式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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お待たせしました。七万打お礼です。
十年後でほのぼのさせてみました。
「…こんな事の何が楽しいのか全然分からない」
「そんなこと言うならお前にはやらねぇぞ、恭弥」
「……分かったやる」
だからはい、と言わんばかりに差し出された手のひらに苦笑しながら、スクアーロは生地をその上に軽く置いてやった。見ればクロームも一生懸命に形を作ったり整えたりしているようで、頑張っているなと笑みを別種の物へと変える。
事の始まりはと言えば、クロームが彼女の仲間たちに何かお礼をしたいと言い出したことだろう。だから提案としてこういった菓子作りが挙げられたのだが、そして実行することになったのだが、そこにまさか雲雀が加わるとは考えてもいなかった。
さらに驚くことに、菓子作りなんて初めてだとか言うがとんでもなく手際が良かったりして、楽しくないという内容の言葉を連発しながらもどこかしっかりと楽しんでいたりもしていたのである。
対して現状の原因であるクロームは、普通に上手かった。普通と比べれば充分すぎる程に手際も良く、手慣れているようだった。
…どうして今まで誘わなかったのかと少し悔やまれる。
きっと二人なら、色々と手伝ってくれただろうに。
そういえば……何故だか二人は自分に懐いてくれているようだが、その理由は十年前から一つも判明していない。知ろうと知るまいと、何が変わるでもないだろうからあえて気にしない、というのもあるのだけれど。
今がこうである、というのが最も大切なことなのだし。
そんなことを思っている間に二人は作業を終えたらしい。型を抜き形を作り、出来上がった物を並べ上げ、次はどうするのだと言わんばかりにこちらを見ていた。
「次はどうするんだっけ、スクアーロ」
「…形が出来たってんなら次は焼くんだぁ。知らねぇのか、恭弥」
「知るも何も、僕は今日が初めてだよ」
「随分と遅い初めてじゃねぇか…んでクロームはどうしたぁ?知ってんだろ?」
「知ってるけど…他に、何かする作業はないかと思って」
「…?他に何かできるの、ここから先」
「ちょっとだけ…出来るときもある、かな」
「ふぅん…まぁいいや。とりあえず焼くんだよね。ザンザス連れてくる?」
「……いや、それは頼むから止めてくれぇ」
こんな用事で呼び出したら即行で厨房が消え去る。
本心から首を横に振れば、冗談だよと雲雀は何でもないように言った。けれども、冗談に聞こえないからそれは恐ろしいのである。もっと冗談なら冗談らしく言って欲しいものだが、それは無理な相談なのだろうか。
「で、スクアーロ、一体どうやって焼くの。コンロ?」
いや……あながち冗談ではなかったのかも知れない。
少なくとも、本気だったと言われても違和感は覚えなかっただろう。
彼の言葉からそんなことを考え、息。そんなことをしたらあっという間に炭になりかねないのではないだろうか。そんな事にまで考えが及ばないほどに素人、ということなのかもしれないが度を過ぎているというか何というか。
とりあえず教えなければならないだろう。
「オーブンで焼くんだぁ」
「あぁ、これってそのためにあったんだね」
「いや…そのため以前にずっと置いてあるぜぇ?」
そんな、そのためだけに外に出したみたいな言い方。
まさかそこまで分かってないのか……?と戦慄にも似た思いを抱いている中、怖ず怖ずとクロームが口を開いた。
「雲の人…オーブンはずっとその辺りに置いておく物なの。片付けたりしない…」
「そうなの?でも使った物は片付けるべきじゃないのかな」
「それは…片付けるには少し重くて、大きいから」
「じゃあ二人三人で動かせばいい」
「…収納スペースは?」
「そんなの工夫のしようでどうとでもなるじゃないか」
「あ…そっか」
「…………お前らぁ、片付ける方向で話進めんな」
全ての準備を終えてオーブンのスイッチを入れつつ、妙な方に話が行っている二人の方をちらりと見る。このまま放っておいてしまっては、本当にそちらの方向に話が落ち着きかねない二人を。
だが雲雀はそれが不服らしく、少し不機嫌そうにそっぽを向いた。
「僕は間違ってないよ」
「言い分は正しいけどなぁ、根本的な問題が何か違うんだぁ…」
出した物は片付ける。その精神はまさにベルフェゴールにでも見習わせて欲しいものではあるのだが、問題は使いどころが違う事である。
その上、本人はその自覚がない上に流されかけが一名。
クッキーが焼き上がるまでは説得できるだろうか。
分からないし相手が相手だし状況やら何やらの事があるから無理かもしれないと思いつつ、ともかく自分は雲雀の論に流されまいとスクアーロは密かに誓った。
でも、オーブンってどこに片付けるべきでしょうね?
「そんなこと言うならお前にはやらねぇぞ、恭弥」
「……分かったやる」
だからはい、と言わんばかりに差し出された手のひらに苦笑しながら、スクアーロは生地をその上に軽く置いてやった。見ればクロームも一生懸命に形を作ったり整えたりしているようで、頑張っているなと笑みを別種の物へと変える。
事の始まりはと言えば、クロームが彼女の仲間たちに何かお礼をしたいと言い出したことだろう。だから提案としてこういった菓子作りが挙げられたのだが、そして実行することになったのだが、そこにまさか雲雀が加わるとは考えてもいなかった。
さらに驚くことに、菓子作りなんて初めてだとか言うがとんでもなく手際が良かったりして、楽しくないという内容の言葉を連発しながらもどこかしっかりと楽しんでいたりもしていたのである。
対して現状の原因であるクロームは、普通に上手かった。普通と比べれば充分すぎる程に手際も良く、手慣れているようだった。
…どうして今まで誘わなかったのかと少し悔やまれる。
きっと二人なら、色々と手伝ってくれただろうに。
そういえば……何故だか二人は自分に懐いてくれているようだが、その理由は十年前から一つも判明していない。知ろうと知るまいと、何が変わるでもないだろうからあえて気にしない、というのもあるのだけれど。
今がこうである、というのが最も大切なことなのだし。
そんなことを思っている間に二人は作業を終えたらしい。型を抜き形を作り、出来上がった物を並べ上げ、次はどうするのだと言わんばかりにこちらを見ていた。
「次はどうするんだっけ、スクアーロ」
「…形が出来たってんなら次は焼くんだぁ。知らねぇのか、恭弥」
「知るも何も、僕は今日が初めてだよ」
「随分と遅い初めてじゃねぇか…んでクロームはどうしたぁ?知ってんだろ?」
「知ってるけど…他に、何かする作業はないかと思って」
「…?他に何かできるの、ここから先」
「ちょっとだけ…出来るときもある、かな」
「ふぅん…まぁいいや。とりあえず焼くんだよね。ザンザス連れてくる?」
「……いや、それは頼むから止めてくれぇ」
こんな用事で呼び出したら即行で厨房が消え去る。
本心から首を横に振れば、冗談だよと雲雀は何でもないように言った。けれども、冗談に聞こえないからそれは恐ろしいのである。もっと冗談なら冗談らしく言って欲しいものだが、それは無理な相談なのだろうか。
「で、スクアーロ、一体どうやって焼くの。コンロ?」
いや……あながち冗談ではなかったのかも知れない。
少なくとも、本気だったと言われても違和感は覚えなかっただろう。
彼の言葉からそんなことを考え、息。そんなことをしたらあっという間に炭になりかねないのではないだろうか。そんな事にまで考えが及ばないほどに素人、ということなのかもしれないが度を過ぎているというか何というか。
とりあえず教えなければならないだろう。
「オーブンで焼くんだぁ」
「あぁ、これってそのためにあったんだね」
「いや…そのため以前にずっと置いてあるぜぇ?」
そんな、そのためだけに外に出したみたいな言い方。
まさかそこまで分かってないのか……?と戦慄にも似た思いを抱いている中、怖ず怖ずとクロームが口を開いた。
「雲の人…オーブンはずっとその辺りに置いておく物なの。片付けたりしない…」
「そうなの?でも使った物は片付けるべきじゃないのかな」
「それは…片付けるには少し重くて、大きいから」
「じゃあ二人三人で動かせばいい」
「…収納スペースは?」
「そんなの工夫のしようでどうとでもなるじゃないか」
「あ…そっか」
「…………お前らぁ、片付ける方向で話進めんな」
全ての準備を終えてオーブンのスイッチを入れつつ、妙な方に話が行っている二人の方をちらりと見る。このまま放っておいてしまっては、本当にそちらの方向に話が落ち着きかねない二人を。
だが雲雀はそれが不服らしく、少し不機嫌そうにそっぽを向いた。
「僕は間違ってないよ」
「言い分は正しいけどなぁ、根本的な問題が何か違うんだぁ…」
出した物は片付ける。その精神はまさにベルフェゴールにでも見習わせて欲しいものではあるのだが、問題は使いどころが違う事である。
その上、本人はその自覚がない上に流されかけが一名。
クッキーが焼き上がるまでは説得できるだろうか。
分からないし相手が相手だし状況やら何やらの事があるから無理かもしれないと思いつつ、ともかく自分は雲雀の論に流されまいとスクアーロは密かに誓った。
でも、オーブンってどこに片付けるべきでしょうね?
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