[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
この人がここまでこんな人かは不明ですが。
こういう一面もまた、あったりしたのかなぁ、と。
20.タイムリミット
カタカタカタカタ。
キーを打つ音だけが、部屋を満たす。
音を作り出している本人はその事実に頓着せず、ただひたすら端末の画面を眺め、そこに羅列される情報を読み取っていた。
その間にもキーを打つ手は止まらない。
カタカタカタカタ。
カタカタカタ。
カタカタカ、
そして、音が途切れた。
「…この程度なのか」
静かになった室内に、響く声。
これが情報を読み取っていた者…つまり、自分の声。
静かな中で、これが自分の声なのだと実感している間に、端末の電源は切れた。自分が切ったのだから別に驚きもしないが。
端末の起動している音すら無くなった部屋の中、何をするでもなく椅子に座ったままダラリとからだから力を抜き、先ほど見た情報を思い出して目を閉じる。嗚呼、本当に、想像はしていたのに、裏切られてしまった気分だ。
大人など、当てにしてはならない。
電気が必要だから石油を。
石油が無くなるのならば代わりのエネルギー源を。
……遅すぎる。
それが有限の資源であることは誰の目から見ても……子供である自分の目から見ても当然の、当たり前の必ず来る未来だ。大人たちにとっても一目瞭然の事象であったに違いないのに、彼らは問題を先送りにしてきた。
だから今、こんな事になっている。
嗚呼、本当に。
大人など、当てにするものではない。
…そして、大人に関して幻滅することがもう一つ。
まだ、彼らは戦争なんて続けているのだ。
「馬鹿な事だ」
心をそのまま口に出し、より深く椅子にもたれる。
「それがさらに資源の減少を引き起こしているのに、それに気付きながらも戦いを止めない人間たち。誰も彼もが、愚かすぎてどうしようもない」
それは…そう、自分を含めて。
批判をしていても、それ以外は何をするでもない自分も、変わらず劣らず愚かだ。
そんなこと、嫌でも理解できる。
しかし…まぁ、よく考えてみれば。
別に、何も『しない』ままでいる必要はない。
ここまで思ったのだ……もう、じっとしている時間は切れた。
「さて…では、やるべき事をやろうか」
椅子から腰を上げて、バルコニーに出る。
そこから見えるのは美しい自然ではない。人間が作り上げた、歪で脆い惰弱なオブジェの数々だ。多分、とてつもなく強い地震なんて起きてしまったあかつきには、全部が跡形もなく消えてしまうようなオブジェ。
儚いほどの、人間の栄華の象徴。
これだけを見れば、人間が視線を逸らし続けてきた理由も分かるというものだ。目の前にある便利さに傾向して、未来の危機から目を逸らして。そうすることで自分たちの弱さを必死で見ないようにしているのだろう。
人が弱いと気付いた瞬間、人はその王国を奪われる。
その人の王国を守るのも、また一興か。
ふ、と笑って手すりに肘をつく。
「さてさて、私が頭角を現す前に、大人たちは果たしてどこまで出来るものだろうな?」
それは、有る意味で競争だ。
この身が全てを成すのが先か、大人が出番を奪うのが先か。
奪われたところで痛くも痒くもないが。どうせ、出来たところでエネルギー面の出番だけだろうから。ならば自分は戦争の方をどうにかしてやればいい。それは、今すぐ成される必要はなく、同時に未来にしか成せないことだ。
今の大人ではムリだろう。
だから自分が、手回しをしてあげよう。
何百年だろうと未来に、世界が一つになるように。
幾つも幾つも手段をうって。
この頭を駆使して。
「感謝して欲しいな、大人たち…人間たち。このまま滅ぶのは嫌だから、ついでに君たちも守ってあげよう。私は慈悲深いんだ」
感謝など、必要ないけれど。
そう思い……あまりに馬鹿なことを考えていたと、声を上げて、笑った。
分かりにくいかも知れませんが、イオリアさん(幼少期)です。
あの人だって、こういう上から見下ろす高慢さもまた、持っていたのではないだろうかと。
少なからず持っていたとは思うのです。