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拍手再録です。
~生徒会長の犬~
放課後、基本的に生徒会のメンバーは生徒会室に集合する。
その時に無駄なギャラリーがついてくることも度々ある、というかいつもついてくる。元就としてはそんな彼らを早々に駆除したいのだが、残念ながら駆除するために理由が見つからないのだ、数名は。
もちろん理由が付けられる相手は即刻退場させている。特に幸村とか慶次とかいう面々を。前者は暑苦しく、後者は勝手に話し出す恋の話が鬱陶しいから。一度は放っておいた事があったのだが、その時に追い出さないと大変なことになると知り、以来、容赦なく追い払っている。…まぁ、それでも来るのだけれども。
ただし一人、元就が強制的に置いているのもいないでもない。
それが長曾我部元親。
ちなみに仕様用途はというと。
「おい、そこのバカ。喉が渇いたから茶を買ってこい」
いわゆるパシリである。
なのだが、元親は大人しく従う気はないらしく、噛みつくように叫んだ。
「そんくらい自分で行けや!」
「ほう…その様なことを言うのだな?」
ナマイキにも口答えをしてきた鬼に、元就は絶対零度の笑みを浮かべた。
「ならば質は無事では済まぬと思うが良い」
「…!アイツに手を出すんじゃねぇ!」
「そなたの言うことなど聞く耳も持たぬわ。…して、どうするのだ?」
「…っく…行きゃ良いんだろ行けばよぉ!」
「最初からそうしておれば良いのだ」
走って出て行く元親を鼻で笑って眺め、元就は再び手元の紙面に視線を戻す。
ちゃんとあの鬼は茶を買ってくるのか。もしも炭酸飲料を買ってきたら即刻『あれ』の破壊は確定だ。それから再び新しい質を調達すればいい。
そう思ってほくそ笑んでいると、政宗が右手を挙げた。
「元就、質問。話に出てた質って何だ?」
「あやつが好んで作っておる模型の事ぞ。今回は船の形の模型を奪っておる」
「今回はってことは何だ?前回もあったのかよ」
「その通り。あやつも懲りぬからな」
(2009/08/02)
~二年A組のわんこ~
「あ」
ふいにそう零したのは政宗だった。
何だろうかと慶次が見る中、彼が言った。
「やべ…さっきの教室に筆箱忘れた」
「あらら。部屋から結構離れちゃったし、取りに行くのも面倒じゃないかい?」
「でも、筆箱が無いと授業が受けられないね…どうするの?」
「…しゃーねーな」
半兵衛に言われ、どこか諦めたように政宗はため息を吐いて、そして。
くるんと顔を幸村の方に向けて、口を開いた。
「よし、真田幸村、取ってこい」
「え?」
「承知いたした!」
自分が行くんじゃないの?と思っての呟きに、しかし政宗も幸村も全く応じようとはせずに、幸村に至っては目立つくらい大声で叫んでいた。彼の場合は無視というか、絶対に自分が何か言ったことすら気付いてない。
「ではこの真田幸村、全身全霊をかけて政宗殿の筆箱を取りに行くでござる!待っておられよ政宗殿!」
「あ、教室戻ってるぜ?」
「分かり申したーッ!」
走り去っていく幸村の背中を見送る間、慶次は何も言うことが出来なかった。こうも堂々とパシリまがいの事……いや、パシリそのものな光景を見せられてしまうと、しかも両者とも納得済みっぽいところを見ると、何も言うことは出来なかったのである。
ただ、呆然と見送るだけ、だった。
「さて。次の授業は何だ?」
「えっと、政宗君、何事もなかったかのように話し出すのは止めてくれないかな」
「…?何でだ?」
半兵衛ですら疑問を持った様子だというのに、張本人その一といえばキョトンとした表情を浮かべていた。本当に、どうしてそんなことを言われるのだろうと考えているような表情である。
常識って、人によってとても違うのだなと、慶次が悟った瞬間だった。
(2009/12/15)
~バイト実行中~
「六百八十円になります」
差し出された雑誌の値段を告げ、丁度の金額を客から貰って。
その客が離れていくのを、政宗はレジに立って欠伸をこらえながら眺めていた。
眠い、わけではない。この欠伸は退屈すぎるせいだった。コンビニのバイト……しかも朝の早い時間帯ともなれば、どうやったって暇になるのである。今は珍しく六人ほどいるけれど基本的に客は来ないし、この時間に出てくる従業員は少ないからレジを離れるわけにもいかないし。
こういう時に騒々しいのが来れば少しはマシになるのだろうか。そんな事をボンヤリと考えていると、ふいに自動ドアの開く音が耳に届いた。
…本当に珍しい。何故か今日は来客が凄い事になっている。
まぁ、たとえ滅多にない事が起こったとしても、それは客に声をかける事を省いて良いと言うワケにはならない。
「いらっしゃいま…………!?」
だから、いつも通りに声をかけようとして……政宗は、盛大に失敗した。
何故なら。
「おー、本当に働いてるんだねぇ、竜の旦那。ていうか敬語…新鮮だね本当に」
「流石は政宗殿!若くして仕事に就いているとは…!」
…片方は違うけれど、ふっと先ほど思った『騒々しいの』が本当にやって来たから。
というか、何で来たんだろうかこの二人は。小十郎はともかくとしても…そのほかの人間には、バイトの存在は口にしてもバイト先は教えていなかったはずなのだが。となると自分で調べるしか知る方法は無かろうが……あぁ、佐助ならそのくらいはやるか
容易に推測出来た事実に肩を竦め、呆れを含んだ視線を二人向ける。
「で、テメェらは何しに来たんだよ。買い物か?」
「いや、竜の旦那の仕事っぷりを見に来ただけ」
「凄いでござるな政宗殿!某にはきっと出来ないでござる!」
「いや…幸村、テメェもこのくらい出来ると思うぜ?」
はぁ、と息を吐いて、二人の向こう側に広がっている外の景色を見た。もちろん何気なくだったのだが、その時に目に飛び込んできた光景に思わず…その光景を写し取った器官を強くこすった。
コンビニ前のゴミ箱が、宙を舞っていたように見えたのだ。
多分……見間違えだと思うのだが。
(2010/06/06)
~明日もきっと、こんな風~
……何で自分がこんな、いけすかない相手の荷物を持って歩いているのだろう。
眼帯をしている少女にすれ違うように道を歩きながら、思う。
…答えは簡単。昼休みに行ったゲームに普通に負けて、罰ゲームとして一回ほど何か、自分は彼の言う事を聞かなければならないから。
しかし、だからといって現状を快く受け入れる事が出来る、と言うワケでもない。
それでも、ゲームで負けたのだから文句を言う事だけは出来ない。
…おかげで気分は最悪だった。
何故か今日に限って無駄に荷物の多かった『勝者』を睨みつけ、元親は口を開いた。
「元就よ……一つ訊かせろ」
「何ぞ」
「この鞄いっぱいの教科書類は、全部、今日持って帰らねぇとなんねーモンか?」
「違うに決まっておろうが。仮にすべて持って帰るべき物であったとして、だ……我が今日と言う日、一日だけで全てを運ぶような愚かしい計画を立てると思うたか」
「……」
つまり、まだ持って帰らなくても良い代物を、今日の罰ゲームがあったから、ここぞとばかりに自分に運ばせようとしている、と、そう言う事なのか。
彼らしいと言えばらしいが……もう少しくらい手加減をしてくれれば良かった。そうなると今度は不気味に思うかもしれないが、今の様に両手に教科書でいっぱいの鞄を持って歩くような事態よりはマシだろう。もっとも、このくらいの重さならばそこまで堪えることも無いのだけれど。
「…次は絶対に勝つ」
「出来るものならやってみるがよい。いくらでも返り討ちにしてやろう」
「じゃあ、次はカードゲームじゃなくて徒競争でどうだ」
「構わぬぞ?いくらでも妨害のしようはあるのだからな」
「………お前…ズルする気満々かよ」
「勝利こそすべて……とまでは言わぬがな、少なくとも貴様相手に黒星を付けるのは何が何でも回避する所存ぞ」
…そこまで言うか。
元就のその言に少し呆れたが、ふっと、彼の言葉全体の仲で引っかかる事があった。
「…まさかたぁ思うが…カードゲームでもズルしてねぇよな?イカサマとか」
「さてな。やっておったとしても、見抜けぬ貴様が悪い」
ふん、と鼻で笑って言う元就に対して。
いつか絶対にし返してやると言う思いを抱いたのは、当然のことだっただろう。
(2010/06/06)
~嘘予告:メカっぽく~
それは、ある日突然祖父が送りつけてきた段ボールの中に入っていた。
小さく膝を抱え丸まるようにして目を閉じる子供。
彼は父が秘密裏に作り上げた、人工知能と高い防御力を有する人間型ロボットだった。
マサムネと言う名前を付けられたロボットを前に、彼を送りつけられた元親は彼の存在を隠しつつ、共に生活していく事を決意する。
しかし彼と言う存在は元親の友人を始めとして、努力の甲斐空しく数多くの人間に知られるようになっていく。
そうしてマサムネが周囲になじみ、周囲もまた彼を完全に受け入れ始めた頃、ちらちらと見え隠れする謎の集団が現れる。
集団がマサムネを探して町を渡り歩いていると知った元親は、友人たちと力を合わせて彼を守り抜くべく奔走を開始する。
そんな時に再び現れる父。
そして告げられる……マサムネの誕生にまつわる物語。
集団の目的は何なのか?父が現れた真意は?そして、マサムネの秘密とは?
全ては、今、この瞬間から……」
「ちょっと黙って」
「……悪ノリし過ぎだろお前」
「えー?良いと思うんだけどなー……文化祭のステージ発表の台本」
「どこが良いのか僕に教えてくれるかな、慶次君」
「というかこの……きゃすてぃんぐは何故でござろう?」
「あ、いやさ、折角三年生なんだから最後くらいぱぁぁってやりたいんじゃね?と思って」
「限りなく良い迷惑だろそれ」
「同感だね。それに、あちらはあちらで何かするんだろう?」
「こっちの手伝いとかやってる暇ねぇよな」
「主役はれるのに?」
「それ以前の問題だっつってんだよ。あと俺もこれは嫌だ」
「ならば、きゃすてぃんぐを少々変えれば出来るのでござるか?」
「かもな。つーかお前、何でさっきからキャスティングって言えてねーんだよ」
「英語は苦手でござる」
「そんな話じゃ済まないよねぇ……このレベルだとさ」
(2010/08/09)