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相変わらずの二人です。
02:砂上楼閣
「ところでなんだが」
「何ぞ、馬鹿鬼」
「…っ……と、とにかくな…この旅ってのは徒歩でやるんだろ?」
「うむ」
切れかけた堪忍袋の緒をどうにか保ったままに元就に問いかけると、帰ってきたのは当然のような肯定。まぁ、先ほど政宗に説明していたし、自分もその場にいたから知っているのは確かに当然なのだが。
ただ、それなら出発する前に一つ問題が。
「ちょっと海の方に行かねぇ?」
「Ha?何でだ?」
「こっちに来るのに俺の所の船を使って来たからよ」
つまり、海にはまだ元親の所の船が一隻ほど待機しているのである。
歩いていくのだというのなら、海を領域としている足の駆使は必要ないだろう。だったら事情を説明して先に帰ってもらわなければなるまい。
そう言うわけで元親は海行きを申し出たのであるが。
ふ、と元就は口元に笑みを浮かべた。
「今更そのような事を申すとは」
「…何だその含みのある言い方は」
「含ませているのだから当然であろうが。貴様に言われるまでもなく我々は海に向かっておるわ、この大馬鹿者が」
その様なことにも気付かなんだかと。
元就はとてつもなく見下した表情を浮かべて、そう言った。
……まぁ、言っていることは正しいだろう。よく見れば、この道は何度も通った政宗の居城と海を繋ぐ最短の道だし、流石の元就でも足となった自分の子分たちを無視する気はなかったのだろうし。
しかし、だからといって。
全部に気づけるわけがないだろうが。
「元親、落ち着け」
「止めるな政宗。俺は今この瞬間、コイツを叩きのめさねぇとなんねぇんだ」
「面白いことを言う。我を叩きのめすだと?返り討ちに遭うのが関の山であろうぞ」
思わず武器を持ち上げた元親を政宗が止め、だが元就が挑発をしてしまえば、悪いがその制止は意味がない。あぁ言われて我慢できるわけがないではないか。
今日こそ叩きつぶすと日頃の恨み辛みを思いながら密かに闘志を燃やしている元親を、止めることは出来ないと悟ったのか政宗はため息を吐いた。
「…仕方ねぇ…なら、浜辺でやれ浜辺で」
「浜辺?」
「木が傷つきでもしたら大変だろうが」
それは後片付けのことだろうか。
とりあえず戦闘を開始したら間違いなく辺り一帯から木々はなくなると思う事もあって、その言葉には大人しく従うことにした。
「…そういや、元就の武器は?」
「我の物ならばここに」
政宗の問いに、元就はどこからともなく取り出した輪の形をした彼の武器を見せ、相変わらずな感じで笑った。
「丸腰で行くわけがあるまい」
「……いや、お前それどこから」
「me tooだぜ…本気でどこにしまってたんだよそれ」
「我の武器か?どこでも良いではないか」
「納得出来ねぇなぁ、そんなんじゃ」
「我が儘な」
「我が儘はテメェだろ、あと政宗」
「俺もか?や、元親もじゃねぇの?」
「と言うことはつまり、我以外は我が儘と」
「テメェも我が儘だっての!」
どうやら全員我が儘らしいと結論が出たところで、謎は謎のままで一向は浜辺に辿り着いた。良い感じに日も暮れていて、勝負を歓迎しているかのようである。
元親と元就は、そんな風景の中、互いにほどよい距離を取って武器をかまえた。
「覚悟は良いな?」
「それは我の言葉ぞ」
ばち、と火花が散る中。
そこよりやや離れた、波打ち際で。
「……砂で城でも作るか」
政宗が呆れ諦めた表情を浮かべたのに。
生憎と、元親も元就も気付かなかった。
半ば強引に連れてきた相手を放置するのはいかほどかと思いますが。