式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
恐らく、出会いシリーズは順々に読まなければならないと思います。今更でごめんなさい。
「何だ、コレ」
「見て分からぬか?」
成人の日から何週間か後。
政宗は、離れの中に出来た新しいとある物を、呆然と見やっていた。
そういえばずっと昔、料理は結構好きだとか言ってしまった気がする。けれどそれは何千年も前の話であって、今も好きと言えば好きなのだが、腕は間違いなく落ちているというか何というかそれはさておいて。
何故か、目の前に新しい台所があった。
しかも自分の気付かない間に、いつの間にか。
……いや、本当にいつの間に。
「政宗が寝ている間に、何も知らぬ人間に作らせたのだ」
未だに衝撃の抜けきらない政宗に、元就はどこか自慢げに言った。
「その人間どもに足音が鳴らせず、気配も消せるようにする術をかけ、結果がこれぞ」
「や、気持ちはありがたいんだがよ」
どうにか我に返った政宗は、少し困ったと思いながら頬を掻いた。
「良いのか?妖にここまでして、本家の人間は」
「あやつらにも黙っておる。もちろん全て秘密にもしておるしな。あやつらごとき無能どもに我の行動など見通せるわけも無かろう」
「無能、ねぇ」
確かに妖を祓う力はないだろうが、並以上にはある程度の力を身につけているはずなのだが。それが、毛利家の一員であるということだ。
しかし、自分を捕らえたあの当主も似たようなことを言っていたな懐かしく思い出しながら、ともかくと、政宗は元就の両肩に手を置いた。
「それはおいておいてだ、元就、気持ちはありがたいが受け取れねぇ」
「その様なことを言われても、もう設置してしまったのだが」
「あー、そりゃそうなんだけどな…けど、受け取れねぇんだよ」
「何故ぞ」
「俺は何もしてねぇだろ」
何もしていないのにこんな立派な物を、というのは、些かでなく居心地が悪い。裏表が今回はないだろうというのは、彼が幼い頃からずっと見てきたからよく分かるのだが。最も、彼はあまり自分に裏表のある行動を見せない気がする。それは、安心して関わり合うことが出来る対象として認識しているからか。
だったら、何となく嬉しい気もする。
そう思える程度には、政宗も元就を気に入っていた。
だからこそ、受け取れない。
「何を馬鹿なことを」
しかし、元就は心底呆れた、という表情を浮かべた。
へ?と思っている間に両肩にかけていた手は払われ、どこか憮然とした表情で彼は口を開き、続きの言葉を紡ぐ。
「良いか政宗。我は、そなたの存在によって幾分かマシな生活を送って来れたと思うのだ」
「マシって…まぁ、そりゃそうかもしれねぇけど」
何せ彼は毛利家の当主だ。醜い権力争いの現場も目の当たりにしているだろうし、妖を祓うという仕事の性質上、いくらか人間の汚い部分を普通よりも見ている可能性も高い。妖が人を理由無く襲うことはあまりなく、だいたいが人間の勝手な都合であることは政宗だって知っている常識だ。
そんな中で、権力争いを気にすることもなく、人間の汚さも知っている自分という存在は、確かに傍に置くだけでも多少は違ったかもしれない。
「けど、それだけだろ」
「それだけで十分だったのだ」
「…なぁ、元就」
「どうかしたか」
「何でそんなに今日は素直だよ」
「我は日頃から何も隠し立てしておらぬぞ」
「隠さねぇけど言わないだろーがお前は」
それが、どうして今日はここまで。
だいたい、感謝を述べたいなら一言「ありがとう」とでも言えば良いのだ。彼の場合だったら「感謝する」だろうが。いや、まぁそこはどうでも良い。
今までこんな素振りも見せなかった彼が、突然こんな事をしだしたのが問題なのだ。
「今までは当主ではなかったからな」
「はい?」
そして、その問いに返ってきた言葉を思わず聞き返した。
当主云々って関係あるのか、これに。そんな疑問の視線を紛うことなく受け止めたのか、彼はどこか憮然とした表情で腕を組んだ。
「昔からやりたかったのだがな、どうしても資金が無かったのだ。だが、当主になれば毛利家の財産は使い放題ぞ」
「あぁ、金ね…」
「うむ」
「そりゃ納得の理由だぜ……」
何事でも金は大切だ。
頷いて、それから笑む。
「じゃあ、早速何か作ってやるよ。何が良い?」
「何でも良い。材料は全てここにあるから好きに使ってくれて構わぬ」
そんな感じで厨房ゲット。だいたい、封印場所にそんな物があるわけもないのです…。
とにかく前回疲れただろうから…今回はゆるりといってほしかったのです。
「見て分からぬか?」
成人の日から何週間か後。
政宗は、離れの中に出来た新しいとある物を、呆然と見やっていた。
そういえばずっと昔、料理は結構好きだとか言ってしまった気がする。けれどそれは何千年も前の話であって、今も好きと言えば好きなのだが、腕は間違いなく落ちているというか何というかそれはさておいて。
何故か、目の前に新しい台所があった。
しかも自分の気付かない間に、いつの間にか。
……いや、本当にいつの間に。
「政宗が寝ている間に、何も知らぬ人間に作らせたのだ」
未だに衝撃の抜けきらない政宗に、元就はどこか自慢げに言った。
「その人間どもに足音が鳴らせず、気配も消せるようにする術をかけ、結果がこれぞ」
「や、気持ちはありがたいんだがよ」
どうにか我に返った政宗は、少し困ったと思いながら頬を掻いた。
「良いのか?妖にここまでして、本家の人間は」
「あやつらにも黙っておる。もちろん全て秘密にもしておるしな。あやつらごとき無能どもに我の行動など見通せるわけも無かろう」
「無能、ねぇ」
確かに妖を祓う力はないだろうが、並以上にはある程度の力を身につけているはずなのだが。それが、毛利家の一員であるということだ。
しかし、自分を捕らえたあの当主も似たようなことを言っていたな懐かしく思い出しながら、ともかくと、政宗は元就の両肩に手を置いた。
「それはおいておいてだ、元就、気持ちはありがたいが受け取れねぇ」
「その様なことを言われても、もう設置してしまったのだが」
「あー、そりゃそうなんだけどな…けど、受け取れねぇんだよ」
「何故ぞ」
「俺は何もしてねぇだろ」
何もしていないのにこんな立派な物を、というのは、些かでなく居心地が悪い。裏表が今回はないだろうというのは、彼が幼い頃からずっと見てきたからよく分かるのだが。最も、彼はあまり自分に裏表のある行動を見せない気がする。それは、安心して関わり合うことが出来る対象として認識しているからか。
だったら、何となく嬉しい気もする。
そう思える程度には、政宗も元就を気に入っていた。
だからこそ、受け取れない。
「何を馬鹿なことを」
しかし、元就は心底呆れた、という表情を浮かべた。
へ?と思っている間に両肩にかけていた手は払われ、どこか憮然とした表情で彼は口を開き、続きの言葉を紡ぐ。
「良いか政宗。我は、そなたの存在によって幾分かマシな生活を送って来れたと思うのだ」
「マシって…まぁ、そりゃそうかもしれねぇけど」
何せ彼は毛利家の当主だ。醜い権力争いの現場も目の当たりにしているだろうし、妖を祓うという仕事の性質上、いくらか人間の汚い部分を普通よりも見ている可能性も高い。妖が人を理由無く襲うことはあまりなく、だいたいが人間の勝手な都合であることは政宗だって知っている常識だ。
そんな中で、権力争いを気にすることもなく、人間の汚さも知っている自分という存在は、確かに傍に置くだけでも多少は違ったかもしれない。
「けど、それだけだろ」
「それだけで十分だったのだ」
「…なぁ、元就」
「どうかしたか」
「何でそんなに今日は素直だよ」
「我は日頃から何も隠し立てしておらぬぞ」
「隠さねぇけど言わないだろーがお前は」
それが、どうして今日はここまで。
だいたい、感謝を述べたいなら一言「ありがとう」とでも言えば良いのだ。彼の場合だったら「感謝する」だろうが。いや、まぁそこはどうでも良い。
今までこんな素振りも見せなかった彼が、突然こんな事をしだしたのが問題なのだ。
「今までは当主ではなかったからな」
「はい?」
そして、その問いに返ってきた言葉を思わず聞き返した。
当主云々って関係あるのか、これに。そんな疑問の視線を紛うことなく受け止めたのか、彼はどこか憮然とした表情で腕を組んだ。
「昔からやりたかったのだがな、どうしても資金が無かったのだ。だが、当主になれば毛利家の財産は使い放題ぞ」
「あぁ、金ね…」
「うむ」
「そりゃ納得の理由だぜ……」
何事でも金は大切だ。
頷いて、それから笑む。
「じゃあ、早速何か作ってやるよ。何が良い?」
「何でも良い。材料は全てここにあるから好きに使ってくれて構わぬ」
そんな感じで厨房ゲット。だいたい、封印場所にそんな物があるわけもないのです…。
とにかく前回疲れただろうから…今回はゆるりといってほしかったのです。
PR
この記事にコメントする