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かつて書いたイノベイターによるアレルヤ誘拐事件(「いらっしゃいませマイスター!」)に密か……ではなく思い切り繋がっております。ていうかあれ読まないと分からないかも知れない…。
08.Re:
「アレルヤ、メール来てるけど」
「あ、ありがとう」
「はい」
トレーニング中だったアレルヤに休憩時間を見計らって、通信端末を渡して、それからフェルトは首を傾げた。メールの差出人が、知らない誰かだったような気がするのだけれども。自分たちの知らない知り合いか誰かがメールでも送ってきたのか。
何となく気になって、アレルヤの隣に座る。
「ねぇ、少し訊いて良い?」
「あぁ、何かな?」
「その差出人って、誰?『リヴァイヴ・リバイバル』って」
「イノベイターの人だよ」
「……まだ、交流続いてたんだ」
「まぁね。交流を絶つ理由もないし」
「……」
敵同士、という点だけでも十分に理由になると思うのは自分だけなのだろうか。
……ほんの少し前、イノベイターによってアレルヤが誘拐され、いつの間にか仲良くなって帰ってきたことがあった。それの関係で、イノベイターがトレミーに訪れるような微妙な事件も、あった。けれど、それはそれで終了だとばかり思っていたのだけれど…よくよく考えると、アレルヤはそういう性格ではなかったけれども。
それは果たして良いことなのだろうかと首を傾げたが、良いか、と結論を出して考えるのは止めた。何となく楽しそうだったから、止めるのはやぶさかではないと思ったのである。
代わりに、画面をのぞき込む。
「リヴァイヴ、ってどんな人?」
「えっとねぇ……ちょっと真面目かな。悪い子ではないよ。子、というのも妙かもしれないけれど」
「いい人、なんだ」
「うん。でも、敵だから戦うときはちゃんと戦うよ。彼らもそれは分かっているはずだし」
「それでもメールは続けるの?」
「続けるよ」
「どうして?」
戦う相手とずっと交流を続けていたら、そのうち、戦うことに躊躇いでも覚えてしまうのではないだろうか。少なくとも、フェルトだったら躊躇うことになる、と思う。
だから分からなくて首を傾げていると、アレルヤは苦笑を浮かべた。
「だって、そんなことで繋がりを断ち切るなんて勿体ないと思わない?」
「そんなこと?」
「そうだよ。戦い合うより知り合うことの方が素晴らしいんだから」
ね?と同意を求める彼に、フェルトは頷いた。
その考えは、とてもよく分かる。
例えば、自分の場合はその知り合う対象がニールだったり、クリスティナだったり、リヒテンダールだったり、モレノだったりしたわけで。そんな彼らはもういないけれど、彼らとの繋がりの中で気付いたこと、学んだことはたくさんある。
つまりはそういうことなのだろう。
敵だろうと、共にいることが出来るのならば。
けれども、やっぱりそれは辛い選択だろうと、フェルトは目を細めた。敵であり、戦い合うことは分かっているのに、繋がりを絶つこともしないなどと。繋がりを絶つのが勿体ないのは、分かった。だが、それと同じくらい、繋がりを絶つことは今後のためになるのではないだろうか。
あるいは、そんな相手だからこそ関わりを絶ちたくないのかもしれない。
「アレルヤは、彼らのことを忘れたくないんだね」
「…そう、とも言うかな」
「忘れたくないから、まだ交流してるの」
「……だね。忘却は、死の次に恐ろしいから」
「それなら……私も分かる。アレルヤの気持ち、分かるよ」
忘れるのは怖い。敵と言うことは殺し合うと言うこと。そんな相手のことを知ることは痛みを伴うが、同時に、知らなければ忘れてしまうかもしれない。その時、その瞬間にその人たちの存在は『消えてしまう』のだ。
それが嫌だというのなら。
嫌と言うほど、分かる。
「本当に、思い出せなくなるのは怖いから」
「…でしょう?」
アレルヤはそう言って、微笑を浮かべた。
そのまま彼の右手は端末の上を滑り、返信のボタンを押した。
また、繋がりは継続した。
またマイスターとイノベの話を書きたいですね…。