[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
364
その足音は、まさしく災いを運ぶ物だった。
現れた人影を、姿を見て、自分でさえ…いや、自分だからこそ思う。
それは、月代。
都の影の支配者。
「お久しぶりですね、カティ・マネキン大佐」
「…私は既に軍は抜けたんだがな」
「そうですね。知っていますよ。追い出したのは僕らですから」
クスリと笑って、相手は何を言うんですか?と言わんばかりに、肩をすくめた。その姿すら苛正しく思うのは、何をそんなに白々しく、という気持ちが強いからかもしれない。彼とは、何度もまみえているのだ。
もちろん、相手はこちらを害するつもりで来ている。正確には直ぐ側にいる女性を。自分の方はオマケだろうか。もっともそんなことはどうでも良く、ただ自分が一番大切にしている人が傷つけられるという可能性が実に不愉快なのだが。
そんなこちらの気持ちなど知りもせず、知る気もないだろうが、藤色の髪の彼は一歩、足をこちらへと踏みだし……横に少しだけ身を寄せた。
何かを避けるかのような態度に、コーラサワーは訝しく思った。彼は殆どの場合が一人で、あるいは仲間と来る。けれど、仲間と来た場合でさえ、こんな風に何かのためによけるような行動はしなかった。
それが、今。
何だか、ワケが分からない。
「彼らが、僕らに反抗の意を示す者かい?」
「そうなんです、リボンズ」
「ふぅん……おや」
現れた薄い緑の髪の彼は、面白そうに口の端を持ち上げた。
視線の先にあるのは……刹那。
「珍しい人に珍しいところで会うね。何日ぶりかな?」
「…何の用だ」
「君じゃなくて、僕は身の程を知らない人間に色々と弁えさせてあげようかと思っていたんだけれどね……何て幸運だろう」
本当に嬉しそうに、リボンズとかいう月代は続けた。
「僕は、君に用があったんだよ…君のような、人間でありながら人間外の力を持つ者に、ね。手がかりがなかったから丁度良い」
それからいつもやって来る方の月代の方を向いて、笑顔のまま、言った。
まるで死刑宣告のように。
「君の目的の人間たちは殺して良いよ。けど、刹那は生かせてくれるかな?人質用に、あの小さなお嬢さんも」
「分かりましたよ、リボンズ」
静かに微笑んで、彼は手を上げた。
そして、その手が音を鳴らした。
瞬間。
ごうっと風が吹き、壁が壊れ、屋根が消え、調度品は一気に風化し…。
気付く。彼は、ここに入る前に何かの仕掛けをしていたのだ。
それは、もしかしたら自分ではなくて別の誰かが気配に気付いていたら、事前に何らかの事態を予測して察知して何かを出来ていたかもしれない。
後悔なんて出来ないことではあるが、後悔した。
結果、