのだろうかと、そう考えて……本当にそうなったとしたら、悲しいと思うのだろうかと、考えたのである。
そう考えるというだけで、そう思うかもしれないという下地は出来上がっているというのに。普通に、自然に、何気なく。
考えた。それだけと言われればそれだけである事実だが、同時に、それだけ分の価値のある事実だとも、捉えることが出来る。
不思議な話だ。自分には、幼少の時に死に行く仲間を止めることが出来なかった。そのことに対して罪悪感はあったものの、悲しいという思いは無かったような気がするのだ。その時は自分のことで精一杯で、周りの事を気にする余地がなかっただけかもしれない。それでも、思うことが一度たりとも無かったのは事実。
あの頃は、随分と自分を冷たい人間だと思ったものだ。
けれど、それが今、どうだろう。
とても、誰かが欠けることが気になっている。
悲しいと思える下地が出来ていることは、分かった。実際に出来ているかは分からなくても、その下地が出来る準備が完了しているという事実だけでも、以前と今とでの違いは歴然としていた。
これは弱さと呼ばれる物だろうか。
考えてみても、刹那には全く答えが出ない。弱いも強いも関係ない、生きるか死ぬかの世界しか知らない、戦う事しか分からない自分だから、考えつかないのだろうか。生死は強弱に関係なく人々にもたらされ、闘争もまた強弱に関係なく人々が行う行動だ。どちらも、強弱を一つの要素として持つ面を持つ、全くの無関係者だった。
ティエリアに言えば間違いなく『弱さ』だと言われるだろう。ロックオンに言ったら『違う』と言うかもしれない。アレルヤは『分からない』とでも言うのではないだろうか。
結局の所、結論はないのかもしれない。
ならばこの思考も無駄な物なのだろうか。だとしても考えたという事実は残る。その事実が、あるいは未来を、自分を変えるかもしれない。その可能性も否定は出来ないだろう。
ならば、この事実は大切に取っておくことにしよう。
取っておいて、未来、もしそれを勝ち得たならば考えてみることにしよう。
そうすれば、考えたことも思ったことも、無駄ではなくなる。
そのためだけでも、生き残ることには価値があるように思えた。何かしらの目的があれば、人は生を素晴らしい物と思うことが出来るらしい。
ふ、と口元を歪ませていると、ふいに通信機が作動した。
見れば、そこには宇宙にいる仲間の名前。
特にでない理由もなかったので、刹那はその通信に出ることにした。
「アレルヤか」
『刹那、久しぶり。…通信は迷惑ではなかった?』
「問題ない。どうかしたのか」
『うぅん。ちょっとだけ言葉を伝えたいと思って』
「そうか」
アレルヤも、誰かが欠けることが不安だと思うのだろうか。だとしたら、彼はそれに対してどのような結論を出したのだろう。
それは刹那の知り及ぶことではない。そう思っていると、彼は言った。
『刹那、生き残ろうね』
「……」
『それだけが言いたかったんだ。それじゃあ、ね』
切れた通信に、黒い画面。それを眺めて息を吐く。
それがアレルヤの答えなのだと、刹那は静かに瞳を閉じた。
あと一つ。明日Upしようかと思います。
何だかシリアス続きそう…。