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幼小中心ながら、何か幼少じゃありません。思いっきり大学生。
18.求人広告
大学という場所にいると、どうしたってお金が要るのであって。
リーサは、食堂の片隅でペラペラとチラシを捲っていた。
今月は、少しやばい。良さそうな戦術予報に関する書籍を見つけてしまったからそのせいで、ハッと気付いたら財布の中がとても寂しくなっていたのである。まぁ、それは条件反射というものもあるから仕方がないと、言うことでどうにか納得するとして。だってあの本、前から欲しかったし。
…それでも、実際の問題は無くなるわけでもない。
だからこうして、バイト探しに精を出しているのである。
「出来るだけ講義の時間に被らなくて…そこそこ待遇が良くて私でも出来そうな……給料が高ければ言うことはないんだけど……」
「…何やってるんだい?」
「あ、」
「……求人広告?」
カタギリはその文字を見て首を傾げたようだった。
「何で?仕送りとか大丈夫じゃなかったっけ、君」
「諸事情で…ちょっと、使ってしまって」
「ふぅん…あぁ、それが昨日のアレか」
「……まぁ、そういうこと」
目を逸らしつつ、リーサは答えた。
そう、そうなのだ。昨日、本を抱えて本屋を出て行ったところで偶然ばったりカタギリと出くわしてしまったのである。お陰で事情をしっかりと把握されてしまっているのである。だから何を言わなくても察してくれるのはありがたい……と言えなくもない、のだろうか。あまり言えない気がするが。
ともかくとして。
事情を知っているカタギリにならば頼りやすい、というのは紛うことなく事実であって。
リーサは、がっと立ち上がってカタギリの手を取った。
「お願い!何か良い仕事あったら紹介して!じゃないと本気で今月やばいの!下手したら昼ご飯抜きなのよ!」
「…何日くらい?」
「一週間!」
「あぁ…それはキツイね」
「でしょう!?」
「でも、さ」
どこか苦笑めいた笑みを浮かべて、カタギリは言った。
「僕が知っているアルバイト先、多分君には合わないと思うんだけど」
「何で!?」
「バリバリの工学系だからね」
「…あ」
「しかも機体とかあっち方面。君は違うじゃないか」
「…う」
言われてみたらそうだった。
よくよく考えてみれば分かるようなことなのに、考えに至らなかったのは他でもなく自分が慌てていたからだろう。失態、といえば失態だろうか。
少し落ち込んで、しかし落ち込むような事でもないと思い直し、リーサは直ぐに行動を再開することにした。つまり、カタギリの手から手を放して、改めて机に向かって憤然と、求人広告を読むことに集中しだしたのである。
「…凄い気迫だねぇ」
「そういう茶々入れる暇があるなら手伝って頂戴」
「…何かキャラが変わってない?」
「知っておくと良いわ」
もちろん求人広告を見ながら、フッと笑う。
「人ってね…切羽詰まるとあっという間に変わる物なのよ?」
「そうかい…覚えておくよ」
「賢明ね……あら?」
ぴた、と手を止めて、リーサは目の前の席に座ろうとしているカタギリを不思議に思いながら見つめた。まさか…とは思うのだが。
「…本当に手伝ってくれるの?」
「放っておくのも気が引けるだろう?」
「ありがとう!もしも良いところ見つかったら何か奢るわ!」
「ははは、楽しみにしてるよ」
かくして。
頼れるかは置いておいて仲間を手に入れたリーサは、引き続いて広告に目を通した。
仲良し二人だったら良かったのにとか思って、実際仲良かったんだろうなと思ったり。
最終的には和解できて良かったです。