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容赦のないクロームと、獄寺君の話。
092:見えない聞こえない
絶叫は、無い。
目の前でうずくまり、がたがたと震えている男を見下ろしてから、ふ、と呼ばれたような気がしてクロームは顔を上げた。
果たして、それは気のせいではなく本当だったらしく。
「そっちは終わったか?」
「大丈夫。問題ないよ、嵐の人」
やって来た獄寺隼人と合流するべく、クロームはその男に背を向けた。
そのまま駆け寄ると、どこか苦虫をかみつぶしたような表情があって、思わず首を傾げた。こういう表情をするときは、どこか気に入らないところがあったと言うことだろう。なら、一体それは何なのだろうか。
「お前、ターゲットに背中見せんなってあれほど…」
「あ……そのこと?」
それなら、別に心配することはないのに。
けれどもまぁ、彼は知らないだろうから仕方ないのかも知れない。
ならば、説明くらいはしてみようか。
「あのね、あの人はもうダメだから」
「ダメ、だ?」
「うん。あの人はもう何も感じないよ。光を映す事もないし音を拾うこともないし味を捉えることもないし何が触れても反応も出来ないし焦げ臭い臭いがあっても気づけない」
「……」
「だから、大丈夫」
五感を奪えば、人間はあっという間に無力で憐れな存在に落ち下がる。
まぁ、それだけのことらしい。よく分からないけど。
問題ないことはコレで分かっただろうと改めて彼を見ると、さらに苦みを増した表情を、意外なことに彼は浮かべていた。
「お前、そこまでやる必要あったのかよ」
「だって…」
あの男の人は。
クロームがとてもとても大好きだと思っているあの人の悪口を言ったのだから。しかも間接的ではなく直接的に、何度も何度も何度も何度も。
それで耐えられるわけもないではないか。
仕方なかったのだと微笑んでみせると、彼はふいと顔を背けてしまった。
クロームたちに躯の悪口は、まじめな話だと基本的にNGですよね、という話。
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