式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
日輪学院も久しいというか…初?
この学校には風紀委員に類する委員会がない。強いて言うなら生活委員だったか、そのあたりが学校の風紀を守る役目を担っている。もっとも、彼らは学校生活環境の向上の方に力を入れているので、あまりそちらに意識は行っていないようだが。
…故に。
浅井長政は、毎朝校門の傍に立って登校してくる問題児を取り締まっているのである。
そして、今日もまた。
「前田慶次!貴様、いい加減にペットを学校に連れてくるなと……!」
「え?誰も文句言わないから良いと思うんだけどなー」
「不平不満があるか否か以前の問題だ!」
「でもさ、夢吉がいないと俺の存在がさ…」
「…?何を言っているのだ貴様」
注意をしていた相手の空気が多少、じめっとしたものになったのを感じて、長政は少しばかり訝しく思った。一瞬だけ逃げるためのごまかしかと思ったが、そうと断じるにはあまりに彼の表情は憂鬱に過ぎる。
ということは、何らかの問題があるのだろうか……この小さな猿がいなくなることで。
じ、と夢吉を眺めて首を傾げていると、ふいに、隣に立っていた市がポツリと呟いた。
「でも……その子がいても…その子に視線が集中してるよね……?」
「う……」
それを聞いて、何かが胸に突き刺さったように慶次はたじろぎ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!どーせ俺は空気だよぉぉぉぉぉっ!」
「あ、待て貴様!」
そのまま泣きながら走り去ってしまった。
慌てて止めたがこちらの声など聞こえた様子も無く、とんでもない速さで遠ざかっていく背を唖然と見るしかなかった。
そうして我に帰ったのは、彼の姿が完全に見えなくなった後。
「…まぁ、良いか」
何となくあれ以上突きまわすのは哀れな気がして、彼に関しては今日の所は不問にしておこうと決める。もしかしたら明日も見て見ぬふりをするかもしれないが、そこは……あんな反応を見た後なのだから、仕方がない。
気持ちを切り替え、別の問題児はいないかとぐるりと視線を巡らせ……目を細める。
「…伊達政宗、生徒会メンバーでありながら……何だその自転車は!」
「げ!?浅井!?」
目に留まったのは、とんでもなく派手に改造されている自転車に乗った政宗。
彼は焦りの混じった表情を浮かべ、そのまま先ほど以上のスピードで逃げようとした……いや、逃げようとしたのだろう。
けれど、それはかなわなかった。
「…ダメ」
市の足元の影から伸びた『手』が、政宗の自転車に絡みついたのである。
そんな状態でペダルを漕ごうとしたって…無駄であるのは目に見えて明らか。
最終的には諦めたらしく、息を吐いて彼は自転車から降りた。
「…今日もいるのかよ……一週間延々とはねぇと思ったのに」
「学校内の悪を削除するためだ。それで…伊達政宗、どうして貴様はそのような自転車に乗っている。いつもは普通だろう」
「Ah…そのな、朝起きて学校に行こうとしたらチェーンが切れてたんだよ」
「…外れた…じゃないの…?」
「切れてた。最近悪ガキどもが結構出て来てるから、そいつらの仕業だろうけどよ…」
「それとこの自転車、何の関係がある」
「歩いてくるには遅刻する時間だったからな、使える自転車探してたらこれしかなかった」
「…ふむ」
これは何ともいえない展開だ。確かにこのような自転車に乗って来たのは悪でしかないのだが、事情が事情なので一概に『悪』と言う事も難しい。遅刻をしないようにやむをえなかったというのだから、その点も考慮するべきだろう。
と、そこまで考えて長政ははてと首を傾げた。
「ならば問うが、その自転車はどうしてそんな改造が行われている?その時点で実は悪ではないか?」
「悪って…いや、つってもこれ、俺のじゃねぇんだよな。近所の知り合いから借りた」
「それ以外は無かったのか?」
「…一応…ママチャリがねぇこともなかったかな…」
「ならば何故そちらを借りてこないのだ!」
叫ぶと、それが皮切りだったらしい。
自転車から降りていた政宗はダッシュで校舎の方へと走り去って行った。こちらを振り返る事も無く、一心に逃げきろうとしているかのように。
突然の事に一瞬思考が止まり、我に帰った時には既に遅く…彼の姿は消えていた。
「くっ……こうも簡単に逃げられるとは…!」
「長政様…この自転車はどうしよう…」
「それは校門の影にでも…いや、自転車置き場に持っていくぞ。伊達政宗はそれを借り物だと言っていたからな。他者の物を適当に扱うのは悪だ」
「……うん」
「では、行くぞ」
頷く市を連れ、長政は改造された自転車を押して校門から離れた。
かくして、その日の取り締まりは終了したのである。
本当は元就&元親も入れたかった…ver2とか書こうかな。
PR
この記事にコメントする