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正直、この辺りからの話は泣きたくなってくる…すっごい悲しいんだよ…。



 騒々しさに、意識が浮かんでいく。
 出来れば眠ったままでいたいのにと、意識をハッキリ持つことに対する不満を抱きながら、何だか嫌な予感を覚えるからと、意識をハッキリ持たせることに対する不安を抱きながら、それでも目は開かれ、耳は本来の活動を開始する。
 そこは、本体の上だった。
 台か何かに仰向けに乗せられ、運ばれている本体の、丁度コクピットの上辺りに精神体の状態で立っていたデスサイズは、状況を把握するべく周りを見る。
 そうして、直ぐに、後悔した。
 そこはコロニーだった。一応だけれど自分もコロニー育ちと言えば育ちだし、こっそりと製造工場から抜け出して街の方を散歩したこともあるから、コロニーの空気は何となく知っている。
 懐かしさを覚える場所。
 けれど、聞こえてくる声はその想いを簡単に崩し倒す。
 いくつもの呪詛が連なっているような言葉。
 ただただ相手を貶めるだけの罵声。
 敵だと認識した相手にしか発さないだろう怒声。
 親の敵でも見るような目。
 その全てが、向けられているのを感じた。
 悪意というわけではない。それは純然たる敵意だ。だからこそ余計に質が悪いのだと、呆然と群衆を眺めながら思う。悪意なら、敵意をもって返せばいいのだ。だが、敵意に何を返せばいいのだろう?彼らは何も酷くて悪いことをしてはいないし、これからもしない普通の人間だ。たとえ選んではいけない道を選んでいても、彼らはそういう存在。敵意を向けて良い相手ではない。
 想像して然るべき展開だったのだろう、これは。
 渦巻くような憎悪を感じながら、目を閉じる。
 そもそも、自分たちの行動を誰かに許してもらう気はなかったし、理解だってなされることはないだろうと思う。行動の理解がされたとしても、パイロットはともかく自分たちは良い目で見られることはないだろう、と。
 目的が何であれ、自分たちは兵器だ。
 それを好ましい目で見てくれる人なんてそうそういるわけもない。
 だからこその、この状況だ。自分たちを守る存在ならば、そうだと理解しているなら頼もしさくらいは覚えてくれたかもしれない。所詮それは仮の話で、敵と認識したのなら忌々しく思う以外の何でもないに違いない。
 それに本体の色は、黒い。
 何だか悪魔の使いみたいに考えられているんじゃないだろうかと、自分の本体を恐ろしげに眺める人間を見て苦笑する。どうせ誰でも反応は同じ気が、ここまでくるとしてもくるのだが、やっぱり少しくらいは違ったと思う。
 ほんの少し損に思って、まだ聞こえる怒声を頭を振って振り払おうとした。
 あの声は、何だか嫌だ……存在まで否定されるような気がする。
 肯定されるとは思っていないけど、否定までしなくても良いじゃないかと思いたかった。それでも、彼らにとってはこれが当然の対応なのだと思うと、無性に虚しくなった。
 何のために戦っていたのだろう?
 コロニーのため、じゃなかったか?
 それが押しつけがましい行為だとは知っているけど、彼らの総意でもないと知っているけれど、不必要な行為でないことくらいは分かるというのに。
 彼らは、どうしても分かってくれないのだろう。
 何だか胸まで痛くなってくる気がして、右腕を動かそうとした瞬間に激痛が走った。
「痛っ……」
 何で、と考えてみて、少しして分かる。
 そうだ。そういえば、本体の右腕は消し飛んでいたのだったか。のろのろと本体に視線を戻せば、実際、右腕は消えていた。顔面の方にも何度もビームを食らっていたからか、精神体でも顔の辺りはヒリヒリと痛い。右腕に走る痛みとは、比べようもないけれど。
 動かせないと判断した右手はそのままにして、左手で胸の辺りに触れる。
 まだ、胸はズキズキと痛い。何でこんなに痛むのだろうと、本当に疑問に思ってしまうくらいに。耳にコロニー住居者の怒声や罵声が届くたびに、痛みが少しずつ増していくのだと、気付くのに時間はそう掛からなかった。
 理解されなくて傷ついているのかと、思ったのだけれど少し違う気がする。
 理解されなかったことよりも、理解する努力をされなかったことの方が、悲しい。
 その現実を突きつけられることが、敵意を抱いていない相手に敵意を抱かれぶつけられていることが辛い。
 こうなる覚悟はあったと思うのだけれど。
 どうやら自分で思うほどに、弱くはなかったけれど強くもなかったらしい。
 いつの間にか民間人が並んでいた道を抜け、静かになった道で、それでも痛み続ける傷を抱えながら、思うのは仲間たちのことだった。
 彼らは、大丈夫だろうか。無事だろうか。自分みたいな目には遭っていないだろうか。
 心配が心配のままであることを祈りながら、会いたい、と思った。
 今、仲間に会いたいと思った。
 逃げているって、言われそうだけれど……苦笑をして、気が抜けたのかもしれない、意識が再び暗闇に引きずり込まれようとしているのを感じる。
 けれどそれに逆らうことはなく、簡単に意識を手放した。








デスサイズ、とっても大変だなぁって思うんですよね…。
そしてとてつもなく悲しいです。機体もパイロットも、みんな理解されないままでも戦い続けてるのがね…。
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