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早期リタイア組は、とても悔しいだろうなぁと。
朝というのは、今までも酷く忌々しいものだった。もっと寝ておきたいと思っていても、学校があるなら行かなければならず、つまりは起きなければならなかったからだ。
だが、今。
学校に行けない以上は起きなくても支障はないだろうが、しかし、それでも忌々しい朝だった。毎日寝坊がし放題だというのに。
当然、それはこうなってしまった『理由』のせいだった。
「ったくあの爬虫類男…ッ」
「ハレルヤ、あまりそうやって言うものじゃないんじゃないかな」
「事実だろーがよ。つーかこれくらい言っとかねぇとやってらんねぇし」
不機嫌丸出しのまま、ハレルヤはアレルヤの朝食にフォークを突き立てた。それからそのまま、突き刺したウインナーはいただいていくことにする。元々それが目的で突き刺したのだし、自分にとっては当然の流れだった。
それはアレルヤにとっても同様だったようで、仕方がないと言わんばかりの表情を作りはしたが、何も言っては来ない。毎朝同じようなことをしていれば、確かに言うようなこともなくなるだろうとは、思うが。
「アレルヤ、お前は大丈夫だろうな?」
「うん。ハレルヤと双子って事でちょっと警戒されてたみたいだけれど、今では殆ど警戒が解けてるかな。放っておいても害はないって思われたみたい」
「その判断は何とも言えないな」
自然にちゃっかりと、寮の食堂で哀惜をしていたティエリアが腕を組んで息を吐いた。
「確かに君だけなら、よほどのことがない限りは大人しくしているだろう。だが、我々に情報を与えて何らかのアクションを起こさせる原因になる可能性は十分にある。ヤツらは生徒会にもっと警戒を抱くべきだ」
「それをしないお陰で、見逃されているようなものだが」
食パンを咀嚼し終えた刹那はそう呟いて、牛乳の入っていたコップを持って立ち上がった。背が低いのを気にしている彼なので、どうやらおかわりをもらいに行ったらしい。どれだけ牛乳を飲んだところで背が高くなるとは断言できないというのに、よくもまぁ懲りずに出来るものだといっそ褒めたくもなる。
まぁ、実際には褒めはしないが。
などと意味のないことを考えつつ、帰ってきた刹那にハレルヤは声をかけた。
「…そういやお前、まだ停学にならねーんだな」
「代わりにグラハムが自宅…というか寮で謹慎になったが。ガンダムガンダム煩い、だそうだ。もっと教師としての自覚を持てと」
「刹那…それ聞いたとき、少しキレなかった?」
「あぁ。ガンダムガンダムと言ってどうして煩いと言うことになるかが理解できない」
「そりゃテメェだからだろうよ」
ガンダム大好きな二人にとっては普通だろうと、自分たちにとっては些か騒々しく思える二人の言い合い、あるいは討論について思いを巡らせつつ、本気で悩み込んでいる様子の刹那の頭を小突く。
「それでもテメェは耐えたワケか」
「停学にされては元も子もない」
「…その通りか。俺も停学にされてしまったせいで行動に制限が付いた。あまり大きく動けないのは難点だな。…出来ることならヤツら、今すぐこの瞬間にでも追い出してしまいたいんだが」
爪でも噛みだしそうな様子でティエリアが呻き、それを見た刹那が何度も頷く。
本当に、言うとおりだ。ハレルヤも今では、何が何でも学園に残るべきだったのではないかと悔いているのである。ここにいては行動の制限が付くだけではない、情報が後々に回って何の手だても考えることが出来ない。考えついても、行動にうつせないのだ。
これほどまでに面倒な事態、避けようと思って避けるべきだった。
「今日もまた停学者とか出るのかな…」
「出るんじゃねーの?ソーマの奴もアウトだったんだろ?」
「…うん」
こくりと頷くアレルヤを見て、ティエリアが険しい表情を浮かべた。事の一部始終は既にソーマ本人から聞いてるから、その時の事が色々と浮かんでいるのだろう。
そんな彼の隣でポツリと、刹那が呟いた。
「…横暴だな」
「はっ。横暴ってか独裁じゃねぇか?」
「彼らからしたら、ヴェーダだって独裁、だったんだろうけど…」
「だが、ヴェーダの場合は民主主義的な横暴だ」
学園所有者の横暴は、確かに存在していたと言うことは認める。だが、それは決して彼女からの押しつけではない。拒否をしようと思ったら、彼女はきっと直ぐに引く。
それも分からない彼らに、学園を同行できるわけもないだろうに。
呆れ。それを全面に押し出すような表情を浮かべている間に、がた、と音を立ててアレルヤと刹那が立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ僕らは行くから」
「帰ったら状況を連絡する」
「…頼む」
「気をつけてけよ」
遠ざかる背を見送り、ハレルヤは口惜しさを覚えた。
でも、この場合、もしかしたらグラハムがいなくなって少しホッとした人もいるかも知れない…という可能性も否めません。でも、そういう人も少しもの悲しさを覚えていたり。
多分、カタギリは少し休憩時間が貰えた、くらいにしか思ってないと思います。どうせどうにかなるだろう、と。