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ついに青のお題ラストです。
…長かった、ような気がしますね。
20.青信号
たまに不安になることがある。
果たしてこの行動は正しいのか、間違っているのか、と。
一般的に言えば『間違い』であり、自分たちから見ると『間違った正しさ』であるこの行動は、一体何を世界にもたらすのか。何ももたらさないのかもしれない。それはそれで、とても悲しいことだとアレルヤは思った。
人の溢れかえる交差点で、赤信号に足止めをくらいながら、考える。
自分たちはこのまま進んでも良いのか。いけないのか。進まないことが世界のためになるのなら、自分たちはここで止まらなければならない。進むことで世界が一つになれるのならば、自分たちはただただ進んでいくしかない。
とても、難しい話だ。
そう思ってふと、隣に立っている少年のことを見た。
彼はリンゴの袋を両手で抱え、じっと信号の方を見ていて。何となく、彼には立ち止まるという選択肢は似合わないだろうなと、感じた。
刹那は、色々なことを考えて、それを受け止めて、走っていくのだろう。
走っていないとまるで、死んでしまうと思いこんでいるかのように。
そして実際、それは事実なのかもしれない。
「ねぇ、刹那」
「何だ」
「刹那は、止まると死んでしまうのかな?」
「……質問の内容がよく分からないんだが」
「…あ」
つい、そのまま考えていたことを口にしてしまった。
少しだけ赤面して、言い訳するように言う。
「少しだけ考えたんだ。刹那は、いつも前を見て走っているな、って。あまりに前を見すぎて走りすぎているから、立ち止まった瞬間に、止まっているときの呼吸の仕方を忘れて倒れてしまいかねないと思って」
「…つまり?」
「突然止まったら、息が出来ないんじゃないかなって」
そう思わせるくらい、刹那はずっと走りっぱなしだ。
違う?と視線を向けると、呆れたように吐かれる、息。
「それはお前じゃないのか、アレルヤ」
世界がこれから具体的にどうなるかなんて、自分には全く分からない。ただ、今のままではいけないということくらいは分かる。分かったからこそCBのマイスターとなった。ガンダムと共に世界のゆがみをただすために。
ハッキリ言ってしまうと、自分の存在意義は今現在で言うと、それだけだ。
同時に、それだけは確かに存在していると言うことだ。
誰かに定められたでもなく、自分で決めることが出来る『存在理由』という物は、刹那にいくらかの暖かさを与えてくれたように思う。戦い続きの日々だったが、それも少年兵として走り回っていたときの続きだと思えばどうということもない。明確な目的があるという点において、間違いなく現状の方が昔よりも素晴らしいと思えていた。
そんな中、どこか自分と似たような感じがあるなと思う相手がいる。
アレルヤ。彼からはたまに、そんな印象を受ける。
別に彼も小さい頃に戦場を駆け回っていたというワケではないだろう。ただ、刹那と同様の『作られた存在理由』を持っていたのではないかと、思うときがしばしばあるのだ。あるいは、それは自分だから掴むことが出来るものなのかもしれない。
何となく興味を持って、それから少しだけ観察してみた。
そうして分かったことと言えば、アレルヤが色々と考えすぎる傾向にあるということ。
行動を続けている今でさえそうなのだ、もし突然に行動を中止させられて、空白の時間を大量に与えられたら。色々なことを考えすぎて、色々なことに押しつぶされてしまうのではないだろうかと、たまに思う。
そんなアレルヤが、刹那は立ち止まったら呼吸出来ずに死んでしまうのではと言った。
正直、自分から見るとアレルヤの方がよっぽどだった。
だから、返す。
「それはお前じゃないのか、アレルヤ」
「……そうかな」
「俺から見ればそうだ」
「そっか…じゃあ、僕らは立ち止まったら死んでしまうんだね、お互いに」
「…そうかも、しれない」
言われてみれば、刹那も立ち止まって生きていられるかと言われると、何とも断言する根拠がないと答えるしかないと気付いた。
信号が、青に変わる。
二人は、歩き出した。
結局、歩く他に道はないのだと、知っている。