銀竹の思いやり

バサラ雨シリーズ。一体どこまで続くのか…ということはありません。もうちょいで終わりますよ。

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「よ、政宗」
「……今度はアンタか」
「ん？毛利にでも会ったか？」
「いや…そんなもんじゃねぇよ」
　バッタリと街の中で出くわした政宗は首を振った。
「慶次が城に来たかと思うと、次は幸村、佐助、それから元就だぜ。千客万来じゃねぇか」
「ほー、そんなに来たのか、今日」
　それは確かに千客万来だ。
　彼の言葉に納得を示しながら、にしてもそれは本当に多いと考え、苦笑する。その大人数の中に自分とて含まれているのである。
　まぁ、そういう日もあるのだろう。
「ところで政宗、お前もう城に戻んのか？日暮れ近いけど」
「いいや？まだもう少し歩いてから帰るぜ」
「早く帰った方が良いと思うけどねぇ」
「…何かあったのかよ？」
「いいや？」
　自分が知れることなど大してあるわけではないが、早く帰った方が良いのではないかと思ったのは事実だ。政務が溜まっているとかいうことは無いだろうし、そんなのを自分が気にするわけはないから、もっと別の理由から。
　今、政宗の母親が城にいるのは知っている。
　そのくらいは自分でも知ることが出来る内容だ。そこそこに奥州の人々と接触を持っているからその関係からいくらでも知ることが出来るのである。
　政宗が今、ここにいるのはそれによる物が大きいのだと言うことくらいも、知っている。こちらの場合は奥州の人々云々ではなく、ふとした瞬間に感じるような感覚から伝わってきたのであるが。
　元親としては、政宗が早く母親と仲直りを出来ればいいと考えている。やはり一人しかいない親に、愛してもらえないのは辛いだろう。
　ただ、歩み寄るには距離をある程度縮める必要がある。
　だからこそ、帰ったらどうかと言ったのだ。
　……今すぐにどうとか、そう言うことがないことくらいは簡単に想像できるが、だからといって離れてばかりでは事態の進展も望めない。そのくらいは自分にだって分かるような事である。
「何もねぇけど、帰っても良いんじゃねぇかと」
「は。何があるのかと勘ぐっちまったじゃねぇか」
「悪かったねぇ。んでどうすんだ？」
「…やっぱり適当に歩いてから帰る」
「じゃあその前に少し俺に付き合え」
「何でんな話になんだよ」
「俺が暇だからな」
「…切って良いか？」
「丸腰の相手を切る気かよ。っていうかお前、今、獲物持ってないだろ」
「…っち」
　その事実を見事に忘れていたのか、指摘をすると政宗は不機嫌そうに眉を寄せた。
　そんな彼の様子を面白く思いながら、まぁまぁ、と肩をポンポンと叩く。
「良いじゃねぇか、少しくらい俺に付き合ってみても」
「何でんな面倒な事をしねぇとなんねぇんだ」
「ンな事言わずに、な？」
「…だりぃ」
　などと言いながらも、素直に相手をする体勢に入ってくれるところ、まだまだガキだ。そう思ったが流石に今、それを口にする気は起きなかった。そんな状況では無いだろう。
「ま、そういうのはまた後日ってな」
「何の話だそれ……つーかアンタら何でいんだ」
「てーと？」
「だから、何でアンタらが奥州にいるのかって訊いてんだよ」
　この場合の『アンタら』とは自分と元就のことだろうか。何故かは不明だが共に奥州の地に足を踏み入れた隣人を思い出す。
　そんなことをしている間にも、政宗は言葉を続けた。
「風来坊は良いとする」
「アイツは色々回ってるらしいしな」
「甲斐の二人も良いとする」
「結構頻繁に来てるんだろ？そりゃそうなるよなー」
「だが、」
　き、とこちらを見て政宗はびし！と指をさした。当然さされる方向には自分。
「アンタら瀬戸内組がいる理由が全く分からねぇ」
「そうか？」
「そうに決まってんだろ！？あっちとこっちでどんだけ距離があると思ってんだ！」
「ま、そんな細かい事気にすんなって」
　に、と笑って元親は言った。
「迷惑ってワケでもなかったろ？」

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元親と元就は、別々に出て、奥州近く出張ったりであった感じです。